表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

自由の国

作者: ぬしぽん
掲載日:2026/03/19

爺の国の続編です

―西暦2☓☓☓年 困窮した日本国

 そこで政府が目をつけたのは少子高齢化問題

 

 だが、同調した国は日本だけでは無い。


※※※※


 Nenkin Island


 草木が生い茂る無人島――だった島。広さにしては、北海道の大きさ程度。この島は元から無人だった訳では無く、今日の為、今後の為に確保されたのだ。


 一台の巨大船が島へと到着し、中からぞろぞろと老人達が降りてくる。自分の脚で歩を進める者、杖を付く者など様々。一つ気になる点があるとするならば、どれも皆男性だった。


 ある程度進んだ所で立ち止まり、

 老人達はそれぞれ談笑を始める。


 「無人島に来たらまず何をするかって?そんなの決まっているさ、ハンバーガーを食べるんだよ!」


 「おいおい、マイク。こんな場所とこにバーガーがあるわけ無いじゃないか」


 「あるだろ?ここに!」


 マイクは隣にいる老人の豊満な腹を摘む。


 「oh!こいつは一本取られたな!」


 「「HAHAHAHA」」


 四年前――突如としてテレビで放送されたBIGニュース。その内容を簡潔に紐解くと、この国は増え続ける人口を抱えきれなくなった。その為、一年に一度、希望した独身の高齢男性100人を無償で招待し、無人島に移り住んでもらう。


 永住する事にはなるが、老人が治安の悪い地域に孤独で暮らし続けるのは心細いものだ。なので、急な呼びかけにも関わらず応募は殺到した。


 つまりこの男、マイクこと‐マイケル・ジュン・パトリックにとって、今日は待ちに待った記念すべき日。新たな門出だ。


 すると、ここまで彼等を乗せてきた巨大船が動き出し、島から少しずつ遠ざかって行く。


 「どうなってんだ?……説明も無いのか?住む場所は?土地は?」


 「早いもん勝ちなんじゃねぇか?」


 「いいさ。もしもの時は……こいつをぶっ放す!」


 マイクが腰掛けバッグから取り出したのは、

 一丁の拳銃ハンドガン。当然だが、これは護身用だ。この島への武器の持ち込みについて特に言及は無く、船に乗る際も持ち物検査は行われなかった。しかし、ライフルなど大きな武器は没収される可能性があったので、手頃な物を選んだ。


 「穏やかじゃねぇな。ま、俺も持ってるけどよ」


 

ブォン!ブォン!


