第12話
■■宗次郎■■
「ひゃあ〜、凄ぇな!こいつ等、本当に中学生かよ!?」
「だが、優勝候補になるほどか?確かに、中学生レベルでは
はないと思うが……」
SoulSpirits予選を終えて数日。俺と透は噂のSavemyCelebの動画を、探し見つけ観ていた。
「んー、やっぱ生で1回観てみないとなぁ。それにこれ1年前のだろ?」
「ああ!」
そう!残念ながら予選の時の映像は無く、見つけたのは1年前のものだ。
何処かのライヴハウスで演っている映像だ。
「…で、どうだ?」
「うん!ジャンルとしては、流行の良くあるエモーショナル系だな。特にこのヴォーカル&ギターの薫つったか?」
「ああ」
「単純なテクニックだけなら、実際なかなかのレベルだと思うよ」
「少しだけ経歴を調べてみたら、こいつ等も、お前と同じ位の歳で音楽を始めてるみたいだな」
「へぇ!」
「ただしライヴハウス仕込みじゃなくて、何処かの養成所で教わってたみたいだな」
「成程ねぇ」
透がそう言いながら動画を止めた。
「あとは本番の楽しみにして、練習しようぜ」
「ああ!」
そう言い、俺達は練習に取り掛かった。
どんなに凄い奴が相手に来ようと、お前となら怖くない!
そして、俺はお前にだって負けたくはない!
■■奏■■
時計の秒針が進む音が教室に響き渡っていた。
教壇の上には舞が立ち神妙な表情を見せている。
私と彩は適当な席に行儀よく座り、宗次郎は腕を組みながら壁に寄り掛かっていた。
透は机の上に足を組みながら座っていた。
この男は本当に常識がないわね。
「それでは発表します…」
舞が1枚の紙切れを手に取りながら言った。
「私達ディスリアイズは…、SoulSpirtis予選を……」
「……」
沈黙が流れる。
「見事無事に突破しましたーーーっ!!」
「おっしゃあっ!!」
「やったね!」
「ま、当然だな」
透、彩、宗次郎の順で言っていた。
「貴方達、浮かれるのは程々にしなさいよ?宗次郎の言う通り予選突破くらい、最初から視野に入れていたんだから、驚く事でもないわ」
「何だよ、奏!嬉しくないのか?」
「そういう訳じゃないけれど、気を引き締め直して本選に挑みましょうと言っているのよ」
そう言い私は席を立ち教室を出ようとした。
「あん?何処行くんだよ?」
「……貴方、デリカシーってものないのかしら?御手洗いよ」
そう言い教室を出て、人気の居ない場所へと足を進めた。
そして、小さく拳を握り締めガッツポーズを決めた。
……誰も見ていないわよね?
■■彩■■
「本選って何曲やれんだっけ?」
「5曲だね」
「セットリストどうすっか?」
「そうねぇ……」
透くん舞と、本選でやる曲を決めようとしていた。
「Re:startは、やっぱり外せないわよね」
「あとは…SleepingSpring。これも決定とみていいだろ?」
「そうね」
うん、私もその2曲は同意見だ。
そして今回、私は個人的に演ってみたい曲がある。
「透くん、あの曲はどう?」
「ああ!そろそろ、お披露目しても良いかもな。……ただなぁ……」
「何か問題でもあるの?」
「いや、会場遠いし機材が増えるのは持ち運びが……」
最後まで言い終える前に、舞が鋭い手刀を透くんの首に放ちクリーンヒット。
多分、面倒くさいと言おうとしたんだろう。
「機材運びも立派な練習だと思え!」
「名言だね」
一応、3曲決定かな。残る2曲は…。
「この3曲を演るなら構成バランス的には…」
「そうねぇ……」
そう悩み続けること2時間弱経過。
「うん!悪くないんじゃない」
「うし!そんじゃ、あとは本番を想定して練習あるのみ」
「会長とジローちゃんに、メール送っとくわね」
奏さんとジローくんは、今日は用事があるとの事で休んでいる。
「舞!ベース頼めるか?」
「ん!しゃーない!久々に私のテクを魅せてあげるわよ」
舞は、ギターもベースもドラムもピアノも出来る!
