表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/11

5. 村娘ユリシアとの出会い

ページを開いて頂きありがとうございます!

よければブックマーク・評価お願いします!

目を覚まして最初に視界に映ったのは知らない天井だった。

どこだ、ここ。

小さな木造の民家の一角で俺はベッドに寝かせられていた。

とにかく危険な状況ではなさそうだ。

体を弄ると腕に布が巻かれ手当てされていた。


「ひっ!」


振り向くと家屋の扉に手をかけ、直立不動になった少女がいた。

童顔に綺麗な黄色の瞳をし、長髪を後ろで束ねている。

歳は15歳くらいだろうか。

身長は低めだがドレスの胸元が開きたわわなものがこぼれそうだ。

驚いた拍子に右手に持ったプレートからパンを落としていた。


「お、お体は大丈夫ですか……?」


こちらに対し警戒しながら少女は言う。


「ああ、うん。

これ、君がやってくれたの?」


俺は腕に巻かれた包帯を指差す。


「は、はい……」


ぺこと頭を下げながら応える少女。


「ありがとう。

俺は沖屋はいと、旅人だ」

そう言ってニコッと笑みを作ってみせる。


それを見て少女は少し肩を撫で下ろす。


「わ……、わた、私はユリシア……。

いまっ、あなたの朝食を届けに来たんですがっ、ごめんなさい……。

床に落として……。

今新しいものを……。

って、ちょ、ちょっと?!」


俺はベッドから起き、床に落ちたパンを咥える。


「はわわわっ!

汚いですからっ」


「いいよ。

命の恩人が俺に持ってきてくれたものだ。

食べなかったらバチ当たるよ」


そう言って笑って見せる。

ユリシアは困ったように横に手を振る。


「そんな、別のものがありますから……」


「うん。すごく美味しいよ?」


「は、はう……」


ユリシアはそれを聞いて照れて頬を赤くする。


「い、今スープを持ってきますっ」


ユリシアの背中を見送る。


脱獄し森で死にかけたのから一転、こんな牧歌的な民家でかわいい女の子に看病されている。

人生、何が起こるか本当にわからないな。


小さな机を囲み、戻ってきたユリシアと朝ごはんを食べる。

ミルクスープとパン。

豪華な食事とは言えないが、空腹の俺にとってはご馳走だ。


「ユリシアはここで一人で暮らしてるのか?」


「い、いえ。

お姉ちゃんと二人暮らしです」


「すると、お姉さんは?」


「今は仕事をしに市場の方まで行ってます。

お姉ちゃん、朝早くて」


出会い頭よりユリシアの表情は柔らかくなっていた。

よかった。怖がられてはなさそうだな。


「ユリシアも仕事があるの?」


「仕事と言えるかわかりませんが、これからお姉ちゃんのお店に薪を届けに行きます」


俺は親指で自分を指す。


「よし! それなら俺が手伝うぜ!」


「えっ、ええ?!

そんなっ。

はいとさん、一週間経って目が覚めたばかりなのに」


「え、俺ってそんな寝てたの?!」


「は、はい。

ですから、もう少しゆっくりしてた方が……」


「だいぶ世話かけちゃってるみたいだな……。

異世界の君には伝わんないかもだけど、俺の故郷にはこう言う言葉があるんだ。

働かざる者食うべからずってな」


俺はそう言ってニッと笑う。


「そんなこと気にしてないです!」


「まあ、体は十分に回復してるんだ。

リハビリがてら体を動かしたいしな」


「お、お客様なのに…はうう……」


まだ少し納得がいってないユリシアと共に俺たちは薪割りに向かった。


玄関をくぐると目の前には既に木々が生い茂っている。


グリーンレイク城付近と比べると、この辺りは随分な田舎だな。

ユリシアの姉が仕事に出てる市場があるのかも疑わしいくらいだ。


「さて、この辺りに落ちてる薪を割ればいいのか?」


「は、はい。そうです」


俺は腕を捲る。


「よし。

さんざっぱら世話になったからな。

見てなユリシア!

この薪の山、俺が全部割り切ってやるぜ!」


「無理しないでくださいね!

これ、結構重労働ですから」


「まあ見てなって。

しんどかった社畜時代に比べたらこんなもん屁でもないって」


「シャチク……?

ギルドの名前かな」


………。

……。

…。


「す、すごいです、はいとさん!

あんなにあった薪を本当に全部割ってしまうなんて!」


「ぜぇぜぇはぁはぁ……ま、まあな」


俺は地面にへばりついたままユリシアにVサインを送る。


……想像してたよりずっとキツかった。


「これだけ割ってもらえたらもう一週間は薪を割らないですみます!

