再会
昨日は楽しかったなあ。そういえば霧、ばっちり晴れていたから家に戻ろう。途中までは誰かに案内してもらって。
「あの、一旦家に戻っても良いですか?」
「ええ、良いわよ。でも道分かる?」
「それが・・・ここからは全く分からないんです。エクナル中に着けば分かるんですが・・・」
「だったら私が案内してやる!私のねーちゃんがそこの卒業生だからな!」
「そうだったの!?」
「だから授業参観の日に行った事があるんだ。それにホナミ一人だといつ死んでるかわかんないだろ?」
「確かに・・・」
「あの時からあらゆる場所にモンスターが出没していますからね・・・」
「そんじゃ、行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
ナオコちゃんと二人っきりになった。小さくてかわいいけれど何処か頼もしさを感じる。ナオコちゃんは話題提供してくれそうだし昨日ほど気まずくはならないかな。
・・・気まずい。やっぱり二人で無言で歩くのは心に刺さってくる・・・。この感覚だけは幾ら頑張ってもなれない気がする。
「来るぞ!」
「ふぇっ!?」
いきなり叫ばないでよ・・・ってええ!?熊に似た大きなモンスター!?一昨日倒したゼリー状の子達なら小さいからまだ倒せたけれど、今目の前にいるそれはとても大きいし怖い・・・。足がすくむ。それでもナオコちゃんが果敢に戦っている。怯まずに。
そうだよ。ナオコちゃんが頑張っているのに何もできないのは嫌だ。私だって冒険者なんだから!
リボンが伸びて、熊をきつく縛ってから固くし、動きを封じる。
「ありがとな!」
良かった・・・これで私も役に立てた・・・って力を緩めちゃ駄目。リボンに意識をすべて向けていないと。
「もう大丈夫だぞー!」
「えっ!?・・・良かった・・・。」
「にしてもさっきのやつどうやったんだ?見たこと無い魔法だぜ?てかあれ魔法なのか・・・?あの、リボン伸ばすやつ!」
「んー・・・私にもよく分からないの。ミナミちゃんも見たことがないって言ってたし・・・」
「おいおい、自分の武器のこともよく分からないのか?見たところ、その武器の固有能力っぽいが・・・。」
「多分そうかも!ありがとう!」
「あのなぁ。自分の武器についてもっと向き合ってみろよ。見たことが無いんなら勝手に分類してしまえば良い。多分そうかも!じゃなくて確信が持てるものにしろよな。」
「うん・・・。」
このリボンか・・・。確かに、言われてみても言われてみなくても謎が多いし、自分でも制御しきれていないように感じる。でも向き合うって一体どうすれば良いんだろう。リボンと会話してみる・・・出来るわけがない。もっと冷静になってみれば・・・全く分からない。
ナオコちゃんにもそんな時期ってあったのかな。
そんな感じの事を考えているといつの間にか中学校に着いた。
「・・・意外と早く着いたな!次は家だな。休んでる暇はないぞ!」
「そうだね!」
ここから家までは結構近いので気まずい時間が少ない!やったー!いやいや勝手に気まずい時間って言っちゃ駄目でしょ。
「そっそういえばナオコちゃんって好きな食べ物とかあるの?」
「牛乳だ!あれ飲んでると背が伸びるらしいからな!」
「身長気にしてるの?今のままでも可愛いと思うけどなー。」
「やだよ!そのせいで騎士団に入れなかったんだぜ!」
「えっ!?騎士団って身長制限あるの!?」
「いや、書かれてなかった。でも、面接官が「いくら何でも小さすぎる」って・・・。騎士団に入るために剣の腕も磨いて勉強も頑張って、人助けも率先してやったのに・・・。」
「そんな、いくら何でも可哀想だよ!」
「同情なんていらねえ!・・・でもありがとう、やっぱりあいつ酷いよな!だからいつかでっかくなって見返してやるんだ!」
「頑張れー!」
「頑張るぞー!」
ナオコちゃんが強いのは今まで騎士団に入ることを目指して頑張ってきたからなんだ・・・。もし私がこんなことになってしまったら多分一生泣き崩れちゃうと思う。でもナオコちゃんは元気に振舞っている。それだけ強いんだ、いや。強くなってきたんだ。
家に着いた。
「ここか?何か小さいぞ?」
「実はそうなの・・・。」
鍵を開けた。
「じゃあ私は待ってるからな!長引いてもゆるしてやる!」
「ありがとう!」
入ると、アルバムを読み漁っているお父さんがいた。
「ただいま!ごめんなさい、暫く帰れなくて・・・」
「ホナミ!ホナミなのか!?幻覚じゃないよな!?」
「幻覚じゃないよ!」
お父さんに抱き着いた。久しぶりの温もり。とても暖かくて心地いい。
「おかえり愛しのわが娘!生きててよかった・・・!」
しばらく抱き合って泣いた。このままじゃ親離れ、子離れ共に難しいかも・・・!
「実はね、また暫く家を離れないといけないんだ。」
「どうしてだい?」
「かくかくしかじかで・・・」
「よく分かった。ホナミがそんな優しい子に育ってくれて父さんは嬉しいよ・・・。何か手伝えることがあったら何でもする。」
「ううん。大丈夫!行ってきます!」
「ああ。いってらっしゃい。」