私も1年前までは、舞にギターやらベースやら弾いて貰いお世話になっていた。
そして、はっきり言って滅茶苦茶上手い。
演奏者じゃないのが勿体無いくらいに。
久しぶりに舞と演れるってのは、ちょっと楽しみであった。
……ジローくんには悪いけどね。
■■透■■
待ちに待った、SoulSpirtis本選当日がやって来た。
会場は既に賑わっていた。
「予選ん時も盛り上がってはいたけど、こりゃ予選の比じゃねぇなぁ!」
「それだけレベルが高いって事よ」
俺の感想に奏が答えた。
上等、上等!レベルが高いってのは臨むところだ。
「本選は演奏に採点されるんだよね?確か」
彩が言った通り。本選は採点式だ。
審査員5人が1人最高100点の計500点の採点方式。
1番多い点数を取った奴が優勝となる。
「相手との実力差が如実に表れるな」
宗次郎がそう言い、とある一点に視線を向けた。
そこには狂雷鳥に花守ヒラク、SecretFrameの面々が居た。
肌がざわつく。
王者の風格とも言うべきか、それがここまで伝わって来ている。
予選の時は抑えていやがったな!
京の奴が、俺達に気付きそのまま視線を向けてくる。
不敵な笑みを浮かべてやがる。
あー、畜生!!ライヴが待ち遠しいな!演るのも観るのも。
そういや、あのヤロー!予選の時、指立ててきやがったっけか。
俺は、親指を立て首を横に切る動作を京達に見せた。
喰らい潰してやる!!
■■舞■■
透の奴、早くも闘争心むき出しね。
まぁ、透の気持ちが分からなくもないけど。
ディスリアイズの出番は6番目。ディスリアイズより前には狂雷鳥、雪の国カウが出る。
SecretFrameと花守ヒラク、そしてSavemyCelebは、ディスリアイズより後に出る。
これは益々、透の闘争心に火が着きそうね。
会場内の照明が落ち、ステージ一点に照明が照らされマイクを持った人が立っていた。
あの人は…。
「あれってマイク・トミーじゃね?」
「誰?有名人?」
「嘘っ!?奏、知らないの?」
「あまりテレビとか出ない人だから、奏さんが知らなくても無理ないって」
「音楽通で有名なラジオパーソナリティですよ!」
今、このタイミングでステージに立っているという事は、彼が今大会の司会進行を務めるんだろう。
生で観れるなんて、ちょっとラッキーかも。
「大変長らくお待たせしました!只今よりSoulSpirtis本選開始するぞーっ!!」
マイク・トミーがそう言い歓声が湧いた。
「オーケイ、オーケイ!特別ゲストも呼んでいるから、最後まで楽しんで行ってくれよ?」
歓声が湧く。
「それじゃあ、早速いってみようか?トップバッターはこいつ等、雪の国カウ!!」
再び歓声が湧き、ステージの照明が落ち、そこに6人の人影が見える。
そして、鮮やかでエレクトロなサウンドが鳴ると同時に、ステージに照明が照らされる。
ギターが2人、ベース、ドラム、キーボード、ヴォーカルの6人編成でキーボード以外は女性メンバーで構成されていた。
「さぁー、皆!盛り上がって行きましょーっ!!」
ヴォーカルの人がそう言い、会場のヴォルテージが上がる。
そして、私達の目の前にも約1名。
「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
透が、拳を天に突き上げながら叫んでいた。
……アホ。
「おい!宗次郎!?観ろよ、あのギター2人面白いプレイしてんぞ!?」
「そんな、はしゃいで言わなくても観てるし」
でも透の言う通り、面白い事をやっている。
お互いに向き合って、自分のギターの弦じゃなく相手のギターの弦を押さえ、押さえられた側がピッキングし音を鳴らしていた。
なかなか出来る芸当じゃない。
「可愛らしい見た目とは、裏腹に派手なパフォーマンスね?」
「あはは…」
会長が彩に言い、彩は苦笑いをしていた。
腹括った時の彩は大胆だもんなぁ。
そして、このバンドのキーパーソンは……。
「それにしても鍵盤の彼、目立つわね」
「小太りな上に、アイパーでバッチリ決めてんもんなぁ」
「でも、物凄く上手いよ!このバンドの軸は、間違いなく彼の鍵盤だよ」
「俺達も1曲位、鍵盤入れてみても面白くなりそうですね」
と、皆それぞれ感想を述べていた。
そして、演奏が終わり歓声と拍手が湧く。
「ありがとうございましたー!!まだまだ素敵なバンドが沢山控えているので、楽しんで帰って下さい。あ!でも私達に得点を貰えると嬉しいです」
会場に笑いが洩れた。
そこでマイク・トミーが会場に現れた。
「トップバッターに相応しい演奏をありがとう!それじゃ早速、採点といってみようじゃないか!雪の国カウの得点は…」
ステージに設置された電光掲示板に点数が表示された。
雪の国カウの得点は493点。
「いきなり、随分と高得点ね」
「奏、ビビってんの?」
「まさか!冗談でしょ」
「…だよな」
透と会長が楽しみでしょうがないといった感じで笑いながら、闘志を燃やしていた。
■■宗次郎■■
雪の国カウの後に出たバンド3組は、雪の国のカウ得点を超えなかった。
そして、5番目の出場者。狂雷鳥!!
