表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

15.



 都市は滅びた。


 その光景を城壁の上にいるG・コマンダーから観察していた。


 城壁の隙間から人間の居住区に侵入したゴキブリは、内部の食料により急速に数を増やした。


 ゴキブリに装飾の文化はない。

 花壇や布など柔らかい物は真っ先に狙われ、木柱を削られた住居は次々と倒壊を始める。城や塔にも入り込めば、窓や隙間から飛び落ちてくる。

 都市が形を失うほどにゴキブリは量を増やす。建物の二階に届かせる量には、頑丈だと思われた倉庫さえ強度を保てなかった。


 避難中にどれだけ運び出されたかは知らないが、人々が生活するための備蓄が消費された結果だ。

 襲撃を数日遅らせたところで、今の光景は変わらなかっただろう。


 あらゆる物がゴキブリのために消費される。


 それは森も同じ。


 自分が拠点とする一帯は、既に食い尽くされている。

 新鮮な食料を好むゴキブリが都市から戻ってくる可能性は低い。少なくとも自然が力を取り戻すまで、他の地域より餌場になりにくいだろう。


 少数が寄ってくる間は、G・コマンダーで遠ざけられる。


 味覚の楽しみにしても、探しようはある。

 森とも呼べなくなった土地でも、きっと鳥くらいは訪れてくれるだろう。


「物資、手に入らなかったね」

「……すまない」

「ううん、良いの。何となく分かってたから」


 隣にいるバグロリも都市のゴキブリを観察するばかりだ。

 食料探しを諦め、再開できるはずの畑の整備もしない。


 花の種や木の実も、大事に壺に閉じ込めたままだ。


「飽きたら、ゴキブリでも食べてみるか」

「味付きに成長してくれればいいなー」


 虫も肥料になると聞く。

 ゴキブリを研究してみれば、畑の復旧も早まるはずだ。


 ついでに、G・コマンダーも塗装してみよう。

 普通のゴキブリと見た目で区別できないため、まるでゴキブリを飾っているように見える。金でも赤でも性能が上がるかもしれない。



(完)



【面白い】と思っていただけましたら、

【評価】を残してもらえると喜びます。


評価の数だけ、作者の家にゴキブリが住み着くかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二日間で連続投稿します(全15話)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