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トト散歩

 広場から獣道を通り、突き当たった黄金の煉瓦道を西に向かって歩くこと数刻でその村についた。さっきからとても愉快なBGMを聞かせてくれていた少年も流石に村についたらいつもの調子に戻ったようだ。


「ここがリュウの村、この地方で一番大きな村だよ。」


 さ、行こうと促され俺も村に足を踏み入れた。村に入って右手側には広い牧場が広がっており、牛や豚がのどかに草を食べたり日向ぼっこしたり自由気ままな生活を送っていた。

 よかった家畜自体は俺の知ってるのと何ら変わらない。それどころかストレスフリーな環境で育ってるぶんこっちのほうが美味しいんじゃないだろうか? 残念ながら今日の目当ては市場なので牧場を後にする。

 それでも隅に売っていたソフトクリームによく似た食べ物がどうしても気になって買うことを提案したがお預けをくらった。




 牧場の反対側、つまり村の左部分全体が市場になっており、手前には露天がズラリと立ち並んでいた。それぞれの店のラインナップは実に偏っていて多くて3〜4種類。物が1種類しかない店も多々見受けられた。

 不思議な売り方だと思ったがどうやら露天は農家が個人個人で経営しており、自分の農場で作ったものだけを販売しているらしい。

 多々売らなければ生き残れないのが小売の宿命だが、ゴボウだけを売っている農家とか生活が成り立つんだろうか?

 そんな露天スペースを通り過ぎた所にパラパラと家が建っている。服屋や道具屋など食料自給率を除いて多種多様な店がある。まずは換金のために宝石店へ行くとの事なので黙ってついていく。


「……?」


 背後に視線を感じ振り向く。だが目に映るのは村人たちがぺちゃくちゃとあちこちで井戸端会議をしてる光景だけ。

 ……気のせいか。視線を元に戻せば連れは俺をさっさと先に進んでいたので慌てて追いかける羽目になった。少しはこっち見ろよ!




「ありがとうございましたー!」


 銀貨五枚。これが今回の報酬だった。ロイ曰く思ってたよりは高く売れたらしい。

 ちなみにこれでリンゴが50個買える程度である。なかなか世知辛い。


「じゃ、僕は買い物に行ってくるね。」


 受け取った銀貨を全て俺に渡しロイが踵を返す。


「ちょっと待った、買い物行くって俺にお金全部渡して大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。ボクはボクでちゃんと手持ちがあるから。それで好きな物買いなよ」


 本来この会話って立場が逆だよなぁ。って荷物はどうするんだ?何を買うかは知らないがせめてお金を恵んでもらった以上荷物くらい持たねば。

 と思ったがやんわりと拒否され、今が10時だから一時間後に宝石店前で集合ね、と言い残すとスタスタと歩き去ってしまった。

 何て自由な奴な奴だ。……あれ? 俺は時計なんて持ってないんだけど、どうやって時間を確認しよう。周りを見渡したが時計がおいてある様子は無い。

 仕方ない道具屋にでも行ってみるか。



 まさか時計一つ買うだけで貰った銀貨すべてを使うとは思わなかった。購入したのはこの店で一番安い懐中時計で、まさかの手巻き式である。その蓋にはシンプルに二重丸だけがデザインされているだけの厨二心くすぐられる物だったが流石に高い。

 使い方を習って早速使ってみると現在時刻は現在10時半。……約束の時間まであと30分もあることだし少し店内でも見て回るか。購入したのだからまさか冷やかし扱いはされまい。

 と言う訳でふらふらと店内を見て回る。食器類にテーブルクロス、ちょっとした小物入れから農具、雑貨ならなんでもおまかせあれってところか。

 それにしても不思議だ。書籍のコーナーから一冊取り出しパラパラとめくる。言葉が通じるのはまだしもまさか字まで読めるなんて。

 日本語で書いてある訳ではないのに意味はしっかり頭に入ってくる。ちなみに今見てるのはレシピ本。中身はカツレツだのシチューだの見知った料理ばかりでここが異世界であることを忘れそうになる。

 本を元に戻し、壁にをむくと目の前に大きな絵が貼ってあった。よく見ればただの絵じゃない。右上に方位を示す矢印がついていることからどうやらこれは地図らしい。

 その地図には真ん中に大雑把に太い線で円が引かれ、その真ん中にもう一つ小さな円が細い線で描かれている。この小さな円の中が首都オウブ。この国の中枢らしい。

 そこから☓を引くように線が伸び4つの地方に区分されている。北側が水に囲まれた土地キクペ地方。西側が工業地帯シャシイ地方。広大な砂漠が広がるナナミ地方。そして俺がいるのが自然に囲まれた東側、ヒウン地方だ。

 リュウの村はその中でもかなり外側にあるのだが、それでも首都オウブまで2、3日歩けばついてしまうかなり小さな国のようだ。

 ……ん? 何か奇妙だ。この地図何かが足りない気がする。ジーッと見続けて違和感の正体に思い当たる。港だ、港が国の外周の何処にも描かれていない。

 キクペの湖には船着き場が描かれている以上船があるのは間違いない。魔法なんてあれば長距離用の船だってちょちょいのジョイで作れるだろうに。

 ……うん聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥だ! というわけで教えて下さい店主さん!


「はぁ?何を言ってるんだ。ここ以外に国なんてないだろうが。」

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