6-10.リーク砂漠 後半
ボクたちはリーク砂漠に戻ってきた。
変身をすぐに解いて魔力消費を抑えたけど、半分以上減っていた。
すぐに蓄魔の腕輪の魔力を解放して魔力を回復させたんだ。
驚いた事に、蓄積した魔力はリオにも使えたんだよ!まぁ、リオの魔力にはボクの魔力が含まれちゃってるからかもね。
何だかモバイルバッテリーの魔力版だね!
···それにしても気温差がスゴイ!!
すぐにエアコン魔法を使用したよ。
···さて、塔に戻ったんだけど、塔は完全に崩れ去っていた。当然、結界も消え去っていたよ。
魔獣レーダーの反応もなかったので、全滅か逃げたかのどちらかだろうね。
今のところ、黒魔力は発生してないようだ。
前回は2〜3日で発生した黒魔力から魔獣が出現してたから、倒すにはちょうど頃合いかと思ったんだけどね。まぁいいや。
「じゃあ、改めて砂漠を越えるぞー!」
「おー!アキ、身体強化6倍で進むぞー!多分夕方までには抜け切れると思うぞー!」
「うん!じゃあ、行こうか!」
そこからは順調に進んだ。ただ、やっぱり道中に見たことのない魔獣がチラホラ見かけるようにはなっていたけども、以前のように大群にはなってなかったね。
黒魔力はどうなったのかな?···もしかしてムーオが回収しちゃったとか?ありえるかも?
ただ、今はどうする事もできないからね。何かしら異変があったら情報共有するだけだ。おっと、砂漠に魔獣が現れ始めたって掲示板に書いとこうっと!
そろそろ昼食の時間だったので、昼食を簡単に摂りつつ、ちーむッス!の掲示板機能を立ち上げてさっきの情報を書き込んだんだ。
『(アキ)リーク砂漠に魔獣がチラホラ現れているのを確認したよ』
『(パス)情報ありがとう。転移ってすごいわね~!気をつけて旅を続けてね!』
『(アキ)ありがとうございます』
『(パス)そうそう、砂漠を抜けたところの森に宿場町があるけど、香辛料を使ったおいしい料理があるわよ~!ぜひ試してみてね』
『(アキ)そういった情報は大丈夫なんですけど···。まぁ、ありがとうございます』
『(アイリ)リーク砂漠に魔獣出現の情報助かりましたわ。王国の警備計画にも反映させるようにしておきますわ』
『(アキ)お役に立てたようでなによりです。さっきの魔獣の写真も添付しておきますね』
『写真50501251053003.jpg』
『(アイリ)···これはとんでもない魔法ですわね。絵を描く必要ないなんて凄すぎますわね』
『(パス)···私も欲しいな~。仕事がすごく楽になりそうね~』
とまぁ、こんな感じで掲示板魔法は情報交換に役立っているようでよかったよ。···なぜかパスさんがおいしい名物料理の情報を提供してくれたけどね。そういうつもりじゃなかったんだけど、まぁいいか!
