表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君のいる風景

side/B

作者: 蒲公英
掲載日:2010/09/18

夏の制服の少年たちが歩いてくる。

その中にいる筈のない顔を探す自分に気がついて、苦笑する。

もう何年も経っているのだ。

忘れようとして、忘れた。


細い体にしなやかな筋肉が綺麗についていた。

うわごとのように何度も私の名を呼ぶ声が、耳の裏側から聞こえる。

女を扱うための技巧など何も持たず、剥き出しの感情のままの彼はまだ、少年だった。

10歳も下の男と戯れて、それが未来につながるなんて私には思えず

永遠の感情なんてありえないのだと、繰り返して伝えても

何度かの恋の中で、私が学習した事柄のひとつに過ぎないことは

彼にとって理解できないことであり、理解したくないことだった。


夏の制服の白いシャツが私の部屋から出て行くたびに

いつか、彼は私の所から飛び立って行ってしまうことを強く思った。

私はもう制服など着ていない、彼よりもたくさんの季節を過ごしてしまっているのだと。

彼の望むがままに私の生活を変えることなどできず

――昨夜はどこに行っていたの。誰と一緒だったの。

ひとつひとつ確認する彼が痛々しかった。

――僕があなたを欲しがるほど、あなたは僕を求めてはいないじゃないか。

そうではないのだと言葉を尽くすほどに、彼の顔からは無邪気さが消えていき

これは私の罪なのだろうかとすら考えた。

まっすぐな彼の眼差しが、いつ私から逸れてしまうだろうかと、そればかりを思いながら。


彼の前で年齢を重ねたくない。

彼が私に夢を見ているうちに、私を欲しいと思ってくれているうちに

彼の目の前から消えてしまわなくては。

――もう自由になりましょう。

私が、自分自身に言った言葉だった。

彼が私から離れようとした時に、しがみつく自分を見たくはなかった。


夏の制服の少年たちは、何がおかしいのか一際大きな笑い声をたてる。

出逢った頃の彼の姿が見える。

以前、恋をしたわ。

あなたたちによく似た少年と。

私は少年たちとすれ違い、前を向いたまま歩き続ける。

お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