28.塔の意味
「で、どういう状況だったんだ?」
ラミサージャ王女を宮に送り届け、医術士の手配をした後、
お父様の謁見室に報告に来ていた。
あの光の檻はなんだったのか、国王であるお父様なら知っているのだろう。
ラミサージュ王女に声をかけられたところから、会話まですべて報告すると、
お父様は深くため息をついて、
「ジルバードを至急呼べ。」
と文官に指示をしていた。
「長い話になる。まずは朝食をとろう。応接室のほうに用意させる。」
ジルが来るまでは話せないのだろうと思い、素直にうなずく。
あの騒動のせいで、朝食どころではなかった。
気が付いてみれば、とてもお腹がすいている。
サラダとスープを食べて、少し落ちついたところでジルが到着した。
至急の呼び出しで慌てたのだろう。少し息が上がってる。
「…良かった。ルヴィじゃないんだね。」
何のことだろうと思って首をかしげる。まだ口の中はもぐもぐ中だ。
話すのにちょっと待っててほしい。
「あ、医術士が呼ばれて、至急兄上が来いっていうから、
ルヴィに何かあったんだと思って。」
あぁ、医術士を呼んだことはわかっているんだ。
護衛騎士たちも慌てていたし、それなりに騒ぎになっていた。
ジルへ報告がいってもおかしくなかった。
倒れたのが私だと誤解していたのか、無事だとわかってほっとしたようだ。
私の横に座り、うれしそうに頭をなでてくる。
「ジルも朝食食べる?」
ようやく口の中のものを飲み込んで聞くと、大丈夫と答えが返ってきた。
仕事に行く前に食べたのかな。
「ちょっと待て。長い話になりそうだから、先に食べさせろ。」
無言で食べていたお父様がジルに待つようにいう。
レーベントがジルの前にお茶をおいて部屋を出て行った。
人払いをして、ここで話すようだ。
待たせたくなくて少し急いで食べ終わったら、
ジルがお茶の横についていたチョコレートを私の口の中に入れてきた。
「んぅ。」
突然そんなことされると驚くからやめてほしい。
チョコレートが口に入っているせいで文句を言えないでいると、
デザートだよって微笑まれた。
なんとなく張り詰めていた気持ちが緩んで、ジルの肩によりかかる。
朝からいろいろあったから、少し疲れていた。
そのままぼんやりしているうちに、食べ終わったお父様がジルに話をしている。
さきほどラミサージャ王女にあった出来事を説明している。
話し終わったお父様が渋い顔をしている。
それを聞いたジルもまた同じように渋い顔になって黙っていた。
…今、聞いてもいいかな。
「お父様、私はあの祈りの塔は王族しか入れないと聞いていました。
どうして、ラミサージャ王女は中に入れたのですか?」




