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 古泉が犬小屋に慎重近付いていくと、水上の方からは犬小屋の陰になって見えない場所から猫が飛び出した。家の横の方に走っていったため、灰色っぽい毛色だったことくらいしかわからなかった。

 古泉は猫が去って行った方に行こうとして、やめた。水上はサンダルを履いて外に出て、「いまからそいつの散歩に行くけど、一緒に行くか?」

 と、古泉に聞いた。

「行く」

 鎖をリードに付け替えると、柴犬は嬉しそうに尻尾を振って、今にも駆け出さんとばかりにリードを引っ張った。

「見ての通りしつけがなってないが、しばらく歩いたら落ち着くから。リード持つ?」

「やめとく」

 海岸を歩いた。早朝なので車通りは少ないが、同じように犬の散歩をする人やランニングをしている人がいた。

「さっきのは何を撮ってたんだ?」

「ん」

 古泉は水上にカメラの液晶を見せた。行儀よく座っている柴犬の後ろ、木造の犬小屋の中にさっきの灰色の猫が入っていた。カメラの方を警戒していて、いつでも逃げ出せる体勢のようだ。

「追い出されたみたいだな」

「ルームシェア?」

「シェアできてないだろ」

 まだ低い太陽の光を受けた海は眩しかった。風は昨日よりはやや強く、それほど暑くない。気持ちのいい散歩だった。

 水上家に帰ったとき、家の陰から灰色の猫がこちらを窺っていた。逃げられそうなので近づかなかった。写真ではわからなかったが、首から腹にかけての毛が白い。

 柴犬に餌をあたえ、家に入って手を洗った。リビングでは朝食を終えた水上の父が新聞を読んでいるだけで、天水と夏川の姿はなかった。古泉は台所に行き、朝食を用意する水上の母を手伝い始めた。水上は椅子の上に置かれていた地元の新聞を読み始めた。

 朝食ができる前に夏川が下りてきて、朝食ができたとき古泉が天水を起こしてきた。母も含めて五人で朝食を食べた。水上が例の猫の話をして、古泉の撮った写真を見せると、

「もう見たんだ。これが昨日言った面白いものよ」

 と、母が言った。対して水上が、

「うちで飼ってんの?」

「違うよ、野良。ごはんをあげると、二匹で仲良く食べるのよ」

「それは見てみたい」

 天水がそう言って、古泉も同意するように頷いた。

「そうかー。うちの犬も器が大きいんだな、俺に似て」

「え?」

「ん?」

「はい?」

 三人同時に言った。

「楽しそうな部活でなにより」

 水上の母がそんなやりとりを見て言った。

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