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6. 初めての戦闘、そして社会的敗北

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「子供が……子供が魔物に襲われている!」


「なっ、なん…だと…?!」


店の中の皆狼狽えているようだ。

どうやら異世界とはいえど、日常的に魔物に出くわすことはないようで、誰も慣れていないらしい。

店内は一気に静寂に包まれた。


そんな中、ダクトはジョッキを置いて男の前に出る。

「場所はどこだ」

「役場の前だ」

「なに……? そんな村のど真ん中に魔物が出没したのか……?

よし、今から俺が家にあるバトルアックスを持って向かう。お前は念の為に国の騎士団に通信魔法で連絡しておけ。お前は…」


ダクトが慣れたように店内の男たちに支持を出している。


俺は……。


自分の手のひらを見る。

汗が滲み、震えが止まらない。


魔物なんて転生者の俺にとっては出会ったこともない未知の恐怖だ。

怖くて怖くてたまらない。

とにかく今はここにいれば安全なんだ。

ダクトやその仲間たちがなんとかしてくれる……。

俺は何もしなくても……。


そんな時、脳裏に子供が魔物に襲われている情景が浮かぶ。

せっかく社畜を辞めて異世界に来たっていうのに俺は、一人のこどもすら助けられずにうずくまっているのか……?


今まで散々貧乏くじ引いて、その度に周りの得する人間を恨んだ。

だが、後悔はしなかった。


これじゃだめだ。

俺はこんな自分認めたくない。


きっと、これが俺の生きる道なのだろう。


貧乏くじ引いたとしても、困っている人がいるのに体が動かない自分は絶対に嫌だ。


席から立ち、ダクトの前に行く。


「役場っつーのはどっちだ」


「この通りを右に曲がって真っ直ぐだ」


「わかった。このまま行く」


俺はそのまま店を走り出す。

するとダクトに呼び止められる。


「お、おい待て! 

お前、その装備で行くのか?!

死んで終わりだ!

ここで待ってろ」


「ダクトが武器持ってくるまでの時間稼ぎが何かできるかもしれないだろ。

俺は一度死んだ人間だ。

誰かを助けられるなら、それを優先する」


「一度死んだ……?

何いってっかよくわかんねえが、話しても通じないのはわかった。

勝手に行け」


そのまま扉を抜けようとすると、ダクトがまたしても呼び止める。


「あ、おい!

これ持っていけ!」


渡されたのは缶詰を開けるくらいにしか使えないような短剣だった。


「気休めにしかならないが、今はこれしかねえ。

研ぎは欠かしてねえから、ヤバいと思ったらそれ振り回せ。

牽制にはなるかもしんねえ。

せっかくできたユリシアの友達だ。

死ぬんじゃねえぞ。

ちなみにお前がユリシアに気があるようだったら魔物の代わりに俺がぶっころ……」


「ありがとな、ダクト!」


俺はそうダクトの続く言葉を遮り、言われた通りの道を進み役場に向かった。




「ゲロゲロゲロローン!」


子どもを口に咥えている大ガエル。

だが、この村に来るまでの道中で見たカエルとは目の色が違う。

黒黒しい光を纏った赤だ。

明らかに他の生物とは様子が違う、人間への敵意剥き出しのような生物。

これが魔物と言うものなのか……。

しかし、これは想定よりも一刻を争う事態だ。

このまま舌を引っ込められたら子どもの命が危ない。

魔物を目の前にして俺の体の震えは最高潮に達していた。


「お、おい! そこのゲボキモガエル!! さっさとてめえの汚ねえ舌引っ込めて、その子を返せ! でないとこのよく研いだナイフで、ギコギコせずにスーっとお前の舌引き裂くぞ!」


野球ボールくらいでかいその目玉が俺に向く。


「ゲェロ……?」


食事の最中、自分よりも二回りは小さい生き物がごちゃごちゃ鳴き出したのが頭に来たのか明らかに苛立っている。


「グングルゲェ……、ゲェロ!!」


大ガエルは子どもを舌から放り投げ、こちらに突進してきた!


