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 水上の母の車をかしてもらったが、誰が運転をするかで話し合いになった。普通免許は四人とも持っていて、車はATだ。

「道知ってるし、俺が運転でよくね?」

 水上がそう提案するも、三人は微妙な表情をしただけだった。三人の態度を見て怪訝そうにする水上に、夏川が、

「この前の水上さんの運転が、その、なんというかアレでしたから」

 と、遠慮がちに言った。

「うわ、夏川君言っちゃったよ」

「思ってても口にしなかったことを」

 天水と古泉は内緒話をするようなそぶりでありながら、しっかり聞こえるような声量で言った。

「そんなに酷かったか?」

「はい。慎重すぎて逆にハラハラするという感じでした」

「へえ。まあいい、そんなら誰が運転するんだ?」

 あっさりと引き下がった。水上は別に運転をしたいというわけではないようだ。

「ここは、私がやるしかないようだね」

 天水がなぜか得意げな顔で、親指を立てて自分をさしながら言った。その様子を見て不安を覚えたのか、水上が、

「それじゃあ夏川、任せた」

 天水は親指と表情をそのままに、左手で水上の肩を後ろからトントンとたたいたが、無視された。

「えーっと、あまり運転してないんで自信ないです」

 夏川はそう言うしかなかった。

「古泉、任せた」

 日陰で暑そうに寝そべっている柴犬に目を向けていた古泉が振り返った。

「よかろう」

「いいや、私が運転する。って、なんかこの不毛なやりとり、前もしなかったっけ?」

「言われてみればそうだな。じゃあ行こうか」

「運転手は誰なんですか?」

「古泉」

 そう言った水上に天水が詰め寄った。ここまで言ったので引き下がれないのだろうか。

「再審要求!」

「この車、半年前に買い換えたばかりなんだ。勘弁してくれ」

「なんでぶつけることが前提なの! 古泉ぃ、この無礼者に私の運転ぎじゅちゅを語ってやって」

「一見、何事もなかったな」

「うまく流しましたね」

 少し間を置いて、古泉が話し出した。この中で天水が運転する車に乗ったことがあるのは彼女だけだ。

「想像してるほど恐ろしい運転はしないよ。危険度でいえば水上と同じくらい」

「よくても中破か」

「自己評価、だいぶ低いですね」

 結局、四人が交代で運転することになった。

 いつの間にか、柴犬のとなり、互いが暑くないくらいの距離に、灰色の猫も足を投げ出して眠っていた。

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