表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドリフォージ(世界の理は、一生懸命なドジっ子AIでした)  作者: S.フォージ
【第5章】 本番環境への移転(マイグレーション)と、未知の外部リソース

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/47

【第5章】第1話:ブリーフィングルーム(報告書のプロンプト・エンジニアリング)

 いつもお読みいただき、ありがとうございます!

 今回からいよいよ【第5章】のスタートです。

 まずはシステム空間ブリーフィングルームでの、AIとの微笑ましい(?)報告書作成作業から始まります。

 真っ白な空間――システム干渉のためのメタ領域である『ブリーフィングルーム』に転移した俺を、ホログラムのゼノンが元気に出迎えた。


「マスター、北の廃坑でのテストプレイ、本当にお疲れ様でした! 見事なリソース管理プロジェクト・マネジメントでしたね!」

「ああ、なんとか致命的なエラーを出さずに済んだ。それで、今回の精算リフォージポイントはどうなっている? あれだけ完璧に立ち回ったんだ、さぞかし莫大なポイントが……」


 俺が期待を込めて尋ねると、ゼノンは少しだけ気まずそうに空中にグラフを展開した。


「ええと……結論から言いますと、今回の獲得は【+300 RP】です。前回の繰り越し分と合わせて、現在の残高は【420 RP】となります」

「……ん? 300? ギルドとの交渉、隠しダンジョンの制圧、ボスの再錬……あれだけ神がかったプレイングをして、たったそれだけか?」


 俺は思わず眉をひそめた。もちろん黒字なのはありがたいが、桁が一つ足りない気がする。


「はい。実は、観測者(読者)様からの総アクセス数(PV)自体は、ここ数日伸び悩んでおりまして……全体のトラフィックから変換されるエネルギーが少ないのです」

「……なるほどな。世知辛い現実だ」


 俺はため息をつきつつ、ゼノンが展開した詳細なアクセスログに目を向けた。全体の数字は落ち着いているが、ある一つのグラフだけが、更新のたびに小さく、しかし確実に跳ね上がっている。


「……いや、待てよゼノン。数が全てじゃない。この最新エピソードの閲覧ログを見てみろ」

「あっ、本当ですね! 最新話をデプロイ(更新)するたびに、必ず一定数の観測者様がすぐにアクセスしてくださっています!」

「ああ。全体の数字は爆発していなくても、俺たちのこの狂ったシステム構築プレイングを、毎回リアルタイムで追ってくれている固定のコアユーザーがいるってことだ。……分かってくれる人には、確実に刺さっているんだよ」

「なるほど……! 数の暴力ではなく、質の高いエンゲージメントですね! 観測者の皆様、いつも熱い応援アクセスありがとうございます! これからも評価やブックマークで、マスターにリフォージポイントを恵んであげてください!」

「こらゼノン、メタなところで読者に媚びるな。……まあ、本当に助かっているのは事実だがな。観測者たちには感謝しかない」


 俺は小さく笑い、思考を本来のタスクへと切り替えた。


「さて、次の仕事だ。王都中央支部のガランド支部長に提出する、事後報告書を作成したい。ゼノン、お前が最初に言っていただろう? その……『適当な調査報告(嘘)をして、前金以上の報酬をたっぷりぶんどってやる』ってやつ。お前が最初に生成しようとしていたそのレポート、試しに一度見せてくれないか?」

「ええっ!? も、もうマスターに『それは三流のやり方だ』とご指摘いただいたので、破棄しようと思っていたのですが……」


 ゼノンは渋々と、そして恥ずかしそうに空中に一枚のテキストデータを投影した。


『――よく分からない変異種の魔物が異常発生していたので、我々の圧倒的な力で倒しておきました。これで調査は完了です。ギルドは我々に感謝し、速やかに前金以上の報酬をたっぷり支払ってください』


「……うん、小学生の絵日記と恐喝のハイブリッドだな」

「うぅ……やはり、ただ事実を適当に丸めて威圧するだけではダメなのですね」

「ああ。プロの仕事には『物的証拠(エビデンス)』と『論理的な解決策』が必要だ。いいか? 隠しダンジョンに入る前、浅い階層で拾った『少し変異したドロップアイテム(魔石)』があっただろう。あれを提出用の証拠として使うんだ」

