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第31話 不気味なる仮面、阻まれる力

お待たせいたしました。

最近忙しくてなかなか執筆することが出来ず……!

次の話は出来るだけ早くお届けできるように頑張ります。

 なぜか揃いも揃って王族の方々が姫様のもとに集結していた。

 俺と姫様は揃ってため息をつくばかりである(ちなみに、マリアは偵察のためすぐにいなくなった)。


「えーっと。この辺りには爆発物があるので、貴方たちは出来れば最も遠ざかって頂きたい方々なのですが」


「分かっている。だが、敵の狙いがこの『楽園島』……種族間の和平を壊すことにあるのなら、むしろオレたちが出張ることも必要だろう」


「王族同士が手を取り合い卑劣な輩の企みを阻止することで、種族間の和平をアピールすることが出来ますわ。それは敵の目論見を潰すことにも繋がりますし、何より……獣人族と妖精族の、真の和解に近づくための足掛かりになるかもしれませんもの」


 もっともらしいことをペラペラと並べ立てるローラ様。

 対して姫様は、


「で、本音は?」


「あわよくばレイラ様のサインを貰えるかもしれませんもの! このチャンスを逃すことなど出来ませんわ!」


 このお姫様、己の欲望に忠実過ぎる。単純にして純粋、かつ真っすぐなローラ様であるが、それが趣味方面に突き進むとこうなるのか。


「まったく……王族が聞いてあきれるわ」


 ため息をつく姫様に、俺はぐっと堪える。危ない。もう少しで「それを姫様が言うんですか」とか口走ってしまうところだった。


「あらリオン。言いたいことがあるなら言ってもいいのよ?」


「ははははは。遠慮しておきます」


 しかし、デレク様やローラ様の言い分はもっともだ。

 先日『四葉の塔』で起きた事件や、仕組まれたものだったとはいえ妖精族と獣人族の生徒同士の争いは対外的には見栄えが悪いことこの上ない。リカバリーとなる『何か』が必要だと、ここ最近は姫様たち王族の方々同士で話し合っていた。

 何者かが仕掛けてきたこの爆弾事件を逆に利用してやろうという魂胆なのだろう。

 逞しいというか、ただでは起きないというか……いや、これぐらいの気概がないと王族ってやつは務まらないのかもしれない。


「……仕方がないわね。そういうの、嫌いじゃないし」


 丁度そのタイミングで、姫様の傍にマリアが降り立った。


「アリシア様。偵察が完了いたしました」


「ありがと。それで、どうだった?」


「はい。アリシア様の仰る通り……ここから二ブロック先にある建物の屋上で、『駒』と思われる不審な人物を発見しました。手元に遠隔操作タイプの術式を組み込んだマジックアイテムを所持していた為、間違いないかと」


「やっぱり貴方に頼んで正解だったわね」


 マリアは全身に様々な武器を隠し持っている。一つ一つが魔法を組み込んだ特殊な武具を扱う彼女は、マジックアイテムに関する知識も有している。まさに今回のような事件にうってつけの人材だ。


「ご褒美はイイ感じに踏んで頂けると嬉しいです」


「お前はそれさえなけりゃなぁ……」


 なぜ俺の同僚はこんなにもアレなのか。もうちょっとクールな隠密メイドをやることは出来ないのか。


「ふむ。となると、あとはどうやって捕らえるかですわね」


「……アリシア・アークライト。君は既に、策を練っているのだろう?」


「当然よ」


 姫様はいつものように、優雅に堂々とした笑みを浮かべた。


「今日は楽しいお祭りだもの。無粋なお客様には、お帰り頂きましょう」


 ☆


 呼吸を整え、気配を殺し、対象を観察する。

 マリアがつきとめた場所。ある建物の屋上に、男がいた。

 ブツブツと何かを呟いているようだが距離のせいもあってよく聞こえない。仮面を顔につけているため、その表情も読み取れない。

 俺がしくじればレイラ姉貴のステージが台無しになってしまう。それだけは何としても避けたい。成功は絶対条件。


『リオン。準備はいい?』


 通信用魔道具ごしに姫様の声が聞こえてきた。

 不思議だな。顔も見えなくて、触れることも出来なくて。寂しさすら感じているのに……安心する。魔界でもそうだったけど、姫様の声を少しでも聞くだけで落ち着いて任務に挑むことが出来たんだ。