ほんとにありがとうございます!」


そう言う彼女の笑顔を見ると元気が湧いてくるようだ。


「この後はこれを市場まで届けりゃいいんだっけ?」


「はい! そうなんですが、はいとさん、体調は大丈夫ですか……?」


「ああ。

さっきまではライフジリ貧だったが、天使の笑顔の効能によって全回復だ」


「天使の笑顔……?」


「なっ、何でもない!

早く行こうぜ」


「はわわ…!」


君の笑顔に癒されたなんて説明できない……。



俺は薪を背負いユリシアに着いていく。

ユリシアの家から周りを見ても建物らしいものもなかったが、ほとんど獣道みたいな石の小道を進んでいくうちにちらほらと民家が見えてきた。

農民たちが声をかけてくる。


「よお! ユリシアちゃん! 今日も精が出るねえ!」


「ユリシアちゃんを見てると疲れが吹っ飛ぶぜ!」


あまりに大勢の人から声がかかるものだからユリシアはたじろぐ。


「あ、あは。こ、こんにちはぁ」


それを横目で見てると俺の目の前で農民の一人が立ち塞がる。

顔を見上げると屈強な男で間違いなく俺に睨み効かせている。


「にいちゃん見ねえ顔だな。

ユリシアと仲良さそうに歩いてるが、どういう間柄だ」


大男は今にも殴りかからんばかりだ。


「ダ、ダクトさん! やめてください!

は、はいとさんは旅の方で怪我の手当てをうちでしてるんです」


ダクトは俺を再びジロリと睨む。


「なるほどねぇ。

ユリシアに悪い虫がついたのかと疑っていたが……。

おい坊主、変な気でも起こしてみろ!

あとは、言わなくてもわかるよなぁ……」


指の骨をポキポキと鳴らすダクト。


「や、やめてください!

はいとさんはそんな人じゃないですから!

そ、その……、とっても優しいですし……」


ユリシアは俺を庇ってくれた。

痴漢として捕まった後でのその優しさは身に染みるな……。


「まあ、ユリシアがそう言うんならしょうがねぇな。

ナンパしてるわけでもねぇみてえだし。

小僧!

気が変わってユリシアに手出したらタダじゃおかねえからな」


俺に対して念の為もう人差ししてからダクトは農作業に戻っていった。


「だ、大丈夫でしたか? はいとさん」


心配そうに俺を見上げるユリシア。


「あ、ああ。全然大丈夫。

よくわかんなかったけどな」


「あの人は私が小さい頃から良くしてくれていて、普段は優しい人なんですが今日は様子が変でした」


「まあ、つまりは親心ってことか。昔から可愛がっている女の子にいきなり男ができたようだから、ほっとけないっていう」


するとユリシアの鼻の上が赤くなる。


「おとっおとこって、私たちってそんなふうに見られてたんですか…?」


「ごめんな。

こんなやつと誤解されちゃ嫌だよな……」


ユリシアはぶんぶんと首を振る。


「い、いえ。

そう言うつもりではなくて……。

私、今まで歳の近い男の子とあんまり関わったことがなくって、こんな風に付き合ってるって誤解されるのも初めてで驚いただけで……」


はわはわと焦りながらそう言うユリシア。


「そ、それに、その、はいとさんとそういう風に見られるのは嫌じゃないですし……はいとさんには優しくしてもらいましたし……、はぅ」


ユリシアは余計にはわはわとしだす。


「そ、そう?

俺、君に迷惑かけてばかりじゃない?」


「そ、そんなことないです!

薪割りをしてもらいましたし、私が作ったパン、捨てずに食べてくれて……うれし…かったです」


どんどん頬が染まっていく。


「あれユリシアが作ったの?!

すげー美味かったよ!

マジで!

今まで食ったパンの中で一番!」


「は、はうぅ……。

あ、ありがとうございます……」


ユリシアは目を下に向けたまま、小さな声で素早くそう言った。


にしても、そんな風にストレートに褒められたのは初めてだったので俺も照れてしまう。

それから店に着くまでの間二人で無言のままだった


………。

……。

…。

少し歩くと市場らしき地区に着いた。

その中の一角の店の女性がこちらに大きく手を振っている。


「着きました。

あれがお姉ちゃんです」


「ユリシアぁー!

早よきてやー!

薪がもうすぐ無くなりそうなんやぁ」


「う、うん。

今行くよ」


ユリシアと2人駆け足で向かう。


「やーよかったよかった。

ストックが足りんかったみたいでな、ギリギリセーフや。

およ、隣の君はうちで寝とった子やな?」


俺はお辞儀をする。


「どうも。

旅人の沖屋はいとです。

この度は助けていただきありがとうございました」


「ええてええて。

ウチの名前はニーナや。

ちゅうかウチ、君の看病なんてほとんど何にもしてへんし。

ユリシアがようさん面倒見とったからな。

好みの男連れて張り切ってたんとちゃうか?」


「お、お姉ちゃん!

