物語を綴る君へ
やぁ、こんにちは。それとも”君たちの世界”ではこんばんは、かな?
今日はどうしても君に伝えたい事があって会いに来たんだ。
きっと君と僕が出会うのは初めてじゃないと思う。
けれど君は覚えていないかもしれないね。
君が眠りへと落ちる瞬間、もしくは夢から醒める時。
不意に見る世界、それが”僕たちの世界”。
目が覚めればすぐに忘れてしまう泡沫の世界。
けれど君の見た世界はそこにあるんだ。
手のひらで掬い上げた水が、指の隙間から逃げるような
簡単に抜け落ちてしまう記憶の中に。
だから君には、その世界を描いて欲しいと願っている。
記憶と共に消える前に。文字として。絵として。お話として。
そして今の僕のように、誰かにその世界を教えてあげて欲しい。
そうすればその世界は”君たちの世界”に存在できるから。
世界の固定とも呼べる創作。それは簡単にできる事じゃない。
けれど誰しもがその能力を持っている。
君が恥ずかしがらず筆を取ってくれると嬉しいな。
いくつも生まれ、消えゆく世界。
君の見た世界がその姿を現しますように。
そして”僕たちの世界”がひとつでも多く”君たちの世界”に現れますように。