6.祈りの塔でお礼を
朝になったけど、昨日のことは夢じゃなかった。
本当に叔父様と婚約したんだ。
発表は後日と言っていたが、戦争が終わったことと一緒に発表するのだろう。
眠りすぎたからか、なんとなく身体はだるかったけど、祈りの塔に向かった。
戦争が終わったのなら、もう祈らなくてもいい。
だけど、最後にお礼を言いたかった。
国を守ってくれた騎士団や兵士、耐えてくれた民に。
塔の階段を上って祈りの部屋に入ると、そこには叔父様がいた。
「え?」
「ああ、おはよう。祈りに来たのか?
今日は俺も一緒に祈ってもいいか?」
一緒に祈る…?確かに王族であるし、叔父様が祈ってもいいのだろう。
「叔父様、今日は祈りではなく、お礼を言うために来ました。」
「お礼?」
「はい、戦った者や、耐えてくれていた者たちに、戦争が終わったお礼を。」
「…そうか。わかった。俺もお礼を言おう。」
靴を脱いで祭壇にあがる。
それを見た叔父様も靴を脱いで、祭壇にあがってきた。
二人で並ぶと少し狭いが、跪いて祈るには十分だった。
いつもより少し長く祈り、お礼を伝える。
戦争が終わったことへの感謝を込めて。
祈り終わって目を開けると、同じように終わったのだろう。
叔父様がこちらを向いた。
「身体が冷えてしまっただろう?大丈夫か?」
「大丈夫です。戦争も終わったし、しばらくはここに来ることもないと思います。
今のが最後の祈りになるといいのですが…。」
国内に不安なことがなければ、ここで祈る必要はない。
ここは王政でもどうにもならないことがあった時に祈る場所なのだ。
できれば来ないでいられたほうが嬉しい。
「そうか、そうだな。
もうここが必要じゃないと思えるようにしないとな。」
そうか、叔父様が次の国王になる。
私が祈る必要があるかどうかは、叔父様の王政次第なのかもしれない。
昨日まで女王になるつもりだったくせに、祈るだけで、
祈りがいらない王政をしようとは思ったことが無かった。
叔父様はもう王になる覚悟ができているのだろう。
塔を下りて私室に戻ろうとした時に、声をかけられた。
「シルヴィア、午後のお茶の時間に訪ねていくから、待っていてくれるか?」
少し不安げな顔をしているのが気になったけど、
話しをしたいのは私も同じだった。聞きたいことがたくさんある。
「わかりました。お待ちしてます。」
その返事を聞いて、叔父様がうれしそうに笑った。とてもうれしそうに。
そんな顔を見るのは、5年ぶりだった。
思い出してしまったあの頃は、毎日のようにその笑顔を見ていたのに。