第22話 新商品商い
「どうぞ、お茶です」
「ありがとう、ティリナさん」
真也にお茶を出したティリナは自分用にお茶を注ぐと席に座る。
「今日も順調だったな。何かあったか?」
ルードが真也とティリナに聞いてくる。今はあの騒動から一月が経過している。大分暑さも和らいで過ごしやすい季節に突入するところだ。いつも通りの閉店後の打ち合わせを三人で行っている。
「そうですね、段々と厚手の物が売れ始めてきましたね。そろそろ夏物は終わりで良いかと思います」
「私もそう感じました。ノルさんがもう出したほうが良いと言った時はどうだろうと思いましたが、早めに買っておこうとする人は多いみたいです」
真也の意見にティリナが賛成する。二週間ほど前に秋物を出す事を提案して少しずつ出していたのだ。この世界では先取りをせず、都度切り替えるのが一般的だ。
「見たところまだ秋物を出している店は無いからな。それもあるんじゃねえか?」
「もちろんそうです。ですが先んじて売ってしまえばこちらに客を引き寄せる事が出来ます。果して一度そこそこの価格の高品質に慣れた人は安い低品質に戻れるでしょうか」
真也は笑みを浮かべて利点を述べる。顎に手を当てて『フフフ』と笑うのは自重した。
「……まるで悪い事をしている気分になるのは気のせいか?」
「……あはは、気のせいですよ、多分……」
ルードとティリナは若干引き気味だ。二人とも似たような感想を持ったのだから自重した意味が無かった。そんな二人に真也は咳払いをして話を続ける。
「とにかく、今後の分量は夏を少なく、秋を多く、冬をちょっとで良いと思います」
「もう冬物を出すのか?」
ルードは驚いて聞き返す。真也は頷いて肯定する。
「気の早い人はどこにでも居ます。それに出しておいて売れ始めれば切り替え時期が読みやすいですから」
「はー、ノルさん凄いです。どうしてそんなに次々と出てくるのですか?」
計画案に感心したティリナの質問に、真也は表面はにこやかに笑いながら内心で汗をかく。まさか統計があるからとか答える訳にはいかない。ティリナの学ぶ意気込みは相当高い。真也はティリナから来る困る質問も多くなっている様な気がする。
「私は旅をして長いですからね。旅をしていると事前に準備しておかなければ間に合わないのですよ。その時にいつも思っていたものですから。いいから先の季節のものを早く出せとね」
真也は落ち着いた顔で今の自分の立場を利用した回答をする。しかしこんな事を続けているとそのうち間違いや矛盾が出てくるので心の中ではかなり焦っている。
「なるほど、経験ですか。私も他に何かした方が良いでしょうか」
ティリナは真面目な顔で頷きながら、またもや困る質問をする。ルードが答えれば確実に不要と言うだろう。何せ今でもかなり世話になっていると言う負い目がある。真也としてはそれは大変まずい回答なので安全な方法を提案しておく。
「何かするのも良いですが、観察するのも大切ですよ。同じものを見ても、そこから得られる情報は異なるものですから。例えば何故このお客様はこの色の服を着ているのかとか、見た事のない材質だけど何だろうとか、今のままでも十分やれる事は沢山あります」
真也の答えにティリナは恥じ入ったように顔を赤らめ、俯いた。ティリナからすればまだまだ未熟ですねと言われた様な気分だ。真也にそんな気は無かったが未熟なのは事実だからそうとられても仕方がない事だろう。
「そ、そうですね。やれる事はまだまだあるんですから頑張ります」
ティリナの返事に真也は安堵する。落ち込まれても困るのだ。
「そういや商業ギルドから明かりと冷房の魔道具が売り出されて、うちの真似をする店が出てきたが売り上げは大丈夫か?」
商業ギルドに核を納品して一週間足らずで商品が売られ始めた。真也が思った通りデザインに種類があり手が届くような値段になっていた。ちなみに明かりは三千A、冷房は五万Aで売られていた。それを見た真也はやっぱりアランさんは恐ろしいと戦慄したものだ。この微妙に悩む価格帯を割り出すのは難しいのだ。
