敵の襲来
頼む、抜けてくれ!
壊は、そう祈りながら手に力をいれた。
その瞬間、
キューと高い音を鳴らしながら、[紅葉]が鞘から抜けた。
志乃「抜けた…抜けた!!!!」
2人は、歓喜の声をあげた。
しかし、壊は、浮かない顔をしていた。
志乃「どうしたのよ」
壊「いや、俺あんまり力入れてなかったんだけど」
志乃「そんなこと?無意識の内に力入れてたんじゃないの?」
壊「そっかぁ。まぁ、抜けたし、ありがたく使わしてもらうよ。」
志乃「そうだね。その前に、1回握らせてよ。」
壊「いいよ。」
壊が微笑み、志乃は、[紅葉]に手を伸ばした。
その瞬間、バチッという音と共に志乃が痛みを訴えた。
志乃「いったぁ…」
壊「なにが起きたんだ!」
志乃は、腕を抑えていた。
その腕は、わずかに痙攣している。
志乃「触った瞬間、手を弾かれたのよ!」
壊「そんなこと…いや、」
志乃「噂でなら聞いたけど、本当にあるとは…」
壊「元は、人間だった刀。人が簡単に使ってはいけない、製造方法。[輪廻転生]。」
志乃「刀が持ち主を選ぶ。」
志乃「これが、最後の平成侍が使っていた刀。でも、この刀…」
壊「作れる家系は、2つ。『万事屋の菊や』と、『首斬り屋の松や』。」
志乃「そーなんだー。あんた結構、知ってんだね〜。」
壊「まぁーね、これでも、悪魔だからね。」
志乃「でも、これが、最後の平成侍が使ってた刀…」
壊「そうだね。あと3本。早く集めてみたくなったよ。まぁ、その前に…」
志乃「なに?」
壊「いや、この刀を見たいという方が来たみたいだ。」
その瞬間、キューと、志乃の部屋の窓が斬られた。男「こんばんは。」
そこには、30後半の男性が立っていた。
壊「誰だ!!」
男「誰だって、おじさんが悪者みたいにきかないでよ〜。普通は、君からでしょ?」
志乃「私は、志乃。10さ」
男「君じゃないんだよ!ね?開…君だよ…君の事。」
志乃「開って…」
壊「開って誰だよ…開…ったぁ〜」
壊の頭の中に痛みが走った。
志乃「壊!!!!」
そして、壊は倒れた。
夢の中で、壊は、ある夜、何処かの公園にいた。前方には、前も夢の中で出会った彼女もいた。以前は微笑んでいた彼女だが、今回ばかりは泣いていた。
また、彼女は話しかけてきた。
女の子「ここから、この世界から逃げ出したいの!!」
女の子「私ね、ママとパパにね…」
振り返った彼女は泣いていた。
そこで、目が覚めた。
男「おはよう。開くん?いや、壊くん?」
壊「俺…」
男「起きるの遅いなぁー。あと少しで、志乃ちゃん殺すところだったよ。」
気付くと、部屋中に血が散っていた。
そして、血だらけの志乃に、志乃の隣に刀。
壊「志乃!!!!」
男「志乃ちゃんは、君がね、気を失った時、ずっと君の事守ってたんだよ?でね、邪魔でイライラしちゃったから、殺しちゃおっかなぁーって。」
壊は、頭に血が上った。
壊「そうかい。志乃は、関係ないに…」
男「君が、こんな子の所へ来るからだ。君みたいな子は、もう」
男が言い切る直前、壊は眼を飛ばした。
その目付きには、ものすごい殺気を放っていた。
壊「志乃、もう休んでいいよ。」
志乃「うん、そうさせてもらうよ。」
壊は、志乃が休んだのを確認した。
壊「なぁ、名前をかけて戦おうか。」
男「最初っから、その気だよ?僕は。」
壊「俺は、壊。人を壊すことしか出来ない人間だ。」
落魔「僕は、落魔。地から落ちた魔物だ」
壊「そっか。んじゃ、初めよっか。」
壊は、体から大きな力が、湧いてきた。
すると、首元には、鳳凰の刺青。耳には、紅葉と桜のピアスが出てきた。そして、右手には、[紅葉]握った。
落魔「おー、やっぱり、殺したいや。不死鳥さんよ」
壊「さぁ、殺ろっか?」