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失い

作者: なかじ

突然彼女から別れのメールが来た。

そのメールにはこう書いてあった。

(やっぱりうちら別れよ?この先好きでいられる自信無いから。ごめんね。)

これを読んだ瞬間、私の心に穴が空いた気がした。上手く言葉では表せないが、今までに感じたことのないものであったのは確かだ。

理由は、わかっていた。私は高校入試をひかえていた。そのため受験勉強に集中するために、彼女と距離をおき、メールもあまりしなかった。そのことは、彼女も理解してくれた。私も、彼女と話したい気持ちをおさえながら励んだつもりだった。だが、それは思い違いだったのかもしれない。本当は、彼女は理解などしていなかったのではないか。私がただたんに、自分の意見を押し付けていただけだったのではないか。そう思うと、彼女に申し訳なく思う。

だが、今回私が気になるのはそのことではない。彼女からのメールを見た瞬間、私は悲しくなかった。涙すらださなかった。むしろ、清々しい感情を覚えたのだ。そして、私の心にある言葉が響いた。

(どうせ失うものだ。何事もそう。いくら立派に作り上げても、積み木のようにすぐに壊れる。どうせ失うなら初めからつくらないほうがいい。)

私が自分言い聞かせたのかどうかはわからない。だが、この言葉には共感できるものがある。どうせ失うなら、初めからつくらないほうがいい。この言葉の響きだけは、私の心の中で消えることはなかった。

私たちの周りにはすぐに壊れるものが多い。友情、絆、名誉。つくり上げるのには苦労する。しかし、壊れるのは一瞬だ。もちろん、人も同じだ。そしてそれは二度と戻らないこともある。

では、なぜ人はそれを作ろうとするのだろうか。思い出が大切という人もいるだろう。だが、その思い出というのも、極端に言えば記憶だ。記憶だって、頭を打てば消える。

人は壊れると解っていても、それをつくり上げることで満足なのか。また私のように、一緒にいた時間が記憶に刻まれるだけで満足なのだろうか。いや、もしかしたら人はその壊れる瞬間に、私のような清々しさを感じて心を満たしているのかもしれない。

私には何が正しいのかはわからない。いろんな意見があるだろう。だが、私の心には今も、あの言葉が鳴り響いている。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ありふれた別れの原因と、理解ある元恋人との思い出から、恐らく現在の自分の諦めと悟りに繋げる。なかなか素晴らしいと思います。 [気になる点] 理解→理由 励んだ、もこの文章なら漢字で良い…
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