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一嵐去ってまた一乱

「ん…まぶし……。」


 カーテンの隙間から漏れた光で俺は目を覚ました。目覚めた当初は頭をぶつけた影響か少しぼーっとしていたが、とりあえず嵐は過ぎたこと、そして自分の部屋が目も当てられないくらい酷い状態なのはわかった。

 床に平積みしていた漫画は崩れ、棚に飾っていた武器やロボットはいつの間にか主従が逆転した状態でその上に広がっていた。

 ちなみにロボットといっても人が乗るタイプのロボのフィギュアではなく、亜人ファイターシリーズにでてくる小型のサポートメカの類のものである。幸いな事にガラスが割れるところまではなかったが片付けだけでかなりの時間がかかりそうだ。

 自分の部屋だけでこれなのだ、家全体がこんな感じなのだろう。それを考えるだけで気が滅入ってくる。


「はぁ…。」


 俺は誰に聞かせるわけでもなく大きく溜息をついた。だがため息をついたところで仕方ない。それに暗いせいで全体が把握できていない。まずは全体の把握が必要だ。……少なくとも手の届く範囲だけでも。

 それでも体は起き上がるのを拒むがなんとか奮い立たせカーテンを開く。よしよし嫌な仕事を引き受けてくれた体くんありがとう。


「えっ……?」


 森が広がっている、目の前に。その光景が信じられないのか体は再びカーテン閉めてしまった。よしよし確認しよう。俺の名前は砺波俊樹。25歳の男性で職業はフリーター。あー…自分で言って何か無性に悲しくなってきたけどそこはスルーしよう。

 日本の神沢町に住むれっきとした日本人で、我が父がローンをはたいて購入したスイートホームは閑静な住宅街にあったはずだ。緑が全く無いわけじゃないが坂道の方が多い、微妙に不便な土地ではある。それでも最寄り駅までは20分かからないし急行止まるしなかなか便利で……違う! 話が脱線した。

 つまりだ、部屋のカーテンは2つあるがベッドに近い西側のカーテンを開けるとそこにはうちの駐車場と道路、そして挨拶をしたこともないお向かいさんの家があるはずで、決して整備もされていないような土と鬱蒼とした広葉樹が広がってる訳ではないのである。近くにコンビニが無いという点だけは前と変わらないけど。


「なるほど! 夢か!」


 手を打って現実逃避を始める。いや現実逃避くらいさせてください。無理です。脳が追いつきません。でも暗いので今度はゆっくりとカーテンを開ける。目の前にはやっぱり森が広がっていた。

 そんな時に限ってなぜか昔みたテレビ番組の消失マジックを思い出していた。ハーフのマジシャンが生放送でビルを1つ消すという内容で、マジシャンがビルを隠すようにカメラの前に布を張った後その布を取ると対象のビルだけがすっかり消えるというものだ。あれには驚かされたなぁ。

 そんな事を考えてる間に戻らないかなぁと淡い期待をしていたが、現実は非常に非情である。だがいつまでもこうする訳には行かない。

 なぜなら出した有給は1日だけ。つまり午後には出勤しなくてはならないのだ。いやぁ人間混乱しすぎるといつも通りの動きをするとは聞いたことあるがまさか自分の身で体験するとは。


「そういえば……今何時だ?」


 ベッドに置いた携帯に手をのばして確認しようとするが、画面が開かない。


「あ、あれ?」


 ホームボタンを押しても電源ボタンを長押ししてもうんともすんとも言わない。嵐の前は十分な量の電池があったはずなんだけどなぁ。しぶしぶ充電器を接続するがこれまた反応しない。

 もしやと思って部屋の明かりをリモコンで操作したが駄目だった。もしやブレーカーがイカれたのだろうか。ブレーカーだとしたら大問題だ。

 何故って? ココは2階で、ブレーカーは一階の風呂場に付いてるからだ。つまり下まで行かないと駄目な訳でその為には最低限足の踏み場が必要な訳で。


「もう惣菜手伝ってる時につまみ食いするのやめよう。」


 多分、マリア様が見てるのはそんなところではないだろうけどちょっとした懺悔とともに、そして本当に簡単に足場を確保しながら部屋を出ていくのであった。

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