ボトルの導きで温泉郷へ
うん?
白髪鬼が苦しみだした。
うぐぐぐ。
老女の姿から白髪鬼になったと思ったら不気味な姿の化け猫へと変化した。
これがお前の正体か?
ニャ! ゴゴ!
化け猫は涎を垂らしプラスティ―に襲い掛かろうとしている。
危ない!
アル―から貰ったアイテムをすべて取り出し、手当たり次第投げる。
ニャ! ゴゴ! ウウウ!
痛がる様子のない化け猫。
プラスティ―が標的となり執拗に追いかけ回される。
ほら早く! 何とかして!
上手く立ち回りなんとか避けているが体力的に限界のようだ。
パックは腰を抜かしたのか立ち上がれない。
このまま順々に食われてしまうのか?
痛そうだな……
カン! 助けて!
そうしてやりたいが見守るしかない。俺は弱い人間。相手になるはずがない。
アイテムはロクなものが無い。
そうサバイバル用ではない。ただの飾り……
うん? 小さな木の棒?
小さすぎて武器にはならない。
それでも少しでも役に立つならと化け猫目がけて放る。
ヒット!
しかしやはり大したダメージを与えられていない。
どうする? これまでか?
化け猫ハウスで餌食になる哀れな冒険者たち。
助けは来ない?
ニャア! ギョギョ!
ゴロニャア! アアア!
どうしたんだ様子がおかしいぞ。
まるで酔っているように気持ちよさそうに横になる。
木の棒にメロメロの化け猫。
大人しくなった。
パックを起こしプラスティ―を抱きしめる。
カン。一体何が?
さあ、俺にも分からないんだ。
兄貴! さすがは兄貴!
俺は別に何も……
あら、これマタタビじゃない。
知ってるのか?
ええ、前に飼っていた猫も好きだった。でもやり過ぎは禁物。
それに効果は一時的よ。早く何とかしないと。
どうする?
仕方ない。元の猫に戻してあげましょう。
シャーマンの力を解放。
化け猫を元の猫の姿に戻した。
すげ!
いつの間にか身に着けていたの。でもこの能力も月に一回しかできない。困っちゃうでしょう。
ううん。凄いよ。見直したよ。
そうっすね。シャーマンなんてでたらめだと思ってたがまさか本当とは。
信じてなかったの? カンも?
首を縦に振る。
それよりこの猫どうしよう?
元化け猫だ。自分で生きていけるさ。
もう! 可哀想でしょう。私たちがやったんだから最後まで責任を持つの!
ええ? まさか?
うん。連れていくわ!
本気?
プラスティ―は迷いが無い。
名前はどうする?
俺が!
兄貴。自分が!
ボトルね。
独断で名前を決める。
これだから……
何か?
首を振る。
じゃあ決まりね。この子はボトル。
ペットのボトルね。
ニャア!
ボトルが仲間になった。
翌日。
最初の目的地、温泉郷を目指し出発。
落石地点に戻りやり直し。
ハアハア。
疲れた!
もう?
少し休みましょう。
後は下るだけ。もう少しのところで足踏み。
痛がる素振りを見せるプラスティ―。
足を見せて。
嫌がるプラスティ―を脱がす。
右足が腫れている。
それだけではない。豆がつぶれてしまっている。
長旅に加え登山。足は悲鳴を上げている。
兄貴俺も見てくだせい。足の爪が剥がれかかっています。
茶色くなっている。放っておくと悪化する恐れがある。
二人とも何で昨夜言わなかった?
それどころじゃなかったし。疲れていたから。
俺だって食って眠っちまったし…… そしたらあの婆に襲われてさ。
ボトルの方を見る。
今は薬もない我慢して歩くんだ。
うん。
へーい。でも自分はこれくらい平気っす。
油断は禁物だ。どんな時もだ!
渋々頷く二人。
以後気をつけるように。何でもリーダーの俺に報告しろ!
ええ? リーダー? 私じゃないの?
兄貴には荷が重い。やっぱりここは自分が代行しまして……
リーダー争いが激化する。
俺! 俺に決まってるだろ!
何を言ってるの! 私は二人の保護者みたいなものよ。
それは違いますぜ。やっぱり腕力で自分に分がありそうっすね。
やるか!
兄貴が望むなら!
ちょっと!
はっははは。二人とも怪我をしている。勝てると思うのか?
はい! お終い!
プラスティ―が止めに入る。
もうここは多数決で決めましょう。
私が良いと思う人?
誰も手を上げない。
何でよ!
パックが良いと思う人?
ハイハイ! あれ?
最後にカンが良いと思う人?
二人が手を上げる。
ハイ決定。カンがこの隊のリーダー。
文句のある人?
自分も兄貴を推してました。やっぱりここは兄貴でないと。
嘘をつかないの!
本当ですよ。ねえ兄貴。それでここは格好よく隊の名前も決めてもらいましょう。
そうね。それいいかも。
カッコイイのお願いします。
うーん。思いつかないな。何がいいかなあ。
物思いにふけること十分。
答えを出す。
カンズはどう?
却下。
もう! 歩きながら考えましょう。
ボトルが走り出した。
急ぐな! 危ないぞ!
休憩終了。
落下地点に長くいるのも危険。
昨日は左に曲がったが今日は右に行くことにする。
おい! 危ないぞ!
ボトル!
兄貴!
まずい! 俺らまで走り出したらまた落石が始まってしまう。
そうね。ゆっくり振動を起こさないようにしましょう。
賛成!
大声を出すな!
カンも!
プラスティ―だって……
ゆっくり静かにそれでもボトルを見失わないように追いかける。
そんな事は不可能。
ブツブツ
ひそひそ
ボトルは一度視界から消えた。
大木の陰に隠れたのだ。
ボトル!
けものみちを進む。
何に遭遇するか分からない。まあ危険なのは夜行性ではない熊だろうか。
道が二つに分かれた。
ボトル!
分かれ道で大人しく待っていた。
えらいわ。ボトル。
どっちに行く?
リーダお願いしますぜ。
そうよ。せっかくリーダーを決めたんだからカンが選ぶべきよ。
しょうがないなあ。着いて来いよ。
右、いや左かな……
どっちでもいいから早く決めて!
左方向に足を向けた。
しかしボトルが走り出す。
こっちだと言わんばかりに駆ける。
オイ! 待ってくれ!
ボトルは再び見えなくなってしまった。
仕方ないこっちに行こう!
けもの道を抜け視界が開けてきた。
ボトル! ボトル!
先に行かないの! 危ないでしょう!
あれ?
村だ!
ニャア!
どうやらボトルは私たちを導いたようだ。
家々が立ち並び、小さな集落が形成されている。
私たちの探し求めていた温泉郷?
うおおお!
雄たけびを上げる。
兄貴! 着きましたぜ!
ああそうだな。みんなよくやった!
とりあえず一軒一軒当たってみる。
続く