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滅びかけ領地の問題ダンジョンを、冒険者じゃなく作業員で回してみた結果 ―命を賭けないダンジョン経営録―  作者: 山奥たける


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第22話 例外という結論

 王都からの返答は、数日後に届いた。


 急ぎではない。

 だが、遅すぎることもない。


 まるで――

 考え抜いた末の速度だった。


本領地のダンジョン管理方式について

王都は以下の判断を下す。


 エルナは、静かに読み上げる。


標準化試験は中止とする。


ただし、当該方式を

成功例・失敗例いずれとしても

採用しない。


「……つまり」


 エルナが、言葉を探す。


「放置、ですか」


「違う」


 アルノルトは、首を振った。


「凍結だ」


 文面は、続く。


当該管理は属人的要素が強く

再現性に乏しい。


よって、王国内への

一般展開は行わない。


 だが、その次の一文が、

 空気を変えた。


ただし、

本領地における現行管理については

王都はこれを妨げない。


 勝利ではない。

 だが、否定でもない。


 例外として、残す。


「……中途半端ですね」


 エルナが、正直に言う。


「王都らしい」


 アルノルトは、苦笑した。


 続報は、すぐに広まった。


 他領の反応は、様々だ。


「危険だ」

「無責任だ」

「だが……羨ましい」


 誰もが、同じ結論に辿り着く。


 真似は、できない。


 視察に来ていた代官から、書状が届いた。


我々は、

標準化に従います。


覚悟を引き受けるには、

まだ早すぎました。


 それは、逃げではない。

 現実的な選択だった。


 別の領地からは、こうも書かれていた。


あなたのやり方は、

正しいかどうか分からない。


だが、

「止める」という選択肢を

見せてくれた。


 それで、十分だった。


「……広まりませんでしたね」


 エルナが、少しだけ寂しそうに言う。


「広めるものじゃない」


 アルノルトは、静かに答える。


「管理は」


 言葉を選ぶ。


「引き受けるものだ」


「覚悟を、

 制度にはできない」


 王都は、変わらない。


 標準化は進む。

 数字は、整えられる。


 多くの命は、

 それで救われるだろう。


 それでも。


 この領地では、

 違うやり方を続ける。


 止める時は、止める。

 進む時は、進む。


 誰かが、決める。


 夕方。


 作業者たちが、今日も戻ってきた。


 怪我はない。

 顔色も悪くない。


 それが、

 この領地の結論だった。


 アルノルトは、窓の外を見ながら思う。


 世界を変えなくてもいい。

 正解を証明しなくてもいい。


 ただ――


「壊れないように、

 使い続ける」


 それだけで、十分だ。


 迷宮の奥で、

 魔力が、静かに循環する。


 止められてもいない。

 急かされてもいない。


 まるで――

 人の呼吸に、

 合わせるかのように。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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