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始まり

無機質な床の上で目を覚ました。

名前を呼ばれている、声が聞こえる。でも近くじゃない少し離れているような気がする。


「濃緑っ濃緑っ大丈夫かしっかりしろ、おいっ。」


大きな声で友人が私を呼んでいる。凄く焦っている声で一体何があったのだろうと疑問を抱き、目を開いて、体をおきあげる。

白色がダイレクトに目に攻撃してくる。嘘みたいにチカチカする。

少しして目が馴れてくると自分が雪が積もった道路の上で寝ていたのがわかった。


(どうして道路上なんかで寝てるの…私)


ついにストレスでぶっ倒れたかと思いながら体を起こした、頭が痛いし寒さを感じない。雪が降る屋外で寝ているのに、これもストレスからだろうか。

ゆっくりと体を起こし友人の方へと足を動かす、途中転びかけながら十メートル先にいた友人のところへ向かった。


ふと足を止め自分が居たところを見た、私は公園の前の道路に倒れてたらしい、住宅が多く立ち並ぶ住宅街の広い道路、白い雪には色が付いていて、何かを引きずった後があり、赤黒い血のような何かが線になって十メートル先まで続いていた、あの量からしてもう死んでしまっているだろう。

緑色の車を思い出した。フラッシュバックと言われるものだろうか、こちらに向かってくる孟スピードの車…


(そうだ、私はあの時緑の車に引かれたんだ。)


妙に納得した、ならこの血の線は私の血で、寒くないのも私は死んでるからで…一人でほぼ全部を理解できたことに喜びを感じた、この前知り合いに頼りになるよねと、誉められた以来だった。

なら…私の体は何処に…周りに何か手懸かりがないかと辺りを見渡す、速く友人のところへ行かなきゃいけないのはわかっているが確認せずにはいられなかった。


(鞄が落ちてる)


なにか無いかとチャックを開けようとするが開かなかった、というか触れない。

やっぱりお決まりのパターンだなぁと諦めポケットを探る。

硬いような薄い長方形の箱が入っている、もしやと思い取り出してみる、するとスマートフォンが入っていた。

多分昨日入れたままにしていたのだろう、電源は入った。


【1日】


いつの間にか人が集まっている

近所の人たちだろうか、写真を撮る者、気持ち悪いと顔を背ける者、面白がってじろじろ見ている者、泣いている人…


(制服の子もいるなぁ…)


先生達が走って行く、学年の先生が泣きながら名前を呼ぶ、友人の担任は友人に

「青璃…大丈夫か、怪我ない?」

と心配そうに聞いていたが青璃と呼ばれた友人(通称青ちゃん)は大丈夫です、と一言行って私の脱け殻をじっと見つめている。


(頭血が出てるな…大丈夫かな。)


次々とクラスの人、何回か遊んだ人が出てきた、しかし皆私をすり抜け私の脱け殻へと駆け寄る。

次々とその酷さに顔をしかめて私を見る


「そこまで顔をしかめるなら来なきゃ良いのにな」

「あぁ、」


聞き覚えのある声がした、声の主の方を向いた。

五・六メートル先、一番後ろに青ちゃんと四人で良く遊びに行った二人の友人が立っていて、脱け殻に視線を向けていた。


ようやく自分のおかれた状況がわかった、

死んだのだ私は誰にも認識できない存在になってしまった。

目の前が真っ暗になった気がした。

気づいたら一心不乱に走りだし自分の脱け殻の前で叫んでいた


「ねぇっ皆、私はここにいるよ、先生、青ちゃん………緋澄、桜黄……」


名前を呼ばれた三人が目を見開き口を開けている。


「あっああ………濃緑っ……………なっなんで…なんで…居るの……」

「濃緑が二人って…おいおい、ドッキリか何かかよ。」

「…………………………」


三人は口々に言葉を漏らし、私を認識し理解していた、

恐怖よりも驚きが勝っているのだろう、青ちゃんの涙は止まっていた。


もう人は少なくなっていた、それでもその声は私と三人にしか届いてないだろう、周りの人は悲しそうに私の脱け殻を見つめ涙を流している。

奥に兄がいた、兄は涙を流さずただだずっと立ち止まっていた、兄には認識出来ないのだろうか、三人と違い黙ってじっと脱け殻を見つめていた。

三人はまだ私を見ている…どんどん恥ずかしくなってくる。


「いや、ごめんわたしが悪かった、そんな見つめないで欲しい。」


顔が赤くなるのがわかった。



夜、家族は実家に行ってしまったので家は暗かった。

不思議と心は落ち着いていてスマホを起動しWi-Fiが繋がらないか奮闘していた

どうやっても繋がらない。


「せめて何か出来るアプリがあれば…」


にゃぁと鳴き扉からなにかが入ってきた、猫なんてうちでは飼ってない。窓から入ってきたのだろうか、黄色の目が爛々と月光に照らされこちらをじっと見つめている。

ゆっくりと猫の全体が照らされ見えるようになった、その猫に見覚えがある、マメだ、私が小学生の頃死んでしまった先代の猫。ついスマホを手から落とす。

ガタンッとフローリングに直撃、危うくマメに当たるところだった。


『全く…危ないなぁ。ちゃんと持っててよね』


マメが喋る、幼い少女、少年どちらとも区別のつかない少し癖のある喋り方は母親の実家の方言に似ていた。


「マメっ…」


『久しぶりねぇ、濃緑、元気』


そこまでバリバリ方言では無いようだ明らかに祖母の影響だろう。私もそうだから。

ニヤッと笑いながら私はマメに聞く。


「マメは成仏してないの?」


してやったとかじゃないけど、なんとなくムカついたのでタブーだろう事を聞いてみる、しかし、マメは以外とあっさり答えてしまう。


『そんなわけ無いじゃない、貴女を迎えにきたのよ。』


マメは笑った。猫が笑うなんて生きていて一度も見たことがない。

その奇妙な雰囲気は私をゆっくりと包み込み意識を奪った。


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