 そこへ数台の車両が到着する。中から迷彩服を着た男達が次々と姿を現し、手には皆、アサルトライフルが握られていた。


 「フリーズ!」


 老人達は手を頭の上に挙げ、

 ゆっくりと地面に伏せる。


 「くそったれめ!なんだってんだ!?」


 マイクは相手に聞こえない声で小さく呟く。

 両の手には手錠、それから頭に布袋を被せられ、視界は遮断された。


※※※※


 真っ暗な視界の中、車で移動しながらこのくにの説明を受ける。先に移住している老人達がいること、武器の携帯は認められていること、そして……


 「法律ルールは……特に無い!」


 「ホワッツ!?」


 老人達は思わず声を上げた。法律が無いとは何事か。公法は?私法は?個人を守るものは無いのか?そんな疑問が彼等の脳裏を埋め尽くした。


 「住むところも、生き方も、お前らの好きにしろ。ただし、俺達に銃を向けた時は……まぁ、その説明は不要か」


 周囲の爺達がザワザワと音を立て始める。

 困惑したまま説明が終わり、やがて老人達を乗せた車両は停車した。


※※※※


 頭の布袋を外されると、そこは深い森の中。手を頭の後ろに置くように指示され、地面に膝を付ける。横を見ると他の老人達の姿もあり、同じ姿勢を取らされていた。


 これから何をされるというのか。マイクは嫌な汗が頬を通るのを感じた。兵士達の先程の言いようからして命を奪われる、といった事は考えられないが。


 「お前達に良い物をやろう」


 軍曹と呼ばれる男が一人一人に1枚のカードを手渡し始めた。マイクもそれを受け取り、カードに書かれた文字を凝視する。


 「……配給券?」


 兵士達からの説明によれば、このカードを提示することで、一日に一回食料が貰えるらしい。期限は三週間。


 「ちょっと待て!期限が切れたらまた新しいカードを貰えるのか!?」


 「あっはっはっは!」


 一人の老人が疑問を投げかけ、何故か兵士達から笑いが起きる。まるで馬鹿にしているかのような。そして中でも一際若そうな兵士が腹を抱えながら答えた。


 「奪うんだよ。他のジジイ達から。そうしたら期限はもう三週間追加される」


 「奪う……だって?」


 「手段は問わん。先程も言ったようにここには法律なんか無いからな」


 「おい、無駄話はそれくらいにしろ。では我々はここまでだ」


 兵士達は老人達を置いて、次々と車両の中に乗り込んだ。そして、先程腹を抱えて笑っていた一人の若者が窓から身を乗り出し、こちらへと大袈裟に手を振る。


 「ハバナイスデーイ!」



※※※※


 支給された腕時計に表示されたオレンジ色のマークを目指し、老人達は塊になり森の中を突き進む。


 険しい道程に脱落する者もいるが、マイクは退役軍人であり、体力には自信がある。他の老人達に構わず我先にと歩を進めた。


―ギャアアア!


 「なんだぁ!?今の声は……」


 そう遠くはない……後方から響き渡る高齢男性達の叫び声。ただならぬ事態が発生してることは明白だった。遅れた者達が熊にでも遭遇したのだろうか――


 他の老人達はパニックで前へと走り出す中、マイクはポケットから拳銃を抜き取り、興味本位で声の方へと引き返す。


※※※※


 草木をかき分け、声の発生地帯に辿り着いたマイクが目にしたのは、地面に横たわる血塗れの老人達。そして、生々しい血と肉の臭いが鼻腔を突いた。


 (ファック!!何が起こってんだ!?)


 状況を把握出来るまでは、死体には近づかない。ゆっくりと地面に伏せ、注意深く辺りを観察する。


パキッ


 微かな――しかし、無視することは出来ない、落ち葉や小枝を踏みつける不気味な音が近づいてくる。


 (あれは東洋人か?)


