名案
幼女魔王は暇である。
お祖父様が引退なされて、この私が魔王になったのもつい最近のことだ。お祖父様の輝かしい背中を見てきた私は希望を抱いていた。お祖父様のようなどんな魔物だろうと有無を言わさず強きものを総べ弱きをものを助ける。そんな役職なのだろうと。
──暇である。
まさかここまでやることがないとは思わなかった。重要な会議やら書類の作成やらあると思っていた私はそれらを処理しながら大変だなんだと愚痴をこぼしながら魔コーヒーを飲み干すっていう想像をしていた。もう一度言おう。
──暇である。
何をすることも出来ない。何故か理由なく外出が出来ないのだ。出ようとすれば部下たちに「貴方様はもう魔王なのです」と止められてしまう。その前に私はまだ子供じゃいってな。
「はてどうしたものか。──いや待てよ? 理由がなければ外出できないのであれば理由を作ればよいではないか」
実に名案である。しかし、いきなり外に出ると言ってもあまり外を知らない私を部下たちが拒むのは目に見えている。そもそも理由が思い付かん。そこで、まずは外を知る前に中を知ろう作戦である。中のあらゆることを熟知してしまえば外の知識を知りたがってしまうのは仕方がないことである。そうしてしまえば部下たちも納得するであろう。
「ふふふ、そうと決まればまずは申請を出すとしよう」
幼女魔王は少しは忙しくなった。