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滅びかけ領地の問題ダンジョンを、冒険者じゃなく作業員で回してみた結果 ―命を賭けないダンジョン経営録―  作者: 山奥たける


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第15話 管理とは、均すこと

 五層の結晶は、翌朝もそこにあった。


 大きくなってはいない。

 だが、消えてもいない。


「……増殖反応は?」


 アルノルトの問いに、エルナが首を振る。


「確認されていません。

 成長も、分裂も、なし」


「ただ――」


 一拍置く。


「魔力の流れが、ここを避け始めています」


 それは、新しい問題だった。


 地図の上に、魔力流量の線が引かれる。


 三層は、安定。

 四層は、停滞。

 五層は、滞留。


「……均等じゃない」


 アルノルトは、図を見つめる。


「人の出入りが、

 そのまま影響している」


 ドグラスが、腕を組む。


「使ってる所に集まるなら、

 使わない所は痩せるな」


「逆だ」


 アルノルトは、静かに言う。


「使われすぎない場所に、溜まっている」


「止めすぎた」


 その言葉を、

 アルノルト自身が一番理解していた。


 十層を封じ、

 五層を制限し、

 三層だけを回し続けた。


「……迷宮の“呼吸”を、

 止めかけている」


 エルナが、恐る恐る言う。


「では……

 五層を、もっと使いますか?」


 アルノルトは、すぐに首を振った。


「いいや」


「分散させる」


「三層を減らす?」


「四層を、使う」


 ドグラスが、眉を上げた。


「四層は、不安定じゃなかったか」


「だからこそだ」


 アルノルトは、はっきり言う。


「軽く、短く、触る」


 方針は、すぐに決まった。


四層を「通過層」として限定開放


作業は禁止


滞在時間、五分以内


素材回収、不可


異変があれば即撤退


「使うためではなく、

 流すため」


 エルナは、その言葉を書き留めた。


「……通るだけ?」


「ええ」


「意味は、あるのか」


 ドグラスの問いは、もっともだった。


 アルノルトは、少しだけ考えてから答える。


「人が行き来する、という刺激はある」


「迷宮は、

 “完全な封鎖”よりも、

 “無害な干渉”を嫌っていない」


 試験は、即日行われた。


 選ばれたのは、

 管理協力者の中でも、

 最も規則遵守率の高い二人。


「四層を通過し、

 五層手前で折り返す」


「それだけだ」


 結果は――

 すぐに出た。


「……五層の結晶、

 光量が下がっています」


 エルナの声に、確信が混じる。


「魔力が、

 分散しています」


 アルノルトは、静かに息を吐いた。


「……よし」


 派手な成功ではない。

 だが、間違いなく“効いた”。


 その日の夜。


 アルノルトは、帳簿とは別の紙に向かっていた。


 そこに書いたのは、

 数値でも、規則でもない。


管理とは、

抑えることではない


増やすことでもない


均すことだ


 それは、

 彼自身のための言葉だった。


 五層の結晶は、

 その夜、初めて明確に縮んだ。


 敵意も、意思表示もない。


 ただ――

 過剰が解消されただけ。


「……分かり合える、わけじゃない」


 アルノルトは、迷宮の方向を見て呟く。


「だが、

 無視もできない」


 管理とは、

 支配ではない。


 相手を“生きたもの”として扱い、

 反応を受け取り続けること。


 その判断は、

 いずれ王都に報告される。


 前例のない管理。

 効率だけを見れば、遠回り。


 だが――


 壊さずに使い続けるための、唯一の道だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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