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オタク宣言とこれまでの足跡

 俺はふとあの日を思い出した。

 それは俺がオタク文化を守る決意をしたオタクの乱がおこってちょうど三か月。

 その三か月の間にオタク達が千葉周辺に集まり、千葉を囲むようにぐるっと壁をつくり、壁で囲った千葉内部をオタク文化特別地域として、オタク文化を保護した。

 そしてその壁が政府軍に突破されないよう、等間隔に六つ、オタク文化防衛隊、そしてそのオタク文化防衛隊が駐在するオタク文化防衛基地が作られた。

 このようにオタクの信念によって急速にオタク防衛特別地域を守る制度が出来上がっていき、ついには武力を持ち始めた。

そしてオタク文化防衛隊は政府に向かって宣言を出した。

その内容は4つの原理から成り立っている。


一 私たちオタクはオタク文化を守り、尊重していく立場であり、人を好きに殺したいわけではないこと。


二 オタク文化特別地域は自治都市として、支配していくこと


三 オタク文化特別地域に危害が加えられないよう、武力をもったオタク文化防衛隊を発足させること


四 わたしたちオタクの目的は、自治をしたいことでなくオタク文化禁止政策をやめること


その他戦闘に対する細かいことがつけくわえられオタク宣言として正式に出されたとき、国民による世論から首相が変わった。

 新しく変わった首相はオタク達をすべて逮捕すると宣言した。

 その首相はオタクを、徹底的になくそうと尽くした。

 またオタク文化をとりしまるために政府は軍隊をつくった。

 オタクは国家を壊す敵だと様々なところで演説をし、国民も同調した。

 敵を作り、国民の敵意を向かわせることで支持を集める。とても優れた首相だろう。

 そして総理が変わっての一か月。秋葉の乱から四か月。ついに政府とオタク文化防衛隊との初めての抗争が始まった。

 

 

 夕日が差し込み、ビルによってつくられた物陰から必死に俺は引き金を引く。

 俺の足元には数えられないほどに空薬莢がちらばっていた。

 ここは秋葉原、元オタクの聖地であった場所。オタクや外国人がたむろし、日本の誇るべきオタク文化を外国に伝える、いわば日本の電波塔のような役割を担った、とても活気のあるすばらしい町だった。

 だが今、オタク文化禁止政策が施策された秋葉原は

 オタク文化防衛隊と政府軍との最戦線であり、弾丸が支配する場所となっていた。

 訓練とは違う。実践、本当の抗争で感じられる、空気。

 その空気に俺は飲まれそうになっていた。

 撃っても撃っても、何十時間たっても終わらない抗争。

 終わりの見えない戦い。それはだんだんと自分の意志を弱くしていった。

『こちらラノベ隊! 状況は!?』

 俺の所属しているラノベ隊隊長が、声を張り上げる。

『なに!? 前線が突破されそうだと!? つらいときはお前らの心にいる嫁を思い出せ!絶対突破されるな!』

 怒号のように返信し、隊長は回線を切った。

 わかっている。俺たちの大切なもののためには負けられない。それでも少しづつ押されてきているのが分かる。人数はこっちのほうが上のはずだ。それでも、明らかに練度が違う……!

 やけくそぎみで俺はチラと後ろを見る。

 そのとき、政府軍らしき二人が俺たちの背後をとる家に侵入したのが見えた。

「隊長! あの家に二人が侵入しました!」

「くそっ! 三人よこす。ここは突破させない。あいつらを倒してこい」

「はいッ」

 今でもきつい中に三人もよこしてくれた隊長に感謝する。無駄にできない。俺たちの後ろには仲間とラノベと愛するヒロインがついている!

 気をゆるませずに目的の部屋の前のドアにつく。

「俺から行きます」

 いくぞ、ふっと息をつく。三・二・一・ゴー!

 ドアをぶち破り、掃射。下を向くと、血を出して、倒れている二人の夫婦らしき人。

「まさか……」

 どうして民間人が殺されている。抗争の時に逃げたはずじゃないのか。そんな疑問が頭をよぎる。

 正面から右側にリビング。人の気配。

 リビングの手前のドアにしゃがみ、中をうかがう。

 そこには二人。

 一人は武装をした人物、少女に向けていたであろう小機関銃をこちらに向ける政府軍だろう。

 もう一人は少女だった。

 目に涙を浮かべながらも、必死に小さい手をあげ本棚を守るように立っている

 そしてその少女と目が合った。

「打って! そしてわたしの家族と大切なものを助けて!」

 俺はその声に反射されるように、身を出して、その政府軍を打った。

 この戦闘、通称、第一次オタク抗争は、オタク文化防衛隊完璧に攻め込むことができずに終わった。

 それでもオタク文化防衛地域を守れた

 


 第一次オタク抗争が起きたのが俺が中学三年生の時である。

 そして三年たった今現在俺は18歳となった。しかし三年たってもオタク文化防衛隊と政府軍の抗争は続いていた。

 しかし、オタク文化防衛隊の練度も上がったおかげで今は第一次オタク抗争のように苦戦を強いられることはなくなった。

 それでも完全に勝敗がついていない状態に俺はいらだちを感じ始めていた。

 だってそれはオタク文化をまた全国ですべてのひとが楽しんでほしいから。

 オタク文化特別地域だけじゃなく、日本中が、いや世界中が日本のオタク文化を楽しんでほしいと思っているから。 

 だから今すぐ総力戦をしかけ、俺の所属している秋葉原前オタク文化防衛隊と敵対する秋葉原総督府を奪い、政府にオタク文化禁止政策をやめるようにうったえるべきだということを心の中で常々思っていた。

 

 



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