4.結婚相手
昼前に軽食を出されたが、あまり食欲が無かった。
それでも倒れることのないようにと、
サンドイッチを一切れとスープを何とか口にした。
侍女たちに磨き上げられ、いつもとは違う清楚なドレスに着替える。
淡いレースのかかった青色のドレス。
この国で青系のドレスを着られるのは、王族の妃と王女のみ。
王族特有の碧眼から、そう決められている。
今まで王女でも成人前だからか青系と言っても、
水色のドレスを着るくらいだった。
ここまではっきりとした青色のドレスは初めてだ。
16歳になるからなのか、婚約するからなのか…。
光沢のある青の布地は素晴らしく、なんだか複雑な気持ちになる。
準備を終えて私室を出ると、すぐに文官に案内された。
謁見室の前は人払いされているのか静かだった。
中に入るとお父様の他に宰相や大臣たち、主要な貴族たちがそろっていた。
私が一番最後だったのだろうか?入るとすぐにお父様から声がかかる。
「シルヴィア、ここに参れ。」
「はい。」
王座に座っているお父様の前に出ると、横に来るように言われる。
そこに立つのは王妃のはずで、
お母様が亡くなってからは誰も立たせていなかった。
驚きつつ移動しお父様の横に立つと、静かにうなずかれた。
「今からお前の結婚相手が入室する。」
扉の方を見ると、衛兵たちが開けようとしている。
これから入室する相手が、私の結婚相手。
冷静になろうとしても、鼓動は早まり、手のひらに汗がにじんだ。
顔には出していないが、逃げ出したくなるような気持ちだった。
覚悟を決めなければ。そう思って、姿勢を正した。
扉がゆっくりと開き、一人の男性が入ってきた。
長身で金色の髪を短くしている。
騎士服の上から見ても、しっかりと筋肉がついているのがわかる。
質のいい騎士服を着ているということは騎士団でも上位の役職のものだろう。
年齢は20代半ばといった感じだろうか。
少しずつ王座に近づいてくる、その顔を見て小さく声が出た。
見覚えのある切れ長の碧眼が、私の視線をしっかりと受け止めて、微笑んだ。
「…っ!」
記憶の中ではまだ少年だった人が、幼さを無くし、一人の男性として、
騎士として立派な姿になって帰って来た。
ずっと他国との戦争を騎士団長として指揮していたはず。
ここにいるということは、戦争は終わった?
「ただいま戻りました、陛下。」
「良く帰ってきてくれた。ジルバード。
4年もの間、大変な役目を負わせたな。
皆のものに宣言する。
一年後、王位をジルバードに譲る。
そして同時にジルバードはシルヴィアと結婚し、
二人で国を守ってもらう。」
さすがに宰相や大臣たちは知っていたのか、
そのまま宣言を受け止めている。
貴族たちは自分たちの思惑が外れて、面白くない者もいるのだろう。
ざわめきが聞こえる。それでも、その声を表に出すことは難しいようだ。
今まで4年もの間、騎士団長として戦争を止めている。
戦争と言っても、他国からの侵略戦争だった。
それを辺境の地で騎士団を指揮し、
国内に争いが広がらないように他国の兵を押し返していた。
その功績は貴族たちがどうこう言えるようなものではなかった。
褒賞として、王女との結婚も当然だと受け止められた。