 のそのそとこちらへ歩いてくる一人の老人……その顔や衣服は真っ赤に染まっている。やはり森の中で猛獣にでも襲われたのだろうか。


 「おい、だいじょう……」


 「おほぉ♡血、内臓……殺すのきぼぢいぃぃい!!♡」


 刹那――マイクは喉を詰まらせた。


ザッ ザッ


 「ぉ゙ッぉ゙ぉ゙♡」


 老人はビクンと身体を震わせながら、右手に持つナイフを、何度も――何度も――何度も死体の腹部に突き刺し続ける。


―うっ


 マイクは胃から内容物が迫り上がってくるのを感じ、咄嗟に口元を手で塞ぐ。戦場で死体を何度も目にし、耐性のあるマイクと言えども、あれはあまりにも惨すぎた。


 風に乗って流れてくる刺激臭。やがて必死に抑えていたマイクのダムは決壊した。


 「オェッ」


 今朝食べたスクランブルエッグが胃液と共に口外へと吐き出され、オマケに掠れるような小さな声が発生する。


 「ふぇっふぇっふぇ。アメ公、まだおったんかいな」


 死体に跨がる老人は、ナイフを片手にのっそりと立ち上がり、こちらへと顔を向ける。


 「動くな!撃つぞ!!」


 マイクは口内に残る汚物を唾と共に吐き捨てた後、迫る爺に拳銃を向け、警告の声を投げかけた。


 「ふぇっふぇっふぇ」


 しかし、老人は怯む様子も無く悠然と歩を進める。まるで遊園地にやってきた子供のように、無邪気に、恍惚とした表情で。


 「くそったれ!」


 マイクは堪えきれなくなり、銃の引き金を引いた。


―パンッと乾いた音が拳銃から発せられる


 殺った……殺ってしまった。自分は素人では無い。この距離なら確実に――


 「ふぇっふぇっふぇ。無駄じゃよ。わしのG級特養――クレイGの前では、銃など玩具がんぐに過ぎん」


 「ジーザス!?」


 ――有り得ない。マイクの顔は青ざめた。恐怖と緊張が入り混じり、頭の中が白く染まり始める。だが、思考を止めるのは経験と矜持プライドが許さなかった。


―パンッ パンッ パンッ


 マイクは銃の引き金を引き、ありったけの弾丸を何発も撃ち込む。しかし――


 「無駄じゃって」


 楽しそうに笑いかけながら、老人は戯けるように歩を進め続け、五メートル程の間合いに入ってくる。


 「くたばりやがれ!」


 最後の一発――震える手を必死に抑えながら、狙うはあの老人の脳天。呼吸を止め弾丸を頭部に撃ち込む。そして――


 しっかりと眉間を狙ったはずの弾丸は、老人の頬を掠め、その背後に立つ大木にめり込んだ。


 「そろそろ気づいたか?狂っておるのじゃ。その弾丸、それにおぬし自身も。世界を狂わせる力、これがわしの――クレイG」


 マイクはこの狂っイカれた老人が何を言っているのか、日本語ジャパニーズは理解できない。だが恐怖の感情が極限まで高められ、思考も身体の制御も失い、自分のズボンが濡れていることにすら気づけなくなっていた。


 老人は手を伸ばせば届くほどの距離に立ち、うっとりとした表情を浮かべる。それから勢いよく右手に持つナイフを振り上げた。


 その瞬間――ナイフが直撃するより先に、マイクの身体は何者かに突き飛ばされた。衝撃で我に返り、視線を戻すと、ナイフを持った老人の前に一人の高齢男性の姿があった。


 その男の頭部に毛は一切なく、ツルリと日光を反射している。それとは反対に口元には白一色な髭が胸元まで伸ばされていた。顔の皺の深さを見るに60代後半といったところだろうか。しかし、背筋は曲がっておらず、ピンと天を突くかのように伸びている。


 「アンタは……」


 マイクの呼びかけに応えないまでも、男は横目でチラリとこちらの無事を確認し、人差し指を森の奥へと向けた。


 「走るんじゃ!」


 あの老人が何を言っているのかはわからない。だが、マイクは戸惑うこと無く立ち上がり、その場から全力で走り去った。


 後に生還したマイクはこの時の心境を語る。


 『信じられるか?俺と歳の変わらねぇくらいの、ただの老人の背中がよ、まるで……


――オフクロのケツみてぇにデカく見えたんだ』


※※※※


――村?


 無我夢中で走り続けたマイクは信じられない光景を目の当たりにし、脚を止めた。青々とした木々に囲まれる森の中に、民家と思われる家々が立ち並んでいる。中央には井戸らしき物も。


