15.
都市は滅びた。
その光景を城壁の上にいるG・コマンダーから観察していた。
城壁の隙間から人間の居住区に侵入したゴキブリは、内部の食料により急速に数を増やした。
ゴキブリに装飾の文化はない。
花壇や布など柔らかい物は真っ先に狙われ、木柱を削られた住居は次々と倒壊を始める。城や塔にも入り込めば、窓や隙間から飛び落ちてくる。
都市が形を失うほどにゴキブリは量を増やす。建物の二階に届かせる量には、頑丈だと思われた倉庫さえ強度を保てなかった。
避難中にどれだけ運び出されたかは知らないが、人々が生活するための備蓄が消費された結果だ。
襲撃を数日遅らせたところで、今の光景は変わらなかっただろう。
あらゆる物がゴキブリのために消費される。
それは森も同じ。
自分が拠点とする一帯は、既に食い尽くされている。
新鮮な食料を好むゴキブリが都市から戻ってくる可能性は低い。少なくとも自然が力を取り戻すまで、他の地域より餌場になりにくいだろう。
少数が寄ってくる間は、G・コマンダーで遠ざけられる。
味覚の楽しみにしても、探しようはある。
森とも呼べなくなった土地でも、きっと鳥くらいは訪れてくれるだろう。
「物資、手に入らなかったね」
「……すまない」
「ううん、良いの。何となく分かってたから」
隣にいるバグロリも都市のゴキブリを観察するばかりだ。
食料探しを諦め、再開できるはずの畑の整備もしない。
花の種や木の実も、大事に壺に閉じ込めたままだ。
「飽きたら、ゴキブリでも食べてみるか」
「味付きに成長してくれればいいなー」
虫も肥料になると聞く。
ゴキブリを研究してみれば、畑の復旧も早まるはずだ。
ついでに、G・コマンダーも塗装してみよう。
普通のゴキブリと見た目で区別できないため、まるでゴキブリを飾っているように見える。金でも赤でも性能が上がるかもしれない。
(完)
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評価の数だけ、作者の家にゴキブリが住み着くかもしれません。




