プロローグ
薄暗い森の中をひたすらに走る。
「はぁはぁはぁ」
追われていた、誰にって?
三人組の盗賊たちにだ。
「逃げれねえぜ?
ひゃっひゃひゃ」
盗賊の一人、フードをかぶり、ナイフを持った男が笑いながら追ってくる。
こちらが、全力だというのに向こうは全くの余裕である。
他の二人はどこに行ったのか、確認している余裕は全くなかった。
ただひたすら走る。
そして、目の前から何かが飛んきた。
全力で回避、というかこけた。
ストン
やけに軽い音がして、近くの木に矢が刺さった。
弓か何かで撃たれたらしい。
痛みを感じた。
全身が痛いが、特にひどいのは頬に一直線に走った傷だ。
矢によって付けられた傷は、人を殺すつもりである証拠である。
避けられたのは実力じゃない。
ただただ、運が良かっただけだった。
「今のを偶然でもよけるかねぇ?」
にやけた顔でボーガンを片手に持った男がこちらに寄ってきた。
腰が抜けて立ち上がれない。
「やったのか?」
「いや、偶然だと思うが、避けやがったぜ」
「運がいいな」
ゲラゲラと笑うナイフとボーガンの盗賊。
彼らの後ろから大きな斧を持った盗賊が現れ、
「運がいいわけねぇだろ?
これから殺されるのによぅ」
と、こっちを見ながらニヤニヤと笑うのだった。
「ちがいねぇや」
「ボスは容赦ねぇなぁ」
ナイフとボーガンも一緒に笑う。
ただひたすらに震えるだけだった。
その時、茂みの中から黒い影が飛び出してきて、俺の前にかばうように立つと、男たちに杖みたいなものを突きつけ叫んだ、
「アイスアロー!!」
杖の先から魔法陣が空中に描かれ、そこから三本の氷の矢が、ボス、ナイフ、ボーガンに放たれた。
「っち、仲間がいたのか!!?」
「うぎゃあ!」
「がはぁ!!」
ボスは氷の矢を叩き落とし距離をとったが、ナイフとボーガンは胸に氷の矢を受け、痙攣し動かなくなった。
「クソっ!!
よくも仲間を殺りやがったな!!!!」
怒りに任せ突っ込んでくる盗賊のボス。
魔法使いは杖を再度構えると叫ぶ、
「ウインドカッター!!!」
風の刃が盗賊のボスを襲う。
「うぎゃあぁぁぁ.....」
ドサっという音を立て真っ二つに切り裂かれた盗賊は倒れた。
突然のスプラッタな場面に絶句していると、
「大丈夫?」
と、助けてくれた魔法使いこちらを向いて声をかけてきた。
「えっ?」
間抜けな声を出してしまった。
そこにいたのは可憐な女性だった。
長い青髪に赤い瞳が印象的な美女だ。
この場合魔女が正解だろうか?
漫画や小説に出てくるような真っ黒なマントを羽織り、ローブを着て、三角帽子をかぶっていた。
驚いた俺の顔を見ていると、彼女は驚いた顔をして、突然俺を抱きしめた。
ゆったりとしたローブ越しでもわかる大きな胸の感触を感じた。
「神様!!?
神様!!?
ようやく見つけた!」
ぎゅーっと抱きしめる彼女は赤い瞳を潤ませていた。
そして、俺は彼女のぬくもりを感じながらも助かった安心感から意識を手放したのであった.......