赤い毛糸事件① 普遍な依頼人
それは9月の頃、私は入ったばかりの探偵部で一人で依頼を待っているときだった。それは周りから見れば大きくもないが一人の人間からすると決して小さいとは言えない事件であった。
「おっすー、星野いるかー?」明るい声が薄暗い空き教室を少しばかり照らした。依頼人であろう彼はきっと星野と何かしらの関係があり親しい仲なのであろうと予測できた。
「星野は今購買で何か買ってるよ、私で良かったら話を聞こうかい?」
依頼人は驚いた様子で
「君があの転校生か!探偵部に在籍するなんて物好きなやつだなとみんなで話してたんだよ、いや悪い意味ではなくて」と
少しディスられたのかと思ったが本人にはその気がきっとないのだろう。
「ああ、その物好きな転校生だよ、2年A組の鷲田。そっちは?」
「俺は2年E組の亀田。帰宅部やってる。星野とは1年の時の友達さ」
そう自己紹介が済んだ頃にようやく部長がこの部室へ入ってきた。
「いやいや、まさかパン一つにこれほど悩むとは、自分の欲望と金銭はバランスよくいかないもんだね。おや、亀田じゃないか、どうかしたのかい?」
すると亀田は
「星野!お前に会いたかったよ。」と親しげに話した。
そして私と星野は亀田くんの依頼とやらを聞くのであった。
「いや俺も驚いてんだけどさ、赤い毛糸がなくなっちまったんだよ!」
その言葉を聞いた時私たち2人は顔を見合わせた。
「困ったねえ亀田うちの部活は暇なことも多いけどあいにく落とし物を探したりする便利屋とかなわけではないんだ、」
「いや星野これは単なる落とし物探しではないんだ自分でも手に負えないところまできたからお前に相談しに来たんだよ」
「そうか、それなら話の続きを聞こうではないか」
星野がそう言うと依頼人は静かに語りだした。
「俺が裁縫好きなのは知ってるだろう?」
「ああもちろん、君は休み時間いつも裁縫してたな。」
「2日前か、俺は友達のボタンをとめるのを依頼されてたんだ。そいつの希望の色は白色だった。時間はそこまでかからなかったし何より俺の上手さに感激してくれたよ。」
依頼人は自慢げにそう話した。と、そこで目つきが少し変わり、本題に切り込んできた。
「その日の夜に家で趣味の裁縫に取り掛かろうとすると赤い毛糸がなくなってたんだ。そう、だただ単に買いに行けばいいんじゃないと思うだろう。だけど、どうにも引っかかって。確実にあったはずなんだ俺のバッグに」
「盗まれた、と言いたいんだな?」
「そうなんだ。裁縫バッグは荒れていた。その日はさっき言った通り学校でボタン留めに使ったから盗まれたのは昼休みの後になると思う。」
「なるほど、盗難調査の依頼ねよくやるから任せてくれ。」
そう。盗難は私が転校してからの数ヶ月で5回以上は依頼されていた。殆どは勘違いだから今回も何処かそうなのではないかと私は予想していたのだった…




