借金の存在
自己紹介も済んだことだし、まずはこの体中に巻かれた包帯を何とかしないと・・・けれども、不思議と何処も痛く感じない。ミナミさんが回復してくれたのかな・・・早速お礼を言おう。
「ミナミさん!私の怪我を治してくれてありがとうございます!」
「どういたしまして。けれども怪我を治したのは私じゃなくて薬ですよ。お礼なら薬に言ってください。」
「その時お前魔力切れであたふたしてたもんなー!」
「そっそれは言わないで・・・」
ミナミさんが魔力切れであたふたかぁ・・・正直見てみたいかも。冷静で何事にも動じなさそうなミナミさんだからこそ尚更見てみたい。そう思うと少し顔が緩んでくる。そういえばここって宿屋なんだよね。って宿屋!?宿屋は大体の冒険者にとって実家に次ぐ第二の拠点なのでかなり需要がある。だから一泊するだけでも結構かかるはずだよね。少なくとも私のお小遣いでは足りないかな・・・ということは私、初対面の人に借金してるの!?私、非道だ・・・。
「あの、宿代あとで返します!」
「返さなくていいのよ。これは私たちが自らやったこと。ホナミちゃんが頼んだことじゃないわ。」
「でもそれでは私の気が済まないんです!」
「そう。意外と頑固なのね。良いわよ!でも、あなたお金ある?」
「あれ・・・?」
ポケットを漁っても出てくるのは何もなかった。そういえば今日、お金持ってきていないんだった・・・
「うふふ。だったら私達と組まない?」
「勝手に話を進めんな!でもホナミなら大歓迎だぜ?」
「私も許可しますよ。」
「・・・え?今なんて?」
「だから、私たちとパーティーを組むの!」
「ええっ!?」
そんな・・・冒険者になんて本当はなりたくないのに・・・でもお金は返さなきゃ。
「お金、返したいんでしょ?」
「はい・・・」
「だったらオーケーね!でも今日は夜遅いから危ないわ。また明日ね!」
「お前、意外と強引な所あるんだな・・・怖え」
「何か言ったかしら?」
「何でもない・・・」
という訳で、いきなりパーティーを組むことになってしまった。断れなかったけれど、よくよく考えなくても私、戦闘全くできないんだった!でもせめて荷物持ちぐらいはできるかな・・・よし、明日断ろう。そして別の方法でお金を稼いで返そう!
そういえばいくら集めればいいのか聞いてなかった・・・もうお風呂は全員入り終わって、皆寝てるから明日聞こうっと。そしてもう一つ。家に帰りたい・・・お父さん心配していないかな。魔物にやられていないかな・・・でも帰ろうにもここがどこだかはよく分からないし、あの霧のせいでどうやって転んだところに来たかすらも全く分からない。不安と恐怖に押しつぶされて眠れないと思っていたけれど、皆の寝息が聞こえたおかげで意外と早く眠りにつくことが出来た。