【5】
「チューダ、気のせいか我の玉座にペンギンがおるのだが」
「あれはコウテイペンギン、ペンギンたちの皇帝でございます」
「おお、さすがに諫めに行った感心なものがおるな」
「あれはキングペンギン、ペンギンたちの王でございます」
「……玉座の奪い合いを始めたのだが」
「下剋上です。皇帝と王、どちらかが上か試されています。体が大きいだけ皇帝ペンギンが有利でしょうか」
「他所でやってもらえぬかなあ」
* * *
「というわけで天覧試合で決着をつけることになりました」
「我を天と認識しておるという事実だけですでに感動を覚えておるわ」
「こちらが演目にございます」
「せめて競技内容とは言ってほしかった」
「まずは魔王様にはこちらにて笛を吹いていただきたく」
「これは飛込競技であるか」
「どちらがより早く笛の音に合わせて飛び込めるかを競う演目でございます」
「おお、よいぞ。我の指示にいかに迅速に従えるかで勝敗を決めるか」
「では、魔王様。よろしくお願いします」
「……」
「笛を吹く前にすでに飛び込んでおるなあ」
「どちらのほうが早かったですか」
「指示に従わずに早いも遅いも評価しようがないのである」
* * *
「次はシーソー勝負です。一羽でシーソーの上を往復し、時間内で回数を競います」
「我にもわかるぞ。これシーソーに乗らないやつだ」
「フフフ、魔王様も段々部下のことがお分かりになられてきたようで」
「上司として寄せてはいけないところを寄せている気がしてならない」
「しかしご安心ください。イワシを使います」
「どういうことであるか」
「シーソーの左右に次々とイワシを放り、ペンギンを誘導するのです」
「なるほど、これならやつらも従うか」
「では魔王様はコウテイペンギンのほうを。私はキングペンギンのほうを受け持ちます」
「よかろう」
ひょい ぱく 「きゅー」 がたん
ひょい ぱく 「きゅー」 がたん
「‥‥…」
ひょい ぱく 「きゅー」 がたん
ひょい ぱく 「きゅー」 がたん
「これ、ペンギンたちの勝負ではなく、我とチューダの餌やり勝負と化しておらぬか」
「ペンギンの演目とは大体そういうものでございます」
「まだ部下へ理解が足りなかったであるか―」
* * *
「最終演目はイワシの大食い対決です」
「もうペンギンどもの欲求を隠す気もないのであるな」
「イワシをたくさん食べたほうが勝ちです」
「不思議である。勝負方法を説明される前からルールが完璧にわかったわ」
「さすがは聡明なる天空の王フレスベルグ様」
「今皮肉でもなんでもなく本気で褒めているだろう貴様」
「こちらがイワシのバケツでございます」
「左右の手で同時に与えてやればよいのだな」
「ではどうぞ」
「……よく食うなあこやつら」
「それがペンギンでございますゆえ」
「少し遠目に放ってやるか。ふははちゃんと食いに行きよるわ」
「魔王様もお楽しみいただいているようで何よりです」
「む、チューダ、イワシが無くなったのだが」
「これ以上は食べ過ぎになりますゆえ。ここまでにさせていただきたく」
「え、でもこれ大食い対k」
「本日の演目はこれにてすべてでございます」
「左様であるか」
「観覧席のベヒモス一家様もたいそう喜ばれております」
一家は高いフリーパスを買って帰っていった。
* * *
「して、魔王様にはコウテイペンギンとキングペンギン、最終的に誰が玉座にふさわしいかお決めいただきたく」
「そこ我の席なのであるなあ!」