雪の国のカウと同じく、毎回上位に入っているバンド。
俺達の出番は次だけど、ギリギリまで狂雷鳥のライヴを観る事にした!
ステージに照明が落ちると同時に轟音が鳴り、ステージに照明が照らさられ狂雷鳥のメンバーの姿がはっきりと見える。
「おう!お前等、まだまだ暴れたりんだろぉぉっ!?祭りじゃ祭りじゃ、踊れ!騒げ!暴れろぉぉぉっ!!」
京さんがそう言い、会場内のヴォルテージが一気に上がる!
予選の時よりも爆発力と破壊力のあるサウンドに、鳥肌が立ちゾクゾクする。
くそっ!こんな魅せられたら、我慢出来ない!!待ち遠しい、自分達の出番が!!
弾きたくて、演りたくて、うずうずする!
「どうした、どうした!?お前等、そんなもんかっ!?もっとだ、もっとワシを楽しませてみせろっ!!」
「うぉぉぉぉぉっ!?良いぞ、良いぞ!!京ぅぅぅぅぅっ!!」
京さんの煽りに透が叫ぶ。
そして、京さんが俺達を…いや、透を見た!
透の声が届いた!?……まさか!?
俺達が観戦してる位置とステージまでは、大分離れている。ましてや、透以外にも声を出して観てる人達だって居る。
変わらず、はしゃいでいる透をふと見た。
透は京さんに見られた事に気付いたのか、不敵に笑っていた。
ああ、そうか!あの人も俺と同じだ。透のギターに魅せられたんだ。
だから、透を挑発しているんだ!
自分達よりも、凄いライヴを演ってみせろ!と。
京さんがマイクを両手で握りシャウト!そして、観客に向かってダイブをして狂雷鳥のライヴは終わった。
■■彩■■
狂雷鳥のライヴが終わり、私達は直ぐに舞台袖へと移動した。
そして、マイク・トミーさんがステージに立つ。
「相変わらずの、野獣の様にパワフルで熱いサウンドだったぜ!ありがとうよ!さて、気になる狂雷鳥の得点は…」
電光掲示板には495点と表示された。
狂雷鳥の前の出場者達は、雪の国カウの得点を超えなかった。つまり…。
「これで狂雷鳥は暫定トップだぁぁぁっ!」
マイク・トミーさんが力強く言った。
そして、会場は大きな歓声が沸いた。
「はっはっは!良いぞぉ、俄然やる気がみなぎってきた」
「ええ!ねじ伏せてみせるわ」
「こうでなくちゃ面白くない」
透くん、奏さん、ジローくんの闘志に更に火が着いた!
皆、強気なんだから。もう!
……いや、私も人の事言えないか。
「彩も、いつになくやる気ね?表情に出てわよ!」
舞が言った。
楽しみって気持ち。そして何よりも…。
「うん!だって、皆とだったら負ける気がしないもん!」
「あはは。うむ、宜しいっ!それじゃ…ま……」
舞が私の背中を押すように叩いた!
「遠慮なく、暴れ楽しんで来なさいっ!!」
「おうっ!!」
舞の激励に、私達は同時に返事をし、ステージに立った。




