雲形組事件③ 東山家
金曜日、私たちは寮の相部屋で次の日に向けての準備をしていた。
「明日の早朝に東山の家に向かうんだね、服装はどうしようか」
「動きやすい私服でいいんじゃないかな、僕はスーツを着ることにするけどね。」
「何か特別な場所にでも行くのかい?」
「行く、可能性があるとでも言おうか。私服とスーツが一緒にいたら怪しまれるだから明日は別行動でこの無線を繋いでおこう。」そして星野は机の引き出しから無線を取り出した。
「これか、使うのは久々だね。」
「電池が入ってればいいが、まあ大丈夫だろう。では今日はもう早く寝るとしよう。」
次の日、私たちは日が昇る前に寮を出ていた。私は真っすぐ東山の家へ。星野は寄り道をして行くと言っていたが遠くで見えるところにはいるらしい。
そして私は東山の家の前に立っていた。近くの物陰で家から出るところを待っていた。
はっきり言って出かける確証はなかったが佐伯曰く学校に行ってないので、普通やんちゃしている生徒は休日外に出るだろうという甘めの推理で心配ではあったが、しばらくすると家の扉が開いた。
「あれは…。」私は無線で素早く情報を伝えた。
それは東山の母親であった。
東山の母親は見るからにして生活が大変そうであり、この早朝から何処かへ向かっていた。きっと仕事があるのだろう。
「どうする?星野」
「このままでいい、東山が出るまで待とう。」
しばらくして東山が家から出てきた。私はすぐさま後を追い尾行していると、薄暗い商店街に差し掛かりとあるビルのようなところに入っていった。
すると後ろから星野がやってきた。
「さあ、あとは僕に任せて先に東山の家の周りを少し調査してくれ。近所の人に聞けばわかることもあるだろう。また後で東山を連れて家に行く、その時合流だ。」
「なんだって?東山を連れてくるってのかい?」
「ああ、そのつもりだ。せいぜい怪しまれないよう頑張ってくれよなー」と、星野はまた何処かへ隠れてしまった。
彼が私にさえ計画を伝えず指示を出してしまういい加減なところはいつものことだから今回も従ってみようと私は思った。
家の周りを徘徊しているとなんとも噂好きそうな主婦が二人いた、きっと二人でこの近所のことを話しているのだろう。星野のマネをして少し話してみることにした。
「こんにちは、少し聞きたいことあるんですけどいいですかね?」と明るい表情で話題をきり出すと
「あら、見ない顔ね。高校生かしら?どうかしたの?」と気軽に返してくれた。
「あの家の東山君について聞きたいんですが友達なんですよ。最近学校に来れてなくてそれで心配でここまで来たんですが家にいないようで…何か彼変わったことありましたかね?」東山とは友達ということにして聞いてみた。
「東山?」と一人が思い出しているともう一人が
「ほらあの家よ、二人暮らしの。借金取りの」
と、何か引っかかるキーワードを出してくれた。
するともう一人は思い出したかのように手を叩いた。
「あー、あの子ね。そうね、あの子昔からここに住んでたわ。いつも元気そうだったの。でもお父さんが中学校に上がるくらいかどこかで蒸発したらしくてそれから大変そうだったわね。」
「借金というのは?」
「ああ、あの家おかあさんが朝早くから仕事に行って夜もまた仕事で。それなのに時々借金取りが来てたの。あれは多分商店街の雲形組の関係者よきっと。もう最近は来なくなったんだけど一時期はほんとに大変そうだったわ。この辺でいいかしら?あんまり喋りすぎても悪いからね」
「もう大丈夫です、ありがとうございました。」
軽く会釈し私はその場を去った。
気になることは1つ。やはり雲形組という得体の知れない組のことだった。




