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7. ユリシアの想い(1)

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「……いとさん、はいとさんっ。起きてくださーい」


なんとも慎ましげな声がベッドで就寝中の俺の耳をこそばゆくさせる。


ユリシアの声だ。

もう朝か。

にしても、そんな微音で目覚めるのは中々難易度高いぞ……。


「はっ……はいとさーん……、起きてーくださーい……」


何度も何度も一生懸命に俺を呼ぶユリシア。

その響きがあまりにも心地が良くてなんだか逆に眠たくなってきたぞ……。


「ユ、ユリシア……、おはよ……って、なにしてんだ?!」


ユリシアは俺のベッドに上半身をのりあげ、唇が耳に触れそうな距離にいた。

恥ずかしさで真っ赤になったその童顔の奥には二つのたわわな球体が、まるでこっちに来てと誘うように揺ら揺らと揺れている。


「お、お姉ちゃんに、こうやって起こしたらはいとさんが喜ぶって言われて……」


「……あのエロババア!」


俺は心の中でユリシアの姉ニーナに対してグッドジョブを送りつつ、自分の世間体のために心惜しくもその二つの揺らめきの誘いから体を離す。


「だめ、でしたか……?」


ユリシアは顔を真っ赤にしたままこちらに不安の眼差しを向ける。


「いや、ダメというかダメじゃないというか破壊力抜群というか……。

とにかく、ユリシアは男というものの怖さを少しは知ってくれ。

そんなかわいい顔(と大きい二つの胸)に迫られたら、100人中100人、誰もが狼になってしまうぞ」


「か、かわいい……ですか?!」


ユリシアはのけぞるように上体を起こす。


「いや、確かに言ったけど、伝えたいのはそこじゃない!

もう少し男への振る舞いは考えろって!」


「そ、そうですよね……!

ごめんなさい……。

私、舞い上がっちゃって」


そんな風に喜ばれたら、何もかもを許してしまいそうだ。

魔性の女だな……。


「明日からはまた普通に起こしてくれたら嬉しいな」


「わ、わかりました!

……でも、あんまり寝坊助さんじゃだめですよ?

朝ごはん、冷めちゃいますから」


「ごめん。今行くよ」


掛け布団から抜け出しベッドに腰掛け、廊下に出ていくユリシアを見る。


ユリシアとニーナとの3人暮らしの日々が始まってはや一ヶ月が経った。

俺の仕事は相変わらず薪割りだ。

朝ユリシアに起こしてもらい、食事を摂り、ひたすら薪を割り、何やら進学に向けての書類を書いているユリシアの隣で永遠にも思える長く平和な時間をただ優雅に過ごしていた。

こんな贅沢な暮らしをしているが、俺は今都の方では有力者への痴漢現行犯でお尋ね者だ。


ここを離れて騎士団の奴らなんかに見つかってしまえば牢獄生活に逆戻りなのだが、少しでも気を抜くとそんなことは忘れてしまいそうになる。


リビングへのドアを開けると、いつものダイニングテーブルにちょこんとユリシアが座り、俺が来るのを待っていた。


「いつも待っていてくれるのはありがたいんだけど、1人で食べちゃっていいんだぞ?」


ユリシアはなんだかあたふたしながら目を逸らす。


「い、いえ。家族は一緒にご飯を食べるものですし……」


「ニーナは?」


「お、お姉ちゃんは、私が起きるよりも先に食べちゃってますから……」


「確かにな」


ニーナの店は早い。

日本のコンビニ顔負けだ。

そうして仕事している人のことを考えると余計今の自分の身分には身が縮む。


「そ、それに私、全然お腹減ってませんから……!」


そう言ってユリシアが少し胸を張ると、ぐぅ〜とどこか魔の抜けた音がこの広い部屋に鳴り響く。


「……!!////」


ハッと身を屈め、またもやユリシアは顔を真っ赤にする。


「……聞かなかったことにするよ」


俺はいつものようにユリシアの焼いたパンを頬張る。

うまい。いつも通りだ。


化けガエルと戦い子供を助けたあと、なぜか全裸にオムツの姿に片手にガラガラを持っているところをダクト達に見られて赤っ恥をかいたあの事件以来、俺は村には出ていない。


(続く)

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