異世界転生した俺、幼児退行の呪いのせいで転生初日にセクハラで捕まる
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………。
……。
…。
目が覚め当たりを見渡す。
まんべんの青空、どこまでも続く街並み。
……着いたのか? 俺のいた地球とは全く別の世界、ユークリフォに。
人々は旧時代的な服装に身を包み、誰しもが己の仕事に向き合い、ひたむきに物を運んだり、店で物を売ったりしている。
道をゆく人の流れは止め処なく、この街がとても栄えていることが分かる。その顔ぶれは、耳の長いエルフ、頭に動物の耳が生えた獣人など。
間違いない。
ここは、異世界だ!
俺は嬉しさのあまり拳を握って腕を掲げた。
ここには俺を苦しめていたモノは何もない。
大嫌いな会社、俺を虐げてきた上司、守らなければいけない納期。
その全てから解放され、この場所で一から異世界ライフを送ることができるのだ。
どれだけ嬉しいことか。
もちろん、神様から言われた使命のことは忘れてはいない。
しかし、それはそれ、これはこれだ。
サキュバス探しに気を取られてせっかくの異世界観光を楽しまなくては損というものだ。
サキュバスはそのうち探すとして、まずは何をしようか。
ここでの名物なんかも食べておきたいな。
となると、まずは腹ごしらえか!
ちょうどあそこで肉を焼いてる美味そうな店が気になってたんだよな。
よし!
あそこで肉を食いながらこれからの作戦計画を……。
そんなことを考えていると、突然声をかけられる。
「にいちゃん、旅人か?」
そっちを向くと、背が俺の半分ほどしかない中年の男がいた。
背中に荷物を背負っているところを見るに行商人というやつだろう。
東京暮らしの俺にとっては珍しい存在だ。
「だと思ったぜ。
なんせあんた、ここいらのもんとは目が違う。奴ら、自分の商売のことしか考えてないような連中だ。
あんたみたいな純粋そうな目を見れば、一発で旅のお方だとわかるのさ」
「そういうあんたも商売人だろ」
男はニヤリと笑う。
「ああそうだ。
だが目が違え。
俺のモットーはお客様ファースト。
お客様のお役に立つことこそが商売理念なのさ。
金の亡者共と同じにしてもらっちゃ困る」
そう調子よく話す様はどこからどう見ても胡散臭い。
「で、何か用か?」
そう尋ねると、待ってましたと言わんばかりに距離を詰められる。
「用があるのは兄ちゃんの方じゃないのかい?
遠くから様子を見させてもらっていたが、キョロキョロと周りを見渡して、進む道がまるでわからねえって様子だったぜ」
「だったらなんだ」
「いや、気の毒なあんたに俺が案内人を買って出ようと思ってよ。
俺、商いのついででよろず屋みたいな事もしてんだ。
俺はここいらを飛び回ってる行商人だ。
地理に関しちゃ俺ほどの知識持ってるやつは滅多に居ねえ。
この街のことなどお安い御用さ。
案内人にはもってこいだと思うがね。
もちろん、ちっとばかりの報酬は頂くがな。
5ゴールドだ。
それで地図要らずになるとなれば安いもんだろ」
そう言ってニカーと隙間だらけの歯を三日月状に広げて見せる。
荷物を見ても凶器になりそうな物も持ってないし、これだけ人の多い通りで厄介ごとを起こすということも考えにくいな。
「よし、買った」
そう俺が答えると男はバチンと指を鳴らす。
「そうこなくっちゃ!
俺はピンプ、こっちは相棒のギャリーだ」
そう言って背中を指差すと荷物の隙間から肩に乗っかるくらいの小さな子供の竜が顔を出す。
「ピュー!」
ギャリーは元気よくこっちに鳴きかけた。
「どうも。
俺の名はハイト。
訳あって旅人をしている」
オッケーハイト、早速案内していくぜ。
着いてきな!」
挨拶もそこそこに歩き出すピンプ。
これだけの人々が通るストリートを慣れた足でスルスルと歩いていく。
俺はその背中になんとか着いていく。
ピンプから聞くに、この場所はグリーンレイクと呼ばれる都市で、その開けた地理的にこの辺りの首都なのだそうだ。
中心に聳え立つグリーンレイク城からなる城下街で、その人口の大半は王に支える家臣や彼らと政治的に近い貴族、そしてそれらの相手をする商人らだ。
周辺に点々と偏在する村の若者はここへ出稼ぎに来て商売を成功させることを目指しているようだ。
城周辺に近づくにつれ商人達の活気は落ち着き、静かな住宅街となった。
この辺りが家臣や貴族達の棲家らしい。
流石に城にまでは入れなかったが、その威厳のある城肌を拝むことはできた。
街全体を一周してきた俺たちは元いた商売地区に戻り、ピンプ行きつけの飯屋にやってきた。
どうやら俺を気に入ったようでピンプが奢ってくれるようだった。
最初は詐欺を疑っていたが、どうやら彼は本当に困っている人を放って置けないお人好しなだけであった。
俺たちのテーブルに料理が来た。
それは、人の腕くらいはある巨大な肉の塊だ。
鉄板に置かれ、付け合わせには見たことのない植物が添えられている。
「うひょー!
こいつはたまんねぇ。
早速いただくとしようぜ」
ナイフとフォークで音を鳴らしながらその肉塊にピンプは思いっきりかぶりつく。
「聞きたいんだが、これってなんの肉だ?」
ピンプは目がさらになる。
「何って、ジャイアントカタツムリに決まってんだろ?
この匂い、この照り、他に何があるってんだ。
ハイト、お前こんなのも食ったことねえのか?」
これが、カタツムリ?!
こんな巨大な肉の塊が?!
可食部でこれってことは本体はどんだけでかいんだよ……。
「この辺りはジャイアントカタツムリの名産地でさ、毎年余るほどの肉が取れんのよ。
そのお陰でこんな新鮮な物が激安で食えんだぜ。
ほれ、食ってみ」
そう言って俺の前の肉をフォークで指し示す。
く、奢ってもらったし食べたくないとは言いづらいな……。
こうなりゃイチかバチか!
俺は思い切って肉に齧り付く。
「な、何だこれ……、うま……」
ジューシーな肉汁が滴り、食べ応え抜群なのに嫌な油っぽさが全く無くいくらでも食べれてしまえそうだ。風味は牛肉と鶏肉の中間のようで、エスカルゴなんかとは別物の様だ。
「そりゃそうさ、こんな上物他じゃなかなか食えねえよ。
お、そろそろだな。
ハイト、外を見てみ」
食べながら表を向くと、先ほどまでの道の混乱が嘘のように商人も行き交う人々も皆道の真ん中を開けて、その開けた路地に目を向けていた。
一体これから何が起こるのか。
しばらくして、遠くの方から馬の足音が止め処なく聞こえ出してきた。
ピンプがつぶやく。
「精鋭騎士団のお帰りだ」
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次回、【騎士団長との対面】お楽しみに!