「問題ないでしょう。今では内装ではなく商品で来店される方が大部分ですから。品質さえきちんとしていれば心配はいりませんよ。私も見てきましたが、形だけ真似ても本質を理解していないからかえって客が遠ざかる店も出て来ますよ」
店舗はただ単に同じにすれば良いと言う物ではない。立地や売り物、客層を考えてそれなりに行わないと悲惨な事になる。
「おめえが言うのならそうなんだろうな。つまり俺の腕が店の看板になっているということで良いんだよな?」
「ええ、その通りです。元々そのつもりでこの店を設計したのですから当然ですね」
真也の言葉に相好を崩すルード。実に機嫌が良さそうだ。
「えっ、この店はノルさんが作ったのですか?」
ティリナが驚いて声を出す。真也とルードは『あれ?』と顔を見合わせてルードがティリナに聞く。
「言ってなかったか?」
「……聞いていません。多分」
お互いに首を傾げる二人の様子に真也は苦笑しながら説明する。
「簡単に言いますと、試して見たい事があって私がルードさんに無理を言ってお願いしたのですよ。この明かりとか、冷房ですね。ルードさん位腕の良い人はそんなにいないので丁度良かったんです」
嘘は言っていない。売れてなかったとか、死にそうな顔をしていたとかを言っていないだけだ。変な顔になったルードに真也は目配せをして笑う。世の中には必要の無い真実もある。
「そうだったんですか。ではノルさんは私をルードさんに引き合わせてくれた恩人ですね。ありがとうございます」
ティリナは笑みを浮かべて真也に礼を言う。真也も微笑みながらそれを受ける。どうやら二人の仲は順調のようだと真也は安堵する。ルードを見ればそっぽを向いている。良い傾向だ。
「とりあえず良さそうですね。では私はこれで失礼します。ではまた」
良い雰囲気になったので真也は帰ることにする。二人に見送られて店を出た真也はまだ開いている店を覗き込みながら家路に着く。森羅はいつも通り肩の上に座って偶に真也と会話をしている。
食事と風呂の後に留守番をしていた楓と桜と戯れる事を忘れずに行ってから眠る。おかげで悲劇はまだ訪れていない。
次の日、店は休みだがそろそろ商業ギルドに行ってみようと思い、朝からギルドに出向いてきた。売れ行きの確認と不要素材の商品化が主な目的だ。アランが居なければ後日にしようと思っていたが、居たので小部屋に移り話をする。
「いや、ノルさんが中々来訪頂けないので困っていた所だったのですよ。今日は納品でよろしかったでしょうか」
挨拶後に、にこやかな顔で何か変な事を言うアラン。真也は首を傾げて質問する。
「私が来なくて困る事なんてありましたか? あれだけあれば半年は確実に持つと思ったのですが」
「実はどちらも売れ行きが好調で特に冷房はもう在庫が殆どありません。気温が下がったのでもう売れないとは思いますが、来年用に今から量を確保しようと思っています。明かりももうすぐ無くなるのでどうしようかと思っていたのです」
アランの回答に真也は驚くばかりだ。いったいどこのお大尽が買い占めたんだと思うような状況だ。
「ええと、何故そんなに売れているのですか? 決して安い物ではないと思うのですが」
真也のもっともな疑問にアランは頷いて答える。
「主な買い手は貴族ですね。屋敷が広いので量も出ます。また一点物で納品しますので自慢になります。それが呼び水になって次から次へと注文が入った訳です。冷房は特にそうですね。今まで無い商品なので最初に購入した方々は特に鼻が高かったでしょう。実はごり押ししてきた方が周囲に散々自慢したらしいのです。なのでこんな事態になっているという訳です」
真也は改めて貴族は恐ろしいと感じた。機嫌一つで首が飛びかねない。アランが無理を言ったのも当然だと実感した。敵に回すと実に面倒くさい事になる。やっぱり関わる事は絶対に止めようと真也は心に誓う。
