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16.婚約相手

「問題?」


「そう。俺とルヴィの婚約相手を探すのが難しくなった。

 当時の俺は16歳。もう少しで婚約者を選ぶ時期だったんだ。

 だけど、俺はルヴィが大事で、ルヴィのことしか考えられなかったし、

 そんな状態で他の令嬢に会う気なんて無かった。


 ルヴィも俺にべったりで少しも離れようとしなかった。

 だから他の令息に嫁いだり、ましてや他国に行くことなんて無理だと判断された。

 で、話しあった結果、俺とルヴィを結婚させることになった。」


「え?そんなの知らない!」


「まだ8歳の心を痛めてるルヴィにそんな話はできないよ。

 もう少し大きくなって落ち着いたら話すつもりだったんだ。

 だから、このことを知ってるのは一部の人間だけだ。

 まぁ、そんな理由で俺は婚約者選びをしないことにし、

 ルヴィは王妃教育を受けることになった。」


「そうだったんだ…。」


「一度始めてしまえば、途中で変える理由もないと、

 そのまま王妃教育は続けられていたそうだ。

 苦労しているならともかく、ルヴィは優秀だったみたいだしね。

 王妃教育が終わっているなら、もう王政に関わっても大丈夫だよ。」


「本当に私が関わっていいの?」


「うん、俺が少しずつ教えるし、

 1年もあれば俺の代わりもできるようになるだろう。

 それに、王政に関わっているものは他国に嫁ぐことは出来ないからね。

 これで少しは安心できるかな…。」


あぁ、そういう意味もあるんだ。

だから、今からでも王政に関わらせてくれるんだ。


「わかった。次の休みから執務室に行けばいいのね?」


「うん。まぁ、ほとんど俺と一緒に行動することになるから、大丈夫だよ。」


ほとんど一緒、の意味が分かったのは、それからすぐのことだった。




「寝台が無い…。」


連れて来られた私の部屋は、寝台が無かった。

着替えやお茶は出来るようになっていたし、前の部屋よりも広かった。

私好みの大きなソファは三人は座れるほどだった。

なのに、あるべき場所に寝台が無い。どうして?


「寝台はこっちにあるよ。」


連れていかれた隣の部屋に寝台はあった…けど、大きすぎるんじゃない?


「ルヴィは俺と一緒に寝るから、寝台はここだけね。」


「え?」


「前も一緒に寝てただろう?変わらないよ。」


確かに、5年前まではずっと一緒に寝ていたけれど。

私、もう16歳で、結婚できる年齢なのだけど…って、

ジルと結婚するからいいのかな?

じっとジルを見ると、困った顔をする。


「前みたいに、手をつないで寝るだけだよ。

 夜に離れていると不安なんだ…ルヴィが連れ去られるんじゃないかって。

 気が気じゃない。寝不足になりそうなんだ…。」


よく見ると、ジルの目の下にくまが出来ている。

忙しいのとは別に理由があったようだ…これは一緒に寝ないともっとひどくなる?

手をつないで寝ていいのなら、私もそうしたい。

ジルと一緒にいたら、怖い夢を見なくて済む。


「わかったわ。ここでジルと一緒に眠ることにするね。」


「うん、良かった。」


本当に安心したって感じでほっとしているのを見て、笑いそうになる。

一緒にいなかった間の時間は少しずつ埋めて行けるのだろうか。

そう思っても、胸にささった棘はまだ抜けそうになかった。






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