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15.幼い記憶

ジルに手を引かれてついていった先は、執務室の外側の部屋で応接室になっていた。

ゆったりと座れるソファに腰掛けると、ジルが私に寄り添うように座る。

私の手はジルに握られたままだ。

少し体温が高いジルの熱が伝わってきて落ち着かなくなる。

このまま話すのだろうか?


「俺と最初に会ったのはいつだったか、覚えている?」


「覚えているわ。8歳の時よ。お母様が亡くなって、すぐだった。」


「そうだ。あの時まで、俺とルヴィは会わせてもらえなかった。

 どうしてかわかる?」


「わからないわ?どうしてかしら。」


そういえば同じ王宮内で生活していたのに、どうして8歳まで会わなかったのだろう。

お父様とジルの仲が悪いわけではないし、お母様が原因だとも思わない。



「王位継承権を持っているのは、俺とルヴィだけだ。

 それに、俺は命を狙われていた。」


「え!?」


「だから、一緒にいる時に狙われないように、離されていた。

 2人が同時に亡くなるようなことがあれば、王族がいなくなってしまう。

 それだけは避けなければいけないからね。」


「そうだったんだ…でも、どうして会うことに?」


今でも王位継承権を持つのはジルと私だけ。

状況は変わっていないのに、どうして会うことができたんだろう?


「王妃が亡くなり、ルヴィが一言も話さなくなった。

 誰にも心を開かなくなり、食事もとらなくなった。


 俺はそれを知らなかった。

 知らされていなかった。

 だけど、あの時一人で夜歩いているルヴィを俺が保護した。

 無意識で夜に歩き回っていたんだ。おそらく母親を探して。」


知らなかった。お母様が急に亡くなって、

お父様は国王としての仕事に加えて王妃の仕事もするようになって、

ほとんど会うこともできなかった。

だからって、私が夜に無意識に歩き回っていたなんて。

あの頃の記憶は、思い出そうとしても、

遠すぎる場所を見ようとしているみたいだ。

自分のことなのか、他の人のことなのか、区別がつかない。



「ルヴィに意識は無かった。何度も俺が見つけて保護しているうちに、

 俺にルヴィがくっついて離れなくなった。

 それで、俺の宮に預けられることになった。

 ルヴィを一人にして心が病んでしまうくらいなら、

 俺が一緒にいて守っていた方が安全だろうと。」


「そうだったんだ。

 だから、あの頃ずっとジルと一緒にいたのね。」


ふわっと身体が軽くなったと思ったら、ジルに抱き上げられていた。

驚いているうちに、そのまま膝にのせられてしまった。


「え?なんで?」


ぎゅっと一瞬だけ抱きしめられて、離れたジルの顔を見ると、うれしそう。


「やっとジルって呼んでくれた。

 ごめん、うれしくて、抱き上げてしまった。

 でも、話の続きはこのままでね。」


あぁ、そういえば、ジルって呼んでなかった。

もう私の中では何もこだわっていないつもりだったけど、呼んでいなかったんだ。


「ルヴィが俺と暮らすようになって、問題が一つ起きた。」


「問題?」


「そう。俺とルヴィの婚約相手を探すのが難しくなった。」




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