 困惑していると、不意に背後から声を掛けられた。


 「おっ!なんじゃ外人さんか?」


 振り向くとそこにいたのは、見たことのない老人。得体のしれぬ安心感に包まれた後、極度の疲労に襲われ、マイクの視界は暗くなり、意識は遮断された。


※※※※


 目を覚ましたマイクが目にしたのは、見知らぬ天井――ゆっくりと身体を起こし、自身の真下を確認すると、柔らかい布が敷かれている。


 「気がついたかのう?」


 視線を移せば、先程の……意識を失う直前に視界に映ったあの老人。彼は何者なのだろうか。マイクの思考は止め処なく回る。いや、それよりも――


 「アンタ、日本人だよな?英語を喋れるのか!?」


 「ああ、流暢では無いが仕事柄のう。ある程度は喋れるぞい」


 アジア人特有のアクセントはあるものの、聞き取れない程ではない。質問は山程あるが、まずは


 「俺はマイクだ。アンタが助けてくれたのか?」


 「そうじゃよ。疲れとるんじゃなあ思うて、他の者達にも手を借りてここまで運んだんじゃ。外人さんの身体は大きくて大変じゃったわい。しゃっしゃっしゃ」


 「それはすまなかったな。アンタは何者だ?」


 「わしか?わしの名は榎本 五郎。皆からはエコロ爺と呼ばれちょる。そんでこの村の長じゃよ」


 「村……この村はアンタが作ったのか?いや、それよりこの島は――」 


 「質問が多いのう。まあ、ゆっくり話しちゃるから落ち着けっちの」


 マイクは余すこと無く説明を受ける。


―まずは冉金島について


 日本人の高齢者がランダムで集められ、この島で強制的に戦わせられていること。戦わない者は罰を与えられる。その罰というのは――


 「じゃあ、アンタの奥さんの年金は……」


 「女の事なら心配いらんよ。わしゃ金なら腐って捨てるほど稼いだ。年金などハナからあてにしちょらん。この村におるのはそんな奴らばかりじゃ。……まぁ、ただの白状者もおるじゃろうが、そんなの誰も気にしちょらんよ」


 「それにしても最後の一人まで戦うか。日本ジャパンが少子高齢化に悩まされていることは知っていたが……俺達がこの島に来た時ははそんな説明受けてないぞ?」


 「おぬしらの国とわしらの国、老人をこの島に流す目的が違うんじゃろうなあ」


―この村について


 このエコロ爺と呼ばれる老人は、定年を迎えるまで、とあるテレビ番組のプロデューサーを務めていたらしい。この村はその時の経験を活かし、その時番組に出演していたメンバー達と協力し造り上げたとの事。


 「今やこのダッシュ村は自給自足で生きられる程度には栄えてるのう。配給券を奪い合うことも無い。リーダーの城島を筆頭にメンバー達もよく頑張っちょる」



―最後に、森で遭遇した爺について


 先程までの陽気な態度から一変、エコロ爺は神妙な面持ちを浮かべると、口を閉ざした。一つ確かな事は、あの老人を知っていると言うことだろう。


 数秒の沈黙の後、重々しくエコロ爺の口が開かれた。


 「そやつの名は呉山 春信。わしらの間ではクレイ爺と呼ばれる男じゃ」


 「クレイジー……」


 口内でその名を転がしたマイクの脳裏に、狂気を纏った老人の姿が浮かぶ。あの姿を思い起こせば、二つ名通りの爺だと言えるだろう。


 「この島にはな……特養と呼ばれる丸薬が隠されておるのじゃ。それを喰えば信じられない力を得ることができるのう」


 「そりゃあ、まるでファンタジーの世界だな」


 マイクは大袈裟に肩を竦め、首を左右に振った。だが、信じていないわけではない。信じられない光景は実際にこの両の目で確認したのだから。


 「特養にはB級、A級、S級と階級があるのじゃが、もっとも恐ろしい物は……Gじいの名を冠する特養――っと」


 話の途中で口を閉ざし、エコロ爺の目は入り口の方へと向けられた。マイクがその視線を追うと、そこにいたのは――


 「アンタはさっきの……」


 クレイ爺の前に立ち塞がり、避難するよう促してくれた頭の禿げた老人。だが、白い肌着は真っ赤に染まり、見える肌には、いくつもの切傷がつけられている。


 「しゃっしゃっしゃ。健作けんぞうさんや、また派手にやられたのう」


 「すまんが、またこの村に泊まらせてもらうぞ」


 「アンタならいくら居てもらっても構わんよ。ゆっくりせい」


 老人は頭を軽く下げ、その場を後にした。


 「エコロ爺さんや、あの男は!?俺はあの人に救われたんだ!!」


 「そうだったんか。あやつは匡野ただの 健作けんぞう。頑固者で何を考えているのかよくわからんが、悪いやつじゃ無い事は保証するぞい」

まだまだ執筆中

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