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ご無沙汰しております、そして初めまして。盛嵜です。
数ある物語の中から、拙作にお立ち寄りくださりありがとうございます。
今回は制作途中の息抜きに短編を書きました為、投稿することにいたしました。
総数一万字強の短いお話で、4回に分けて投稿いたします。
本日の第1話より一時間毎に投稿予定ですので、最後までお付き合いくださると幸いです。
この物語が少しでも、皆様の気分転換になりますように。
俺は左胸に受けた衝撃で後退ると、背中に当たる段差も気にならずにズルズルと壁伝いに尻もちをついた。
自分の胸を見れば突き立てられた剣が深く刺さり、刃を伝って赤黒く見える液体が流れ出るのを見た。
見る間に地面に染みが広がっていく。喉にせり上がるものを感じて咳をすれば、吐き出された物は手の平に落ちて、まるで血の色みたいだなと虚ろな目で確認した。
「あ……?」
そこでやっと自分の状況が理解できるも、鈍る思考に“なぜ”という言葉しか浮かばなかった。
視線を上げて前を見れば、俺に剣を突き立てた金髪の男が嘲笑うかのようにこちらを見下ろしていた。
「なんで? って顔をしているな。いいぜ、最期に教えてやろう。お前は戦闘に全く使えない奴だったが、我慢して今まで面倒をみてきた。だがそれもここまでだ。このダンジョンで例の物が手に入らなければ、お前を用なしにするとパーティーで決めていたからだ。だが、ギルドに戻ってからお前を首にすれば、俺達を慈悲の無い奴らだとののしる者も出てくるだろう」
「そうそう。それじゃ困るのよね」
男の後ろから前に出てきた弓を背負う女が、あっけらかんと言う。
「お前はこのダンジョンで、最期に俺達を庇って死ぬってこった。そうすりゃあお前の名誉は保たれたまま、俺達も新しく有能なメンバーを探せるって寸法だぜ」
「うふふ。綺麗に終われるようお膳立てしてあげたのだから、ありがたく思いなさい?」
大盾を軽々と持つ大男と、ローブを纏った妖艶な女が言って口角を上げた。
四人の眼は魔法で浮かぶ光に怪しく輝き、まるで道化でも見ているように楽しそうだった。
そう言う事か、と思った。
確かに俺はたいして役にも立たないメンバーだったから、いつかは首になるだろうとは思っていた。これまでどんなに稼ごうとも、俺に渡される報酬と言えばDランク程度の金額でしかなかったし、俺を戦闘に加える気もなさそうだったために覚悟はしていた。
だがまさかダンジョンのボス部屋で、しかもそこで出現した宝箱から出た貧相な剣で殺されるとは思ってもいなかったのだ。
そうか、俺はここで死ぬのか………。
口から温かいものが溢れていくが、俺は浅い息を繰り返すのがやっとで、口を閉じる事さえ出来なくなっていた。
文句を言いたい、罵倒を浴びせたい、そうは思っても体も思考も、もう自分の意思では動かせなくなってきている。
だが、虚ろな目で最期まで彼らを睨み付けてやろう。そう思うのに目の前はどんどん暗くなっていき、彼らの輪郭すら認識する事ができなくなってきた。
ああ、俺は一体何のために今まで生きてきたんだろう。
瞼が重くなってきた時、金髪の男が俺の胸に刺さる剣の柄を握った。
これ以上なにかするのかと薄れる意識で見ていれば、俺の体はガクガクと揺さぶられ、剣を引き抜こうとしているらしいと分かった。
とは言え、俺にはもうどうする事も出来ず、瞼を閉じて漆黒の中へと沈んで行った。
「ぐっ、剣が抜けないじゃないか……」
「え? たとえショボい剣でも、ダンジョンのお宝なのよ? 売り飛ばせば多少お金にはなるはずなのに」
「どれ。俺が引っこ抜いてやる、貸してみろ」
大柄な男が体から剣を引き抜こうとするも、その怪力をもってしてもビクともしなかった。
「チッ、俺でも無理だ」
「骨に食い込んでいるのじゃないの? それではもう無理よ。諦めなさい」
「そうだな。こんなただの鉄クズ、こいつにくれてやるか」
「あ~あ。折角ラスボスまで倒したのに、お宝がショボかったわねえ~」
「まあいいさ。今回の目的は半分達成したんだからな」
四人は互いに仄暗い笑みを浮かべ合うと、動かぬ男に持たせていた大きな荷物を回収し、もう興味はないとばかりにボス部屋を出て行った。
そして誰も居なくなったボス部屋の暗闇には、壁にもたれ掛かるCランク冒険者だった男と、胸に突き刺さったままの剣だけが残されたのだった。
次話は一時間後に投稿いたします!




