表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけ領地の問題ダンジョンを、冒険者じゃなく作業員で回してみた結果 ―命を賭けないダンジョン経営録―  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

第13話 増えたのは、数字ではなく

 最初に変化が出たのは、城ではなかった。


 市場だった。


「……あれ?」


 朝の市場で、商人の一人が声を上げた。


「今日は、人が多くないか?」


 昨日まで、空きが目立っていた通りに、

 ぽつぽつと人影が増えている。


 荷を担いだ者。

 道具を抱えた者。


 見慣れない顔が、確実に混じっていた。


「作業者登録、お願いします」


 簡易受付の前に並んでいるのは、三人。


 全員、冒険者ではない。


「元は……鉱山の下働きです」

「怪我して、前の仕事が続けられなくなって」


 そう言って、帽子を握りしめている。


「浅層までです」


 エルナは、確認する。


「三層まで。

 日当制。

 歩合なし」


「それで、構いません」


 三人とも、迷いなく頷いた。


「……理由は?」


 エルナが、念のため尋ねる。


 一人が、少し照れたように答えた。


「死なないって、聞いたので」


 もう一人が、続ける。


「ちゃんと、帰ってこれるって」


 その報告を受けた時、アルノルトは少し黙った。


「……増えたか」


「はい」


 エルナは帳面を示す。


「作業者登録、

 昨日までで十二名」


「今日の午前だけで、

 さらに五名」


「冒険者ではない?」


「ええ」


「家族持ちが、多いです」


 その一言で、意味は十分だった。


 三層。


 作業者の動きは、ぎこちない。

 だが、無理をしない。


「急ぐな」

「範囲を越えるな」


 声を掛け合いながら、

 一つずつ素材を回収していく。


「……意外と、静かだな」


 新人の一人が、そう呟く。


「危ない場所だと思ってました」


「危ないぞ」


 古参の作業者が即答する。


「だから、

 決められた通りにやる」


 地上に戻る。


 全員、生還。


 怪我なし。


 素材は、少量だが安定している。


 昼過ぎ。


 鍛冶屋が、城に顔を出した。


「……領主様」


「どうしました」


「仕事が、増えました」


 その言葉は、短いが重い。


「作業者向けの道具」


「簡易装備」


「消耗前提の工具」


 彼は、苦笑する。


「高級品じゃありませんが……」


「回る量が、違う」


 薬師も、同じことを言った。


「材料が、途切れません」


「外れも、少ない」


「仕込みが、楽です」


 夕方。


 帳簿に、変化が出た。


 税収が、跳ね上がったわけではない。

 だが――


「……減っていません」


 エルナが、少し驚いたように言う。


「先週比で、

 微増です」


 アルノルトは、静かに頷いた。


「数字に、なったな」


 そこへ、報告がもう一つ。


「……人が、残り始めています」


「町を出る予定だった者が、

 足を止めています」


 理由は、単純だった。


「仕事が、ある」


「危険すぎない」


「明日も、続く」


 夜。


 アルノルトは、王都監督官の言葉を思い出していた。


 ――管理された停滞。


 だが、今目の前にあるのは。


「……停滞じゃない」


 ゆっくりと、前に進んでいる。


 ほんの一歩ずつだが、

 確実に。


 三層の奥。


 作業者たちが引き上げた後の通路で、

 魔力の流れが、わずかに整う。


 過剰でもなく、

 不足でもない。


 人が、使い続けた結果として。


 アルノルトは、静かに呟く。


「増えたのは、数字じゃない」


 人だ。

 選択肢だ。


「……これでいい」


 これが、管理の成果。


 王都が求める“増加”の、

 最初の形だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