表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけ領地の問題ダンジョンを、冒険者じゃなく作業員で回してみた結果 ―命を賭けないダンジョン経営録―  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/21

第5話 同じ迷宮、違う立場

 公開の場を選んだのは、アルノルト自身だった。


 城ではない。

 議会でもない。


 市場の中央。


 誰の生活にも直結する場所だ。


 集まったのは、三者。


 冒険者。

 ダンジョン作業者。

 そして、領民と商人。


 さらに――

 冒険者ギルドの代表も、姿を見せていた。


 逃げ場のない構図だった。


「本日は、

 この迷宮の利用について説明する」


 アルノルトは高台に立たず、

 人々と同じ目線で話し始めた。


「一つだけ、最初に言っておく」


 声が、静かに広がる。


「この迷宮は、変わっていない」


 ざわめき。


「変わったのは、

 使い方と、呼び方だ」


 冒険者の一人が、声を上げる。


「俺たちは、冒険者だ!」

「作業者なんて、格下扱いか?」


 率直な疑問。

 怒りというより、不安だった。


「違う」


 アルノルトは、首を振る。


「上下ではない」


「役割の違いだ」


 彼は、順に指を向けた。


「深層を目指す者。

 名を上げ、危険を引き受ける者」


「彼らは、冒険者だ」


 冒険者たちが、背筋を伸ばす。


 次に、作業者の方を見る。


「浅層で素材を回収し、

 事故を起こさず、

 日々の仕事として迷宮に入る者」


「彼らは、ダンジョン作業者だ」


 作業者たちは、少し戸惑いながらも話を聞いている。


「同じ迷宮に入る」


「だが、求められるものが違う」


「冒険者に求めるのは、挑戦と判断」


「作業者に求めるのは、遵守と継続」


 言葉は、厳しいが公平だった。


「ギルドは、冒険者を管理する」


 アルノルトは、ギルド側を見る。


「深層への挑戦、

 危険な依頼、

 名誉と報酬」


「それは、今後も変わらない」


 ギルド代表が、腕を組んだまま言う。


「では、作業者は?」


「領地が管理する」


 即答。


「登録、階層制限、報酬、

 すべて領地の責任だ」


 場が、静まり返る。


「つまり」


 誰かが呟く。


「命を賭けたい者は、冒険者」


「生活のために働く者は、作業者」


 アルノルトは、頷いた。


「どちらも、必要だ」


 商人が、手を挙げる。


「素材は、どうなる?」


「作業者の素材は、

 領地が買い取る」


「冒険者の深層素材は、

 従来通りギルド経由で構わない」


 明確な線引き。


 今度は、作業者の一人が声を出した。


「……胸を張って名乗っていいのか?」


 アルノルトは、迷わず答えた。


「いい」


「仕事をしているからだ」


 沈黙の後、

 ぽつりと笑い声が漏れた。


「……冒険じゃないが」


「今日も、飯は食えるな」


 小さな笑いが、広がっていく。


 ギルド代表は、深く息を吐いた。


「……分かりました」


「この領地では、

 そのやり方を認めましょう」


 完全な承認ではない。

 だが、否定もしない。


 会が終わり、人々が散っていく。


 冒険者は、冒険者として。

 作業者は、作業者として。


 同じ迷宮に、違う理由で向かう。


 夕暮れ。


 エルナが、静かに言った。


「……社会になりましたね」


「ああ」


 アルノルトは、頷く。


「言葉を作った以上、

 もう後戻りはできない」


 だが、その顔に迷いはなかった。


 英雄を生む迷宮。

 生活を支える迷宮。


 その両立は、簡単ではない。


 それでも。


「誰かが決めなければ、

 誰も生き残れない」


 アルノルトは、そう確信していた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