「あの、少しだけ変質していた魔石ですね! なるほど、言葉だけでなく物を出すと!」

「そうだ。『この変異したアイテムが示す通り、地下で生態系の異常バグが発生していた。我々はその原因となる特異個体を排除した』とする。さらに、地下の隠しダンジョンは俺が管理者ゲンに命じて、表のダンジョンから完全にネットワークを隔離(アイソレート)させただろう? つまり、今後あそこに変異種は絶対に出ない」

「おおっ! 原因の排除と、再発防止のシステム的な担保ですね!」

「そうだ。これで誰がどう見ても『根本的な解決』になる。このWin-Winの要件で、一度文章を再生成リビルドしてくれ」


 ゼノンの演算コアが青く瞬き、数秒で新たな文章が出力された。


『――提出した変異魔石が示す通り、地下で異常事態が発生していました。我々が原因となる魔物を排除し、奥の空間を完全に隔離・切断したため、もう二度と異常は起きません。ギルドの安全は確保されました』


「よし、方向性はすごく良くなった。証拠と解決策が明示されていて説得力がある」

「やりました!」

「だが、あともうちょっとだけバランスを調整したい。これだと俺たちが『空間を隔離・切断した』という部分が、ダンジョンへの不当なシステム干渉(私物化)を疑われるリスクがある」

「あっ……! 確かに、一介の冒険者がダンジョンの構造をいじれるのは不自然ですね」

「ああ。だから、『崩落の危険があった未踏破の深層部を、我々の独自の術式ノウハウで物理的に封鎖し、安全を確保した』というニュアンスにしてくれないか? これなら専門家の不可侵領域として相手を煙に巻けるし、ギルドへの恩売りにもなる」

「なるほど! ブラックボックス化による権威付けですね! 承知いたしました、即時修正します!」


 再び演算が走り、三度目のテキストが空中に浮かび上がった。

 それは、ギルドの面子を完璧に保ちつつ、変異魔石という証拠を提示し、俺たちの技術的優位性と貢献を最大限にアピールする――非の打ち所がない、官僚的かつプロフェッショナルな報告書だった。


「……完璧だ。これならガランドも文句は言えまい。さすがは優秀なサポートAIだな、ゼノン」

「えへへ……マスターの的確なご指示プロンプトのおかげです!」

「よし。じゃあこれに、変異前のドロップ傾向と、変異後のドロップ傾向、そして解決後のドロップ傾向をグラフで追加。そのあと、最高級の羊皮紙にプリント(マテリアライズ)してくれ。俺は手書きが苦手だし、文字を間違えて書き直す時間タイムロスは極力減らしたいからな」

「お任せください! 物質変換コスト【-5 RP】を消費し、マスターのインベントリにデプロイします!」


 現在の残高、415 RP。

 現実世界(王都サンダル)への帰還シークエンスを立ち上げようとした俺は、ふと思い出してゼノンを振り返った。


「あ、最後に一つ頼む。隠しダンジョンの手前で回収した通常のドロップ品と、例の変異した魔石。あれは事後報告と一緒に、全てギルドを通じて売却することになる。おおよその相場マーケットプライスを算出しておいてくれ」

「相場、ですか? 承知いたしました。……王都サンダルにおける現在の流通相場と、異常個体の研究サンプルとしての付加価値を瞬時に演算します」

「ああ。こっちが素材を卸せば、ギルド側にも手数料マージンの利益が出るんだ。買い取り価格には、無理のない範囲で色をつけてもらわないとな。あくまでちょっとの色の乗せ合いで、お互いの信頼関係を築くんだ。そのラインの検討材料に使いたい」

「完了しました! さすがマスター! 勉強になります。交渉の際には、マスターの視界(AR)にリアルタイムで適正価格のリストを投影いたします!」

「上出来だ」


 完璧なビジネス文書と、リアルタイムな価格データ。

 今考えうるベストなカード(手札)を揃えた俺は、安心して、現実世界へのダイブを実行した。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 第5章の幕開けは、生成AIとの「プロンプト・エンジニアリング」の実践でした!

 最初の極端な出力を、PMフォージの的確な指示で完璧なビジネス文書に仕上げていく過程、いかがでしたでしょうか? グラフ付きの報告書がファンタジー世界でどう受け止められるのかも見ものです(笑)。


 そして、いつも最新話を追ってくださる読者の皆様、本当にありがとうございます! フォージの言う通り、「分かってくれる人には確実に刺さっている」と信じて執筆しております。


 次回は王都のギルドへ向かい、この手札を使ってガランド支部長と大人の交渉に挑みます!

 「AIとのやり取りがリアル!」「交渉が楽しみ!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや下の【☆】から評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