子どもは地面に叩きつけられたが、命には問題なさそうだ


「やばい! 来るっ!」


俺は大急ぎでナイフを振り回す。


所作なんて分からずただ力任せだ。


大ガエルは簡単にこちらの動きを見極め、舌の先で刃を受け、俺の手からそれをするりと掠め取り、そのまま明後日の方向に飛ばした。


お、終わった……。


唯一の対抗手段であるナイフを失った俺は一瞬で窮地に立たされた。


大ガエルは思いっきり舌を振りかぶり、物理パワーが最大まで乗ったその一発を今か今かと俺に向けて振りかざそうとしている。


一度死んだ身とは言ったが、死というものには慣れそうにないな。


喉がカラカラと鳴り、人体全身が生命にすがろうとする。


そのとき、俺の腰につけた持ち物袋が眩しく光出す。


「なっ、なんだ?! こんなときに!」


大急ぎで荷物を漁る。


「こ、これは……女神がくれたガラガラ……?」


なんの変哲もない形状の赤ん坊用のガラガラが太陽光みたいに光を発していた。


「なんなんだよ……これ…って、うわあぁぁ!?」


俺が持ち手に手をかけるとガラガラはより一層光度を上げ、耐えきれなくなった俺は天にガラガラを掲げた。


「ゲ、ゲロゲロ…?! ゲロッ!! ゲッゲッ!!」


大ガエルはその眩しさに驚き、短い手でなんとかその大きな目玉を覆い隠そうとする。


しめた! 逃げるなら今しかない!


俺は怯む大ガエルを尻目に投げ飛ばされた子どもに駆け寄って肩に担ぎ、命からがら逃げ出した。


振り返ると大ガエルは追っては来ておらず、その場に目から手を離さずにその場に立ち尽くし、絶叫している。そして、ゲルのように徐々に皮膚が溶けだしていた。


「何なんだよ……? こいつは一体……」


いつのまにか光が止んだガラガラに俺は畏怖の目を向ける。


「おーい!! はいとー!! 大丈夫か?!」


向こうからダクト率いる村の若人達が各々に武器を携えやって来る。


「だ、ダクト……! それにみんな!」


さっきまでの緊張が一気に引き、俺は笑顔でダクト達の方に駆け寄る。


「おーい! ダクトー! 子どもは無事だー!」


大声でダクトに返事を返す。


「大したもんだぜ! お前は……、って!!

お前、何つー格好してんだ!!!!」


安堵の表情が一瞬で軽蔑に変わるダクト。


「何言ってんだ? 俺の格好が……って、なんだよこのオムツ!! しかも裸になってるんだが!!??」


ダクトはいつのまにか完全に変態を見る目でこちらを見ている。


「お前、いくら魔物との戦いが激闘だからって、そんな格好になるわけないよな……」


「……ああ。本当に悔しいんだが、何の反論の余地もない」


「てめえ!! 俺たちが来るまでの間、こんないたいけのない子どものいる前でなにしてやがったんだ!! 片手に赤ん坊のおもちゃ持ってやがるし!」


激昂し出すダクトを何とかして落ち着かせようと手で制す。


「ま、待て。落ち着いてくれ。ここは異世界なんだ。いろんな不思議なことが起こっている。こんな家みたいにでかいカエルが現れるんだぞ? 戦闘中に紆余曲折あり不可抗力でこんな赤ん坊同然の格好になることも……あるわけないかいやでも違うんだ」


ダクトは俺の御託を一切聞かず、ただただ怒りを溜めている。


「ユリシアにいい友達ができたと思っていたが……、どうやら違ったようだな」


そして、魔物大事に使うはずだったバトルアックスの刃を俺に向ける。


「じょ、冗談だろ……? 俺が助け出したんだぜ……?」


「その子を離せ!! この変態野郎!!!!」

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