「…………はい!」


『いい返事ね。好きよ。リオンのそういうところ』


「えっ!? き、恐縮です」


『ふふっ。そうやって慌てふためくところも、可愛くて好きよ』


 からかわれている。いや、姫様としてはきっと本心なのだろうが。


「ひ、姫様? ど、どういうおつもりで?」


『だって、リオンの声しか聞こえないんだもの。寂しいじゃない。ホントはこの目で見て、この手で触ってあげたいのに』


 …………まったく同じことを考えていたとは。嬉しいような恥ずかしいような。


『リオンは、寂しくないの?』


「さ、寂しい……です」


『そう。それなら、早く片付けてわたしに会いに来てね』


「が、頑張ります!」


 何だかんだと面喰ってしまったが、気合は入った。


『…………お忘れのようでしたら教えて差し上げますが、全部丸聞こえですわよ?』


『…………その、すまんな。盗み聞きするつもりではなかったのだが……』


 とても気まずそうなローラ様とデレク様の声に、俺は一気に顔が熱くなった。そうだ。この通信魔法は全員とリンクしていることを完全に忘れていた。


『あら。忘れてなんかないわ。聞かせてあげたのよ』


「なぜですか姫様⁉」


『わたしのリオンがカワイイってこと、教えてあげたくて』


 思わずがくっと肩を落としてしまった。失敗できない任務を前に一気に力が抜ける。


『…………マリアさん。この二人はいつもこうなのか?』


『ええ。いつもこうです』


『心の底から同情いたしますわ。これを目の前で延々と見せられているとは』


「あのぉ! そろそろ作戦開始しちゃってもいいでしょうか!?」


 ダメだ。これ以上この通信を続けていると俺の身がもたない。


『いきなさい、リオン』


 主からのオーケーがおりた。目の前の壁を一気に駆け上がり、最後に跳躍して敵の頭上をとる。相手は三十代半ばの男。手には起爆用と思われる魔道具を持っている。一番気になったのはそれよりも、顔だ。顔に仮面をつけている。

 ただの仮面ではなさそうだが……何はともあれ、ここは作戦通り先手必勝だ。


「――――『支配』する!」


 権能を発動。対象の魔法、あのマジックアイテムを支配下におく。すぐさま術式を停止させ、爆弾としての効力を無力化する。


「――――!?」


 仮面をつけた男は手元のマジックアイテムが停止したことに驚いているのか、その後現れた俺の存在に気づくのが数テンポ遅れている。

 脚に焔を纏い、空中で身体を捻る。その勢いのまま、有無を言わさず仮面の男の腕に蹴りを叩き込んだ。


「グッ……!?」


 男の手元から魔道具は吹き飛び、砕け散る。

 よし、まず最低限の目的は果たした。あとはこの仮面の男を捕まえればいいだけだ。


 敵が振りかぶった手がチカチカと赤く輝いた。咄嗟に前に進もうとした足を止め、後ろに下がる。直後、目の前の景色が爆ぜた。否、敵の掌から爆発が迸った。


「爆発魔法……! だったらそれも!」


 権能を発動させ支配する。そのまま焔を纏った拳を突き出し、爆発の消失した掌ごと焼き尽くし、殴り飛ばす。骨を砕いたような感触。歪な形に曲がった仮面の男の腕が体勢と共に大きく後ろに後退した。あと一押し。


「グ……るゥあァッ!」


「ッ!?」


 獣のような雄叫びと共に男は飛び掛かってきた。同時に魔力が一気に膨れ上がる。

 獣のような、じゃない。その姿はまさに獣そのものだ。骨を砕かれようがお構いなしに突き進んでくる。痛みを感じないようになっているのか?


(怪しいのは……あの仮面!)


 隙だらけの腕を掻い潜り、焔の拳を仮面に叩きつける。だが、拳が仮面を砕くことはなかった。僅かな亀裂が入ったのみで、破壊するには至らない。


(固い……! やっぱりただの仮面じゃない……!)


 間違いなく魔法に関連する何かだ。しかし、裏を返せば魔法であるならば俺の権能で支配することが出来る。


(――――『支配』する!)


 敵の魔道具や爆発魔法を無力化したように、権能を発動させて支配を試みる。


「…………ッ⁉」


 仮面に変化が訪れない。それどころか、俺の『権能』が弾かれたかのような感覚。


「『支配』、出来ない……⁉」


 俺の『権能』による『支配』が発動しないのは、大きく分けて二つのパターンが考えられる。

 一つは、敵の魔法が俺の『権能』の支配力を上回っていた場合。

 そしてもう一つは――――それが、『権能』による力である場合だ。


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