「その調子では全く量が足りませんね。……製法を教えるので一割私に利益を分配する形にしませんか?」
「よろしいのですか? 製法は魔道具の要点だと思うのですが」
真也の普通ではあり得ない提案に、アランは顔には出さなかったがとても驚いた。製法が他人に知られると確実に真似されるので誰にも教えないのが普通の魔道具職人だ。そのため殆どの魔道具は製作者が死ねば同じものは作れなくなる。
「全部は教えないので大丈夫です。その代わり原価は十倍以上になると思います。どうしますか」
真也からすれば足りない事で余計な事に巻き込まれる方が困るので教える事にした。真也はそんなに金には固執していないので、利益より自分の安全を優先するのは当たり前の事だ。教えると言っても吸収は教えるつもりは無いし、密度を揃える方法は教えようが無い。そのためある程度良い魔石を使うか量を増やさねばならないのでどうしても原価が上昇してしまう。
アランにとってはある意味喜ぶべき事だが、原価が一気に上がるのは問題だ。品質が落ちて価格が上がるのだからうまくやらないと困った事になる。アランは迷ったが、足りない事で起きる問題の方が大きいと判断して提案を受ける事にした。
「分かりました。製法を教えて下さい。利益配分は一割で支払いは同じでよろしいですか?」
正直に言えば、一割で製法を知る事が出来るのであればギルドとしては即座に飛び付く。アランが迷ったのは原価の事もあるが、真也が損をする事になると思ったからだ。そしてこの提案の裏には『面倒をかけるな』と言う意図があると考えた。答えは合っているが方向が多少ずれているのはいつもの事である。
真也は脳内で形にしていた製造委託用の設計図を多少修正して、リュックに入っている紙とインクを取り出す。その一瞬で森羅が【改変】魔法を用いて設計図に変換し、真也は出来たての設計図を何食わぬ顔でアランに渡す。発生する光は【幻影】魔法で誤魔化した。何気に森羅の芸が細かくなっている。
「はい、それではこれが製法の図面になります。何故そうなのかの理由も記入してありますので読み込めば品質も上がると思います。それと作った分も納品しますね」
アランは渡された設計図を見て内心ため息をつく。求めたのはこちらだが、この設計図にどれだけの価値があるか分かっているのだろうかと思わずにはいられない。だからこそ教える者は厳選しなければと気持ちを引き締める。
「ありがとうございます。納品のほうは引き続きお願いいたします。それと支払いの現金分です。腕輪をここにどうぞ。契約書を書いてきますので少々お待ちください」
アランは設計図と納品の品物を持って部屋を出て行き、真也はプレートに腕輪を乗せ、入金を確認する。販売価格は知っていたのである程度予想はしていたが、もう働かなくても良いかと思える金額が入金されている。現金をリュックに入れ、次の交渉に対する内心の動揺を隠すために椅子に深く座ってアランを待つ。
しばらくして戻ってきたアランと契約書を取り交わしてこの話題は終了する。真也は次の話題に移るべくアランに話を振る。実は入金された額を見て止めようかと思ったが、それだと自分が荷車を使えなくなると思い、予定通り進める事にした。
「ところでアランさん、安い素材を需要があるものに変える事が出来たのですが、その製法も買いませんか? 私では使いどころも限られるし、縁もあるのでそちらに売りたいのですが。配分は同じ一割で良いです」
真也の突然の提案にアランは目を丸くする。製法を秘密にするのが当たり前なこの世界でわざわざ他者に教える事はまず無い。独占すれば巨万の富を得る事が出来るのだから当たり前だ。
そんなアランを見てから、真也は自分が緊張している事を隠すためにゆっくりと見本を取り出す。袋状にしたものとタイヤ用の溝が入った長細いブロック、それと一cm厚と一mm厚のシートだ。
