22.嫌な出会い
「あら、シルヴィア王女。ごきげんよう?」
また会ってしまった。どうしてこんなところにいるんだろう。
朝だというのに、なまめかしいドレス姿で王女がこちらに歩いてくる。
「ラミサージャ王女、こちらは王弟の宮の庭です。
王女には立ち入り許可が出ていないはずです。
お帰りください。」
「そんなこと言わないで?国に帰ったらもう自由は無いのよ。
国に帰らなくても、どうなるかわからないし。
ここにいる間くらい、自由にさせてくださらない?」
後ろにいる護衛を見る。
王女に我がままを言われて許してしまったのだろう。
護衛を代えても同じことなのは、すでにわかっていることだった。
この護衛も王女がいなくなった後に再教育に行かされるのだろう。
思わずため息をつきたくなるような状況だ。
王女が来てまだ3日目なのに、この混乱っぷり。
戦争ではなく、最初からこの王女を送り込んできた方が、
よっぽどこの国を掌握できたのではないだろうか。
戦争が起きる前なら、王女を娶る話も検討されたような気がする。
「その自由は滞在している宮の中だけにしてください。
あなたの命の保証ができません。
それは護衛がよくわかっているはずなのですが。」
「護衛を責めないであげて?
責任なら私がとるわ。」
「責任をとる、ですか?ただ滞在を許されているだけの王女が?
どうやってですか?」
うーん、そうねぇと言いながら、あごに指をあてて考え込む姿も艶やかで、
後ろの護衛たちが見とれているのがわかる。
「だから、私を側妃にしてくれればいいのよ。
そしたら、この護衛たちはずっと私付きの護衛にすればいいわ!」
名案だわと言いたげな王女に、うれしそうな顔をする護衛たち。
頭が痛いわ…どうしようかしら。
「側妃は父にもジルにも断られていましたよね?」
「いいえ?国王陛下には断られたけど、ジルバード様には断られていないわ。
国王陛下は愛娘が結婚する相手だもの。
側妃を薦めるような真似はしないでしょう?
でも、ジルバード様は、側妃からお生まれになった王子ですもの。
ご自分の生まれを否定するようなことはないでしょう?」
それは私も思っていたことだった。
側妃から生まれたジルが、側妃の存在を否定するのだろうかと。
ましてや、王族は私とジルしかいない。
本当なら側妃を娶るどころか、後宮を復活させなくてはいけない状況だ。
王女としてこの国の先を考えるなら、否定してはいけない…だけど。
この王女だけは、どうしても嫌だ。
「側妃が必要ならば、議会がこの国の貴族から選ぶでしょう。
わざわざ敵国から娶る必要はありません。
それでは護衛たち、王女を宮に連れて帰りなさい。
…次はありませんよ?」
護衛もさすがに私の命令に逆らう気は無いのだろう。
まだ何か言いたげな王女をなだめながら連れて行った。
疲れたわ…今日は何もしたくない。
でも、学園があるし、王子がいるから休むわけにもいかない。
…もう、王女の宮に帰ってしまいたい。




