魔法という幻想へ、
それから約半年が経過した、ここまで過ごしているとこれが現実であることを受け入れるしかない。
前世ではニートとして暮らし、兄弟からも見放され、後悔ばかりの人生だった。
だが、こうして生まれ変わった以上、とことんやってやろうと思った。
半年暮らしてみてわかったことがある
ーこの世界には魔法が存在する。
ある日、父上が怪我をして帰宅した時のことだった。
母上が、手をかざしながら治癒の魔法を使ってみせたのだ。
その光景は、現実味がないほど美しかった。
そして俺の名前が「アッシュ・フォルセイド」であり没落騎士爵であるフォルセイド家の長男であったこと。
普段は「アーシェ」と呼ばれていること。
母親は「セリーネ・フォルセイド」愛称は「セル」
父親は「ガラント・フォルセイド」愛称は「ガル」
大まかこんなところだ。
しかし俺は前世の記憶があるからか周りから見るとかなり成長が早く不気味な人間に見えるらしい。
体と心の年齢のギャップのせいだろうか。
これに関してはどうしようもない、体が早く心の年齢に追いつくことを願うしかない。
それとこの家には父上の書斎が存在する。
俺はまだ歩けないがハイハイで移動できるようになったら、ぜひ魔法の本を読み漁ってみたい。
特に引きこもりでオタクだった俺には、「異世界」「魔法」というだけで心が踊る。
まだ移動ができないというのは辛いことだ、前世の記憶があり生まれた頃から物心がついているからか、寝転がるだけではとても暇なのである、
pi◯ivでR18イラストでも眺めていたい。
ーそれからまた数カ月ー
俺は1歳半になり一人で歩けるようになった。
それからというもの常に書斎にこもって本を読むようになり、物覚えの良いこの体はすぐに言語を覚えることができた。
俺に魔法の才能があるかどうかは今この段階ではわからない、
魔法の才能と魔力量は完全に遺伝しないのだ、
平均では9,10歳ごろから才能が現れてくるらしい。
俺に才能があると信じて今は勉強するしかない。
魔力量は生まれながら決まっているらしいが調べる方法は魔法科学校で調べる以外には下級身分には厳しい。
ぜひとも魔法科学校とやらに行ってみたいものだ。
そんな考え事をしていると突然扉が開いた
「アーシェこんなところにいたのね、ってなんで本を読んでいるの?文字なんて教えたかしら、」
部屋に入って来たのは母親であった、案の定1歳半である俺が本を黙々と読んでいる姿に疑問符を浮かべていた。
それもそうだ言語も教えていなければ会話もできない子供がいきなり本を読み始めているのだ、疑問を持たないほうがおかしい。
「ガル!アーシェが本を読んでいるわ、天才かもしれないわ!」
それを聞いて庭で木刀を振っていた父親が勢いよく書斎に飛び込んできた。
そして母と顔を見合わせ、驚いた顔でこちらを見る。
「セル、我が子は天才だこれは魔法科学校への入学が楽しみだ。特待生かもな。もしかしたらフォルセイド家の家名を取り戻してくれるかもしれないぞ。」
なんと俺は魔法科学校へ入学することがすでに決まっていたらしい、なぜだろうか。
というか俺の両親は親バカらしい、めんどくさそうだ。
だが、そんな二人を見ていると、なんだか悪い気はしなかった。
ーその日の夜のこと
俺が眠ろうと思い目を閉じたときのことだった、両親の寝室の方から吐息混じりの悩ましげな声が聞こえた。
そろそろ弟か妹ができるかもしれないな、
前世で見放されたことが、未だに心の奥に重くのしかかっている。
あの時の孤独や後悔は、簡単には消えそうにない。