27.光に囚われる
塔の階段を上がり、青の貴石の扉に手を近づけると、いつもと同じに扉は開いた。
王族以外ははじかれるって聞いたけど、どこまで入れるのだろう。
恐る恐る王女を連れて中に入る。
私と王女が中に入ると、扉は音もなく閉まった。
「何、ここ。面白いわ。石が光ってる。
でも、本当にジルバード様いないのね。」
どうなるかわからず不安がっている私とは違い、王女は塔の中を楽しそうに見ている。
だが、ジルがいないことを確認すると、つまらなそうな顔になった。
「ですから、いないと言いました。」
「でもね?ここ王族以外は入れないのでしょう?
わたくしが塔の中に入れたということは、
側妃として認めると塔が言ってるんじゃないのかしら。」
…本当に?そうなの?
王族じゃなくても、王族に嫁ぐ者は中に入れるということ?
何も言い返せなくて困っていると、ラミサージャ王女は祭壇に寝転がった。
「え?王女?そこは祭壇ですよ?寝転がるところじゃありません。」
「何よぅ。少しくらいいいじゃない。側妃になるんだもの。
王族ならここにいても問題ないんでしょ~?」
そう王女が言った瞬間、祭壇が光りだした。
丸い祭壇の石の形に合わせて、光の柱が出現した。
ラミサージャ王女はえ?え?と言って降りようとするが、
光の檻の中から出てくることができない。
これがはじかれるってこと?どこかに飛ばされるの?
だんだんと光が強くなって、中にいるラミサージャ王女を見ることができない。
音も遮断されているのか、王女の声も聞こえてこない。何が起きているのか。
どのくらいそのままでいただろう。
光が急に消えたと思ったら、祭壇の上にラミサージャ王女は倒れていた。
「王女!大丈夫?しっかりして?」
「…ん?」
王女に駆け寄って揺り動かすとすぐに反応があった。
良かった。意識が戻ったようだ。
目が開いたと思ったら、違和感をもった。
ラミサージャ王女は何色の目だった?思い出せない。
だけど、前とは違う気がする。王女の瞳は緑と黒が混じった、不思議な色をしていた。
「…王女?」
「え?…あなたは誰ですか?ここは…?」
きょろきょろとあたりを見て、不安そうな顔をする。
妖艶なドレスを着ているのに、色気を感じさせていない。
あれだけ艶やかだと思っていたのに、今は素朴な印象を感じていた。
「とにかく、宮に戻って身体を診てもらいましょう。
何か後遺症でも起きているのかも。さぁ、立って?」
手を貸そうと差し出すと、不安そうに手を置いてきた。
先ほどまでの王女とはまるで別人だ。
塔の下に降りると、待機していた護衛たちに指示を出し、
ただちに医術士を呼んでもらう。
王女の身体に何があったのだろう。
あの現象が、はじかれるってことなのだろうか。