「どうぞ、手にとって見てください」
アランは真面目な顔で手にとって見る。弾力があり、手触りも良い。色も綺麗だ。形が違うが全部同じ原料なのだろうと思う。どこかで見た事があるのだが思い出せないアランは真也に聞く事にする。
「これはどのような用途が考えられる物なのですか?原料は全て同じ物のようですが」
確かに見ただけでは用途は浮かばないよなと真也は思い、気を引き締めて解説を始める。
「まずそれの原料はまだら鬼蜘蛛の糸袋です。今は使いどころの無い素材で人気が有りませんが、成形に成功しましたので持って来ました」
アランは驚いた顔をする。商人ならまだら鬼蜘蛛の糸が使い物にならない事は百も承知だ。糸状以外の使い方の研究も失敗に終わったと聞いている。真也は『掴みは成功』と思いながら真面目な顔で説明を続ける。
「説明しますと、袋状のものは水入れです。元々水を通さないので十分役に立ちます。また劣化しないので皮の様に臭いが移る事がありません。次の細長いものは荷車の車輪等に取り付けるものです。弾力と溝があるので滑りにくくなり、衝撃もある程度吸収します。次の厚いシートは間に挟めば衝撃を吸収したりと使い方は色々です。最後の薄いシートはテントや幌に使えます。水を通さずいつまでも綺麗です」
真也の淀みない説明に頷きながらアランは検討を始める。糸袋はこの近隣で採取出来る。それなりの実力が必要だがうまみがあると分かれば行く者も多くなる。となると商品として売れるかと言う事だが、おそらく売れると結論付けた。水を通さず、軽く、臭わない。これだけでも十分既存商品との勝負に勝てる。
アランはちらりと真也を見る。真也はにこにこと微笑んでいて何を思っているのか悟らせない。アランは心の中でまたもやため息をつき購入を決める。どう考えてもこちらの利益の方が大きいが、いつもの事になってきたので裏を読むのを諦めたのだ。
その判断は正しい。真也はそもそも裏など全く考えていないのだから。単に生活費の足しにと思っているとはさすがに分かるはずもない。
「分かりました。購入致します。契約書をお持ちしますのでお待ちください」
出て行くアランを見て真也はほっとしながら緊張で固まっていた顔をほぐす。あのちらりと見られたときは背中に寒気が走ったと思いながら震えなかった自分を褒めている。
真也からすればアランは凄腕の商人である。そんな人に自分の成果を値踏みされるのだ。倒れるかもと思うほど緊張していた。今はうまくいったと緊張を解いて、製法を纏めた本と魔道具をテーブルの上に乗せておく。
戻ってきたアランと同じように契約書を交わしてから製法と魔道具の使い方を説明する。説明を聞いたアランはこんなに簡単な方法で加工出来たのかと感心する。早速商品の検討に入ろうとアランは決めた。
真也はアランと挨拶を交わしてギルドを出る。徐々に商品が変わっていく食料品を買い込み、ついでに懐が潤ったため杜撰になった金銭感覚で十万Aの魔石を十個と木材等の建材を大量に購入する。それでもまだ余裕があるのだから引きこもろうと思ったのも無理は無い。
ちなみに魔石の使い道は空間が二つ、風呂一つ、台所一つ、生命維持六つだ。トイレは売り物にしたいので原価を安く仕上げるため研究する。
家に帰った真也は早速設計図を書き上げ荷車用の生活空間を構築する。構築に際してはもちろん今まで培った技術を最大限に活用している。
その中で一番はやはり魔力吸収だろう。単純に考えて十を百にする場合と百を千にする場合、倍率は変わらず十倍だが数値は恐ろしく上昇する。消費魔力は変わらないので元が大きければ概念を組み込める量が一気に増える事になる。
これによって閉鎖空間における生命維持の魔道具を容易に作る事が出来た。現状は中も広いがその三倍の体積でも大丈夫な計算だ。過剰と言うなかれ。命に関わる事は過剰と言えなければ安心出来るものではない。