さて、昼食も終えて再び砂漠を越えていく。特に何もなく砂漠は終わり、なんだかジャングルっぽい森が目の前に迫ってきた。
「リオ、このジャングルっぽい森を超えたところにレジストがあるの?」
「というか、この森の一部がレジストだぞー。オレが住んでた集落は結構手前だから、あと2日ぐらいで着くんじゃないかー?」
「そうなんだね。今からキャンプで1泊、パスさんが言ってた宿場町で1泊したらいいかんじかな?」
「そうだなー!ただ、ここから先は魔獣も結構出てくる危険地帯もあるから、気を抜かずに慎重に進むぞー。
まぁ、集落の近辺は兄貴たちが狩りまくってるからそこは大丈夫だとは思うけどなー」
「そういえば、リオの一家は狩りがメインなんだよね?」
「そうだぞー。狩って狩って狩りまくって素材を売却して集落の収益としてるんだぞー」
「そんなに狩ってたら魔獣がいなくなっちゃわない?」
「そこは大丈夫だぞー。アイツらはわんさか湧いてくるからなー。逆に気にしてたらやられるぞー」
「聞いてるとなんだか物騒だね···」
「まぁ、気にすることはないぞー。兄貴たち以外もみんな強いからなー」
「なるほどね~。ドラゴン族だからそんなもんなんだね。どんなところなのか楽しみだよ~」
「観光地とかじゃない、ただの集落だぞー?あんまり期待されてもガッカリするだけだぞー?」
「それがいいんだよ!どんな場所で、どんな人が生活してるのか?を知るのも旅の楽しみなんだよ」
「うーん、とりあえずあまり期待しないほうが良いってだけは言っておくからなー」
どんな集落なんだろうね?期待を勝手に膨らませながら、今日はキャンプをして早めに寝ることにした。
そうそう、蓄魔の腕輪に残りの魔力を込めるのも忘れずにやっておいた。
今日は結構放出したからね。コツコツ溜めていこう!
グロー歴505年1月26日 晴れ
さて、今日からはジャングルの中を進んでいくんだ。
もちろん、普通の森と違って道なんて全くないよ。
だから、身体強化して猿のように木を飛び越えながら進むんだ。身体強化してればこの程度は雑作もないんだよ。この魔法も使い方次第でチートだね!
もちろん、魔獣レーダーも併用して進んでいく。
···よくよく考えてみれば、ボクは今3つの魔法を同時行使してるんだよ。身体強化と魔獣レーダーとエアコンだ。
ボクも器用になったなぁ~。この世界に来て元の世界の時間だと約1年なんだもんなぁ~。
魔力量もそうだけど、ちゃんと成長していると実感できるよ!···ただね?身長はあんまり伸びてない気がするんだよ。
前にも言ったけど、本当に身長伸びるのかなぁ~?ボク自身ではどうすることもできないからなおさら不安なんだよ。
まぁボヤキはここまでにして、道中は魔獣の回避もうまいこといって、午後4時には宿場町に到着したんだ。
この宿場町はピムエム皇国への街道の途中にあるんだよ。砂漠を超える旅人や商人なんていないからコレクタから来ることは全く考えられてないんだよね。
だから地図アプリがなかったらたどり着けないね。空を飛ばない限りはね。
さて、久々に宿場町で宿泊だね。またカップルに間違えられちゃうだろうけど、気にせず流してしまおうっと!
「こんにちは。ツイン1泊空いてますか?」
「いらっしゃい!ツインだね?空いてるよ。素泊まりで10000ジールだよ」
「···あっ、ハイ!リオ、決済をお願い!」
「おう!これでなー」
「はい確かに。酒場は午後6時から、朝は午前7時からだからね。どうぞごゆっくり」
···アレ?カップルに間違われなかったよ?スムーズにチェックインできちゃった···。初めてじゃない?
いや、期待してないよ!?トラブルを期待するわけないじゃないか!!ただね?あまりにも普通の対応だったから、身構えていたのに肩透かしを食らったというか···。
「リオ、普通にチェックインできちゃったね」
「単に今までがおかしかったのかもなー。これが普通なんだろうけどなー」
「これならボクも気にせずに泊まれるんだけどなぁ~」
「ここはそういう個人的なところに踏み込まないんだろうなー。ある意味プロだぞー」
「そうだろうね。今後もこれを期待しないでおくよ」
普通は普通で、それで調子が何故か狂ってしまったボクだった。
トラブルに慣れてきた自分が、ちょっと不安だなぁ~。
な、なんと!普通にチェックインできちゃいました!
いやまぁ当たり前なんですけどね?これまでが酷かったってだけなんですけどね。
まったくトラブルを望んでいないのに、わずかにツッコミを準備していたアキくんでした(笑)。
さて次回予告ですが、開発した雨に濡れない魔法や、リオの食事の好みが知られたりして、やっとリオの故郷であるレジストの手前までたどり着きます。お楽しみに!




