お姉ちゃんが毎晩ハサミを持って寝室に来るから怖い。
僕は気づいてしまった。
毎晩毎晩、お姉ちゃんが僕のお布団に潜ってくることに。
最初は寝ぼけたのかな? って思ってた。
その次は温かくて柔らかいって思った。
その次の日は僕の身体をまさぐってきた。
温かくて長い指で僕のを撫でてくる。
お姉ちゃんは可愛いし優しいから、
別に嫌では無い。
でもね。
ちょっと恥ずかしいよ。
いくら姉弟でも毎晩触られたら僕だって何か照れくさいな。
朝ご飯のとき、
食パンをモフモフと頬張るお姉ちゃんを見つめ、
ここ何日か思っていた事を告白した。
「ねぇ……毎晩毎晩触らないでくれない?」
「何で? 可愛い弟を撫でるのはいけないこと?」
お姉ちゃんは紅茶を飲み干し、フゥっ……と息を吐いた。
「長いよね……」
唐突に変なことを言うものだから僕は飲みかけのココアを吹き出してしまう。
「長い? そんなこと無いよぉ……」
「長いわよ。毎晩撫でてるから分かるもん!」
「でもそれは僕の個性だから……」
口ごもる僕に、お姉ちゃんは恐ろしい事を言い放った。
「個性で片付けられる長さじゃ無いでしょ!
仕方無いわね。このままじゃ困るから私が切ってあげる」
嫌だ。
絶対やだぁ!
僕はその夜眠れなかった。
いつお姉ちゃんが来るか、
それだけが頭に浮かびゆっくりと眠れない。
ウトウトしかけるとドアが少し開いて、
ハサミを持ったお姉ちゃんの影が映る。
「まだ起きてるか……寝てないと抵抗するもんなぁ……」
次の日の夜も、
お姉ちゃんはハサミを持って部屋の前をウロウロしている。
冬休みだから二日間くらい眠らなくても平気だけど、
流石に頭がボーっとする。
僕はこたつに入ってテレビを眺めていると……
猛烈な眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。
目が覚めると何かが無い。
辺りを見渡してみると、やっぱり何かが無い。
良い言い方をすれば「スッキリした」
悪い言い方をすれば……「何か大事な物が減った」
うわぁぁぁ!
にこりと笑ったお姉ちゃんがハサミをチョキチョキしながら、
こたつに入ってきた。
僕は涙目になりながらお姉ちゃんを睨みつける。
「何で切ったの!」
「長かったからよ。うん! やっぱ無い方が可愛いわ」
お姉ちゃんの趣味は知らないけど、
僕には大切な物だったんだよ?
何で……どうして勝手に切っちゃうの!
お姉ちゃんに心の底まで溜まった文句を放出していると、
洗濯物を抱えた母親が洗われ、僕とお姉ちゃんを交互に眺めた。
母は嬉しそうに目を細めてお姉ちゃんを見る。
「やっと切れたのね」
「ええ。大変だったわ、
あんな鬱陶しい前髪を今までよく放置してたわね」
お姉ちゃんが切ったのは前髪です。