嘘だと思うなら酸素ボンベを背負って水中にいつまで安心して潜っていられるか試して見れば良い。おそらく何度も時間を気にする事になる。無くなる事が分かっている時に酸素残量を気にせず居られる者など存在しない。人は絶対と思えなければ安心出来ないものなのだから。
空間を作成する時には入口の鍵も作成してそれぞれ設定する。認証は固定認証で空間と扉間は電波式、扉と各鍵間も電波式、鍵と本人間は魔力認証の意思発動とした。一応空間の方には緊急用の解錠暗証を設定している。
万が一鍵が他人に渡っても認証で弾かれるし、意思で発動するので他人にはどうやっているのか分からない。欠点は身に着けていないと駄目な事だろうか。
この中で意思の読み取りが面倒だったが、考えても出来なかったのでおとなしく森羅の【精神】魔法の原理を組み込んだ。これは冷房に【浄化】を組み込んだ時の研究成果である。接触型意思発動なので鍵の魔力が尽きる心配は無い。
ちなみに一つ目の空間は家用で、もう一つの空間は研究所とした。空間は広いし誰かが侵入する事もない。接続の順番は荷車、接続空間、研究所又は家だ。
接続空間には前回購入した魔石を使用している。空間の広さは二m四方と狭いが生命維持と入口設定は設けてある。風除室の様なものだ。
真也は前準備が完了した所で空間内に入り、周囲を見回してその出来に満足げに頷いている。生命維持系もきちんと働いているので内部はとても快適だ。
「これで大体準備は出来たな。それにしても広い空間が出来たもんだ。余裕が出来たから熱量制御と大気制御と入口位置の任意設定を組み込めたのは良かったな。おかげで生命維持が別系統で存在出来るし核の隠し場所に困らない。広さはどのくらいだっけ?」
「大体間口と奥行きで五十m、高さ十mです。生命維持系に余裕を持たせましたのでこの広さとなります」
真也の呟きに森羅が答える。真也はそれに頷いて次の構想に移る。
「では家を作るか。やっぱり石造りより木造が一番だよ。うん、気が休まる。と言う事で森羅、お願い」
徐々に森羅に頼む事が多くなってきているが、人は楽な方に流れていくものだから仕方が無い。森羅の方は頼られて嬉しいので全く気にしていないのも原因のひとつだ。
「分かりました。大きいですので入口付近まで一応下がってください」
真也が入口まで下がると、森羅はリュックから資材を大量に取り出して空間の中央に積み上げていく。人力ではかなり時間がかかる事を森羅は短時間でどんどん処理していく。
「では始めます。設計図読み込み、原料組み込み、改変術式起動……、完了しました」
中央に置いていた資材が光に飲み込まれて膨れたかと思うと既にそこには設計図通りの家が建っていた。一応光の中で組みあがっていく様子は見えたが、速すぎてきちんと認識出来なかったのでそこだけは真也は残念に思った。と言っても不満を感じている訳では無く、真也はとりあえず外観を見て、その出来に満足する。後は細かい家財道具を入れれば完成だ。
家の特徴として普段過ごす居間は部屋を繋げてかなり広く作っている。これは折角作るのだからと夢の大広間モドキにしたからだ。襖を閉めればきちんと十六畳ほどの大きさに分割される。そして居間と台所は隣合わせで配置され、腰高程度の壁で部分的に区切られているだけでどちらからも様子を見る事が出来る。これは単に移動時の扉の開け閉めが面倒だからだ。
真也はこれから通常はここで暮らす事にした。家は木造の方が心休まるし、ここならいくら奇声をあげても大丈夫だからだ。
「では早速新しい家を堪能するか。いざ行かん、麗しの我が家へ!」
ビシッと指差した後にずんずんと家に向かって突き進む真也。人目が無いので自制心は既に存在しない。後ろからはいつもの組み合わせが言われなくても続いていく。そして現代なら通報されかねない奇声が空間内に響き渡った。
はしゃいでいる真也が寝る時まで布団を作り忘れた事に気が付かないのはお約束だろう。もちろん森羅の世話になった事は言うまでもない。




