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0.弾丸の雨の中での後悔

―後方から謎の物体()の雨が降り注ぐ。

なんとかして脱出を試みるが出口はあまりにも遠く、後方からの追撃は収まる気配がない。

体はもはやどこが撃ち抜かれたのかがわからないほど全身が痛い。あまりの激痛で思考すら焼き切れる。


―出口へ向かい走る、走る、走る。その間にも後方からは止むことのない嵐のように何か(弾丸)が降り注ぎ続けている。

鼓膜が破れるほどの爆音(銃撃音)が鳴り響いているというのに、後ろからはその主が発するけたたましい笑い声が聞こえる。あいつはこの惨状を、我々が苦しむのを楽しんでいるのだ。

どうして、こんなことになってしまったのだろう。数刻前の自分に対して怒りの気持ちがわいてくる。もっと慎重に行動すべきであった、と。

しかしだからと言って誰がちょっとおやつを食べに行くまでの間に矢の雨が降り注ぐと想定して行動するというのであろうか。いや、そんなやつはいないだろう。つまりこの状況もそういうものなのだという諦念も湧いてくる。


―必死になって走り続ける。ここまで必死に走ったのはいつ以来であろうか。最早思い出すことも困難なほどの昔であるということだけはわかる。特に、死の危険から逃れるために必死に走ったという記憶は全くと言っていいほど無い。

確かに私は最初弱い存在であったが、幸運に恵まれある程度の強さにはすぐにたどり着くことができた。それに頭を使って活動していたから、ここまで追い込まれたことは今までに一度足りとて存在しなかった。


―どれだけ走ったのであろうか。最初は随分遠くに見えていた門も、いまではもうかなり近くに見える。あと少しだ、あと少し走り切れば生還できる。後方からは変わらず何か(弾丸)が飛んできて、身体をかすめていく。数刻前まで聞いたこともなかった何か(弾丸)が掠める音が、今ではすっかり聞き慣れた音になってしまった。


―走る、走る、走る。最早息は上がり切って、全身の痛みで身体はうまく動かない。しかし、ようやく、ようやく今まで永劫にも思えていた距離を走破し門へとたどり着いた。安堵からか、全身の緊張が抜けてへたり込みそうになるのを、何とか押さえつける。まだだ、まだ倒れてはいけない。この門を閉門しなくては。そうしてこそ、この脅威から完全に逃れることができるのだ。最後の力を振り絞り門を閉じようとする。


ん?背後から何かが飛んできて光ったが、これはいったい―


―――彼の意識はここで途切れてしまった。


深紅の荒れ地に、爆発の衝撃波という大輪の花が咲き誇った。

そしてその開花の瞬間、すでに彼の意識は光の中に飲み込まれてしまっていた。


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