変なこと言わないでよ!」


ユリシアはあわあわと慌てる。


「あはは、すまんすまん。

それより今は薪や。

ユリシア、パン焼くの手伝ってや。

はいとくん、デート中のとこ悪いねんけどユリシア借りるで」


「わ、わかったよ、お姉ちゃん。

ちょっと待って」


ユリシアの体が扉で隠れていく。


「ごめんなさい、はいとさん。

お姉ちゃんのお手伝いがあるのでこの辺りで待っていて頂けませんか?」


申し訳なさそうにこちらを向くユリシア。


「うん。

全然いいよ」


「ほらほら焼くでー」


ニーナがパン焼きパドルを持って急かしてくる。


「すぐ戻りますから!

前にあるお店なんかで休んでてくださーい!」


ニーナに引っ張られユリシアは店の中に連行されて行った。


「まるで真逆の性格の姉妹だな……」


二人とも違う方向で美人ではあるけど。

さて、ユリシアが言ってた店にでも行ってようかな。


ニーナの店を立ち、その足取りでユリシアから聞いた店に入る。


中は年季の入った大衆酒場で、昼時なのもあってかとても混み合っていた。

空いてる席があったのでなんとかそこに座った。


げっ。

隣を見るとダクトが座っていた。


「お、兄ちゃんユリシアと一緒にいた」


しかし先ほどのような敵意は感じられない。


「あ、ああ」


「さっきはいきなりキレてすまなかった。

ユリシア口説こうって魂胆じゃないみたいだしな」


「まあいいよ。

よくわからないけど誤解が解けたなら」


ダクトは前に置かれた巨大なジョッキを煽りつつ、話す。


「あの娘はな、訳あって両親がいないんだ。

それで、俺たち村人で面倒見てやってたもんで、ここら辺の奴らはあの娘のこと本当の娘みたいに可愛がってんだ。

それで、良からぬ輩があの娘に目をつけるたびこうして追っ払ってたんだ」


「まあ、ユリシアはモテそうだしな」


俺の言葉に同調するかのように酒を煽るダクト。

……まだまっ昼間だが仕事はもう終わってるのか?


「そうそう。

そうなんだ。

あの娘かわいいだろ?

それに優しい子だしな。

悪ガキなんかがしょっちゅう絡もうとするから、そういうやつらが現れるなり俺たちが追っ払ってたんだ。

ユリシアも嫌がってたしな。

あんたに関しちゃあの娘も嫌がってないし、なんなら楽しそうだったからな。

俺の勘違いだった訳だ」


「確かにユリシアのあの感じを見てるとおっさんがほっとけないのもわかるな」


ダクトはどっと涙を流す。

こいつ、泣き上戸か!


「そうだろ?!

親バカかもしれんがあんな良い子をどこの馬の骨かもわからんやつにやるわけには行けねぇんだ!」


店の主人がうんうんと頷いているのが見える。

どうやらこの店にいる人たちは総じて同じ気持ちなようだ。


「あの娘な、頭もいいんだ。

それで都の方から名門の学校に来ないかって話が来てよ、もうすぐ出発する大事な時期なんだ。

それでカッカしちまってた」


俺はユリシアの知り得なかった話を聞き驚く。


「そうだったのか。

名門校からの誘いか。それは凄いな」


ダクトはジョッキを勢いよく机に叩きつける。


「だろ?!

兄ちゃん、話のわかるやつだな!

マスター! この少年に酒を一つ!

な、飲めるだろ?」


「わ、分かったよ。

もらうよ」


勢いに押されそう言うしかなかった。

しょうがない。

ユリシアの仕事が終わるまで、ダクトの話に付き合うとしよう。

何はともあれ、ユリシアが村人たちにどれだけ愛されてるのかは分かった。

こうしてユリシアのことを知れるのは面白いしな。


マスターが持ってきた特大ジョッキに口をつけようとしたその時、店の扉が壊れそうなほど勢いよく開けられた。


「た、大変だ!!!!」


店に入った男は続け様こう言う。



「子供が……子供が魔物に襲われている!」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価お願いします!


次回【赤子の意地】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xの方から伺わせていただきました。 終始真面目に考えることを許さないノリがあらすじから始まっているのが良いと思います。 「この世界ではこうなんだ!このキャラクターはこういう奴なんだ!」でゴリ押しを重…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