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 そこからは古泉の運転となった。山の反対側に下りて、東側の海岸まで出た。沿岸の県道を南下してゆく。運転については特に目立ったミスもなく、

「普通だな」

「普通だねー」

 と、水上と天水が評価した。後部座席組の負け惜しみともとれる発言に対して、夏川が、

「安心して乗れていますよ。さっきまでのがあれだったので」

 と、古泉をフォローした。後ろの二人は言い返さなかったが、次に運転する夏川は自身の発言でハードルをあげてしまったことに気付いていないのだろうか。

 やがて、灯台に着いた。海はすっかり夕日の色をうつしていた。白い灯台も、夕日を受けて色を変えていた。

 灯台に上った。螺旋状の階段は上に行くにつれて、幅が狭くなっていった。上りきったところで水上が頭をぶつけた。先に通って掠りもしなかった天水は、複雑な気分でそれを見ていた。

 半島の先端なので、海に囲まれているようだった。オレンジ色の水平線が視界の端から端まで伸びている。夕日はすでに半分ほど沈んでいた。

 遠くに見える船の影は動いていないようだった。

 下に目を向けると、海に面した岩の上に、本来はそこにないであろう物を見つけた。三人掛けくらいのベンチがある。

「よし、あそこに行こう」

 天水はそう言って、さっそく階段を下り始めた。

「もう少しここにいるわ」

「私も」

 水上と古泉がそう返事をした。

「天水さん、上がってくる人もいるかもしれないから、ゆっくり下りてください」

 夏川に言われて、天水は落ち着いて階段を下り始めた。灯台から出て、海の方に歩きながら天水は夏川に耳打ちをした。

「どうにかして二人を、あのロマンチックがあふれるベンチに座らせよう」

「わかりました。その代わりに」

「なに?」

「そのあとで、俺と二人で座ってください」

 夏川は天水をまっすぐ見て言った。

「……お安い御用だよ」

 ごまかすように、海の方に目を向けた。油断した、と天水は思った。

 話をそらすように打ち合わせをしながら歩いて、ベンチのある岩の前で二人を待った。夕日が沈みきった頃に二人が並んで歩いてきた。

「行くぞー」

「わっ」

 天水は古泉の手を引いて、岩を上った。あまり大きな岩ではないので、簡単に上れた。ベンチに座ると、目の前というよりすぐ下が海だった。暗くなり始めた海が彼女たちの足下から広がっている。

「波が高いと、しぶきが当たりそう」

「うん、近いね」

 後ろから水上が上ってきて、正面にまわった。

「夏川次期部長から、記念撮影をしてやれとのお達しだ」

「そんな命令みたいに言ってませんよー」

 岩の下から夏川が抗議の声をあげた。そんなことはお構いなしに、

「撮るぞ」

 と水上はカメラを構えた。シャッターを切ったあと、天水は水上の手をつかんで引っ張り、位置を入れ替えてベンチに座らせた。水上は何とかバランスをとって、尻餅をつくようにベンチに座った。

「はい、交代」

「危ねえな」

 古泉はキョトンとしてその様子を見ていた。

「ごめんごめん。はい、チーズ」

 天水がカメラを向けると、二人とも控えめにピースをした。天水としては二人の間に隙間があったことが残念だが、仕方がない。

 二人は立ち上がって、水上が岩から下りた。天水は手を差し出して、上ってくる夏川を引きあげた。

 つないだ手をそのままに、二人はベンチに座った。古泉は写真を撮って、早々に岩から下りた。

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