異世界という劇場へ、
俺は35歳の所謂ニートと言うやつだ、
俺自身ニートであることは自覚しており、Twitterの名前やゲームの公開IDも自虐的なIDにしていたりする。
なぜ俺がニートになったのかだが時は高校時代に遡る
当時俺は当たり前だがカースト最下位の教室の角でオタクトークを繰り広げているタイプの小太りメガネだった。
そしてとある日なんと俺に告白してきた物好きの女子が居た。
そいつはカースト最上位のキラキラした陽キャグループの一人であり顔は可愛いのだが性格が悪そうで俺は正直苦手だった。
しかし彼女は愚か女子と話すことさえ叶うか怪しい俺にとっては千載一遇のチャンスであったので勿論即OKした。
しかし次の日状況が一変した。
教室に入ると強面の男共に囲まれ第一声に
「俺の女になにしてくれとんじゃ」
と胸ぐらを鷲掴みにされ怒鳴られた。
そう全て罠だったのだ。
その後俺のあることないことを拡散され病んだ俺は無事引きこもりとなった。
そして数年数十年親や兄弟の脛を齧りながら現在まで生きてきた。
そして今日この時すべてが変わった、
「おいてめぇいつまでここにいるつもりだ」
弟が突然部屋に乗り込みパソコンを蹴り飛ばし叫ぶ
俺は焦ってパソコンを持ち上げたが配線類がすべて抜け落ち電源が落ちていた。
配線を挿し直し再起動しようとしたところで弟に胴体を蹴り飛ばされ部屋の角で藻掻いた。
「なにするんだよ弟、」
恐らく折れている腹を抑え精一杯の声で怒鳴る。
「てめぇみたいなクソニートの弟になんぞなった覚えはない」
そう言われ絶句した
「なにを言っているんだ、お前は俺の実の弟だろ、血のつながりだってあるはずだ」
「うるせぇよ、血がつながっていることがおれにとっては恥でしかないんだよ、今すぐここからでていけ」
そう言われぽかんとした頭のまま俺は門の外へと追い出された。
これからどうやって生きよう、生活保護は受けられるのだろうか、
職業不詳住所不定の俺では無理なのだろうか、
わからない
数十年引きこもっていたせいで何一つわからない、とりあえず解決策が浮かぶまで何処かへ歩こう。
何も考えないまま俺はあてのない旅を始めた。
どこに向かうでもなく、気づけば陽は傾き、空は赤く染まっていた。
歩いた先は見知らぬ川沿いの土手だった。
空腹も寒さも通り越して、ただ「何も感じない」というのが正直な感想だった。
誰とも話さず、何にも触れずに過ごしてきた年月は、俺から現実感というものを全部奪い取っていた。
草むらに座り込み、スマホを取り出す。
Twitterの通知が溜まっている。
返信をする気も起きないが。
ふと、俺は川の方を見た。
流れは穏やかで、水面には夕焼けがぼんやりと映っていた。
このまま、入ってしまえば、楽になれるんじゃないか。
そんな考えがふとよぎる。
そろそろあてを見つけないとまずいな
そう考え立ち上がった瞬間。
乾いた靴底が滑った。
体が前に投げ出され、足場の斜面を転げ落ちる。
そして次の瞬間、冷たい衝撃と共に視界がぐるぐると回転する
川に落ちた。
足がつかない。
もがくが、パニックでどっちが上かすら分からない。
肺が悲鳴をあげる。
喉の奥まで水が入り込み、苦しさが全身を支配する。
ああ、俺、こんな死に方すんのかよ
最後の意識が途切れる直前、後悔と家族の笑顔が俺を蝕んだ。
どれくらい経っただろう真っ黒だった視界が突然明るくなった。
ぼんやりとした視界に見慣れない髪色の人物と聞き慣れない言語が聞こえる
ここはどこだ、俺は死んだはずだ。
声を出そうとしてみるがうまく声がでない
「あ、ああ。」
成人男性とは思えないか細く高い声が聞こえる、
どうなっているのだ、明らかに俺の声ではない。
俺はすぐ真横にある窓を見て絶句した
そこには1歳くらいだろうか、赤ん坊が寝転んでいた。
(俺は赤ん坊になったのか、溺れたせいで変な夢を見ているに違いない、きっとそうだ)
しかし明らかに鮮明であるその景色は、簡単にその考えを否定した。
本当に生まれ変わってしまったのだろうか。
だとしたらここはどこなのだろうか、地球の別の国かなにかだろうか、それとも全く別の世界なのか、