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2.王の私室

「お前の結婚相手が決まった。」


「え?王配を決められたのですか?」


その言葉で最初に感じたのは驚きだった。

ずっと、結婚相手は私が決めるようにと言われていたのに。

なぜ今になって、お父様が決めたのだろう?


「王配ではない。お前は女王にならない。」


「え?どうしてですかっ?」


思わず大きな声を出してしまったが、咎められなかった。

なぜ私室で、人払いしたのか、ようやく理解した。

私が取り乱してもいいようにとの配慮だろう。


「私は、お前を女王にするとは一度も言っていないよ?」


「え?」


今までのお父様との会話を思い返す。

そういえば、結婚相手と言っていた。一度も王配を選べとは言っていない。

たった一人の王女だから、女王になるものだとばかり思っていた。

だから結婚相手とは王配のことだと思い込んでいた。


「すまんな。私はお前が誤解しているのは知っていた。

 だが、説明することは難しかった。」


「お父様…。」


「結婚相手は今日の午後に会うことになる。

 心の準備をしておきなさい。」


「…わかりました。」


戦争が続いている状態での結婚相手。きっと政略結婚なのだろう。

私と結婚することで停戦、同盟を結ぶのであれば仕方ない。

女王にならないのは驚いたが、国のためになるのであれば受け入れるつもりだ。


残りの朝食を食べ終えて、国王の私室を出る。

会うのは午後と言っていた。今日の午後の教育は休みになるのだろう。

もしかしたら、今後は教育などいらないのかもしれない。


私室に戻り、侍女にお茶を用意するように言う。

もう決まったことなのだから、私がどうこうしても仕方ないとわかっていたが、

受け入れるためにも少し落ち着いて考えたかった。


出されたお茶を見ると、横に小さなチョコレートがいくつか置かれている。

持ってきた相手を見るとハンスだった。

笑いじわが目立つハンスが、穏やかに微笑んでいる。

小さいころから教育係としているハンスは、お父様の教育係でもあったらしい。

けっこうな年齢だが、私を育て上げるまでは引退しないと言っている。

私が結婚したら…ハンスは引退してしまうのだろうか。


「ありがとう、ハンス。私、結婚することになったわ。」


「陛下から聞いております。」


そう言うとテーブルに革袋を2つ乗せた。

かなり重いらしく、置くときにゴトっと大きな音がした。


「これは何?」


「中に金貨と銅貨が入っています。

 陛下が、シルヴィア様が結婚の約束をしている相手がいるのなら、

 これを持って王宮から出て行っても許す、と。」


「え?」


結婚の約束をしている相手?王宮から出ても許す?


「どういうこと?ハンス。私は結婚の約束をしている相手はいないし、

 そもそも結婚相手になる候補すら見つけていないのよ?

 もちろん王宮から出ていくことも考えていないわ。

 どうしてお父様はそんなことを?」


「陛下は後悔しておいでです。

 好きな相手を選んでいいと言ったのに、急に結婚を決めたことを。

 表向き国王として認めることは出来ないが、

 好いた相手がいるのであれば逃がしてやりたいと。

 そうおっしゃっていました。」


「…そう、そうなの。」


後悔している。お父様がそんな風に迷うこともあるのね。


「大丈夫よ、ハンス。

 この結婚が国のためになると言うなら、私に不満はないわ。

 女王となって、この国のために生きようと思っていたけど、

 それが無理なら政略結婚でもいいわ。役に立てるもの。」


「…シルヴィア様が女王になるおつもりなのは知っていました。

 そのようにお考えだったのですね。」


「ハンスは私の結婚相手、誰なのかわかるの?」


「…午後になればお会いできます。」


「そう。わかったわ。」


口止めされているのだろう。そこまで言いにくい相手なのか。

おそらく先に呼び出されたのは、その相手に会っても取り乱すことのないようにと。

会う前に覚悟を決めておけということなのだろう。


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