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 夕食のあと、

「あ、そういえば花火は?」

 天水が思い出したように言った。買い出しの時は焼き肉の食材に気をとられていて、四人ともすっかり忘れていた。

「買い忘れてましたね」

 夏川が答えた。古泉は水上の母と共に夕食の片付けをしていて、他の三人はリビングのテーブルを囲んで座っている。ボーッとテレビを眺めて、ゆったりとした時間が流れていた。

「よし、買いに行こう」

 天水の提案に対して、水上は面倒くさそうに、

「いってらっしゃーい」

 と言って軽く手を振った。

「道がわからないんだけどー」

「海沿いの道まで出たらコンビニが見えるから」

「へいへい、わかりましたよ。行こう、夏川君」

「はーい」

 二人が出て行って急に静かになった。テレビの音と皿洗いの音しかしない。窓の外で鎖のジャラジャラという音が聞こえたのは、二人が家から出てきて柴犬が反応したからだろう。

「いまのは、二人に気を遣ったってこと?」

 水上の母が手を休めずに、横にいる古泉に聞いた。

「なかなか進展しないもので。あからさまなのはどうかと思いますが」

「しかし、自分の株を下げて人の株を上げるとは、……成長したなあ」

「もはや気遣いの達人ですよ」

「名人芸?」

「よっ、日本一ー」

 最後だけ古泉はリビングを振り返って言った。

「頼むから俺のいない所で話してくれ」

 しびれを切らした水上が台所に向けて言った。

「おや、許可が出たよ古泉さん。これが終わったら、我が水上家の秘蔵アルバムの鑑賞会をしようじゃないか」

「あることないこと色々拝聴させていただきます」

「やめてくださいお願いします」

 水上は低姿勢で懇願した。この二人はいつの間に仲良くなったのだろう。人見知りしそうな古泉にしては珍しいが、母の話しやすさのおかげだろうか。それとも相性がいいのか。どちらにせよ、この状況はやっかいだ。

「おやおや、お客さんに皿洗いをさせておいて自分はテレビ見てる人がなにか言ってるよ、古泉さん」

「何様のつもりでしょうね」

 仲良くなるのはいいことだが、結託されてはどうしようもない。これ以上なにか言ったら思い出話をされかねないと思い、言い返さなかった。

「ただいまー」

 玄関の扉が開く音がして、天水の声が聞こえた。コンビニまで行ってきたにしては早すぎる。財布でも忘れたのだろうか。

「早かったな」

 リビングに戻ってきた二人に水上が言った。二人の手に荷物はない。

「海の方まで行ったんですが、風が強くて、花火はムリだろうということになりました」

 夏川が説明した。

「本日の花火大会は中止します」

 と、天水が宣言した。いつから大会になったのだろう。

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