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壁は意外と高かった

「こちら砺波、部屋からの脱出に成功した。」


 ……いや違うんだ。流石に通信機の玩具を持ってきてそんな遊びはしていない。そこだけは自分の名誉のために言わせてもらう。ただ少ーしばかりハイテンションなだけなのだ。

 なぜそんな事態になってしまったのか。そう! それは俺が適当に足場をつくり適当に部屋から出た時の事だ。部屋から出るの自体は比較的楽だったのだ。ただ、さぁ行こう! と決めた時点であることに気づいた。

 震災時にブレーカーを入れる時にはコンセントを全て抜いてから行わなくてはいけない。万が一断線していたらそこから漏電し火事に繋がるからだ。どこかもわからない森の中で雨風がしのげる場所をそんなポカで失いたくない。

 と言うわけで俺は、コンセントを抜くためだけに一度脱出した部屋に再び戻り、抜くときに邪魔だったのもあり行くときは無視していた倒れた棚を戻したり本を積み上げたりしていた。

 終わった後は体力がゴソッと奪われはしたものの、それが一周回って楽しくなって深夜明けのテンションみたいになっただけなのだ。俺は悪くない。

 さて、コンセント抜きながら他の部屋の状態も確認しますか。




 結論から言おう。


「俺、多分ここで死ぬわ。」


 一階のリビングにて俺は机に突っ伏しながら、虚ろな視線でただただ空間を見ていた。さっきまでのハイテンション状態はすっかり消え、ただただ気力だけが減っただけになった。

 もしステータス画面があったらHPもMPもスタミナゲージも多分1だ。どこぞの回る温泉に入っても多分回復しないだろう。まさか、まさかだ。


「電気つかなかった……。」


 そう、無事風呂場に辿り着くついた俺はブレーカーを上げることに成功した。しかし電気はつかない。何度も上げ下げしているうちにある事に思い至った。

 そうここは謎の森の中。最初に窓から見た景色の中にも、道中に雨戸を開け放ったときに確認した時も、視界の中には電柱も電線もなかった。

 それなのになんで俺はブレーカーを上げるのに必死になってたんだ! 通ってない電気がつくわけないじゃん! ちなみにガスも水道も当然のごとく使用不可でしたよ。当たり前ですね!

 そして電気がつかないという事は冷蔵庫が使えないと言う事で肉やら魚やら野菜やらは殆どが近々全滅するのが目に見えている。

 仮にしなくても料理のしようがないけど。そもそもレンジもコンロも使えないんだから。

 そんなこんなが目に見えた事が俺を絶望に叩き落としたのだった。ここが俺のゴールか。もう掃除しようという気すらわかない。そんなことをして水を無駄に消費したくないし。

 唯一の良かったことと言えばバイトに行く必要はなさそうって所か。いや、この状態ならむしろ行ったほうがまだ助かったかも知れない。どれだけ強く念じても1/3のSOSも伝わらないこの状態から抜けられるんだったらバイト8連勤でも……ごめん嘘。

 カラ元気がくらい出せるまで動かない事に決め、俺は考えるのをやめた。




 ただただ机に突っ伏して時間は過ぎる。時計は止まっているからどれくらいの時間が経ったかはわからないが、その間聞こえるのは鳥の鳴き声位な物であとは本当に静かな物だった。

 こんな状態じゃなければ森の中で優雅に休養取るのも悪くないのになぁ。それに家族どころか周りに人がいないから、いくら大声を出しても構わないという環境が素敵だ。何をしても誰にも何にも言われない。これが真の自由というものかもしれない。

 しかし残念ながら暇な時間は人間を負に引きずり込んでいく。頭の中はこれからの生活の事がグルグルしていた。

 まずは水の確保か、それとも近くに人が住んでいるか探すべきか。食料は? 山菜や果実の知識なんて俺には無い。キノコは最初から問題外だ。というかここどこ? 日本?それとも他の国?

 もしかして俺が移動したんじゃなくて周りが更地になったとか? いやそれならここだけ無事な訳ないし……


「あ、ああああーーーーーーーーっ!?」


 外から叫び声が聞こえたのはそんな時だった。誰か叫んでるなぁ鬱陶しい。こんな静かな所で何を騒いで……!? 人の声?

 さっきまで失くなってたHPが急速に回復する。聞き間違いじゃなければ確かに聞こえた。叫び声だ。人だ! 人がいる! 俺は嬉しさの余り玄関へと駆け出した。

 起き抜けで髪や服装は整ってないが関係ない。助かった! 俺はただがむしゃらに声の主に会うため外に駆け出していった。

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