赤い毛糸事件③ さらなる事件、深まる疑惑
事件は早朝に起きた。
私たちが着いた頃にはもう机上の惨劇はどうしようもならなくなっていた。
「ひどいな…」私はそうこぼした。
亀田くんの生徒用机にはバラバラになった毛糸、そして壊れたホルダーと荒い字で書かれた落書きが残されていた。
内容は酷いもので「コロすぞ」などここではあまり書けないようなことばかりであった。
まだ人は少なくそこまで騒ぎにはなっていなかったが誰もこの机に近寄ろうとはしなかった。
「星野、これどうしようか」
「とても腹立たしいね、彼にこんなことをするなんて。だが、犯人はすぐわかる。証拠を残しているようなものだからね。」
と、星野は調査に取り掛かろうとしていた。すると、
「なんだ、これ」と、昨日までの元気の良かった声がまるで別人みたいに枯れてしまった亀田くんがいた。
「何でこんなことを…俺が何したっていうんだよ」
相当心に傷がついていたのだろう。亀田くんは膝から崩れ落ちた。
「落ち着いて、とりあえず席に座ろう。」
私が慰めているあいだ星野は机を写真に収めしばらくすると片付けていた。毛糸を捨てホルダーのみを残し、机の落書きを拭いていた。
「誰かマニキュアの除光液みたいなの持ってないかい、ああ、ありがとう。」
星野は机を拭き出したが…
「おや?」
「どうしたんだ星野」
「おかしいな文字が消えない。」
「これは…」
するとそこで佐伯が教室に入ってきた。周りは彼が犯人だと言わんばかりに冷たい目を向けていた。
「なんだこれ、ひどいな…」佐伯は驚きの声を上げたがすぐ他の生徒が
「犯人が驚いてどうすんだよ」と、非難した。
佐伯は無言で近寄りその生徒を圧倒した。
「俺はこんなちっせえことはしない。」
誰も何も言えなかった。確かにこの目つきと長身は恐ろしいものだった。しかし、星野はすぐに佐伯の机に手を突っ込んだ。
「ハサミだ。それも赤の毛糸がついたね」
周りはさらにざわついた。そしてまたしても冷たい目を長身の男に向けていた。きまりが悪くなったかの様に彼は教室を出ようとした時。
「佐伯、本当にあなたがやったの?」と小柄な女の子が話しかけた。そう、彼女こそ相川だ。佐伯が彼女のことを好きなのであればたしかに酷な場面ではあったが、こんなことをした奴に同情はできなかった。
佐伯は何も言わず出ていった。
亀田くんは新しい机に伏したままだった。そしてみんなは教師が来るまで慰め合っていた。
ただ星野だけは笑っていた。




